第5話

山野井さんは俺の体調のこと、心配してくれてるらしかった。会社でも、食堂で売られていた

紙パックの野菜ジュースをラーメンを食ってた俺の横に来て、トン、と静かにラーメンどんぶりのそばに

置いてくれた。


「これ、野菜ジュース!ほら、飲みな!」


「あ、いつもすみません...!」


「あ、そうそう!今夜はすきやきやるの!!

いつもの時間の8時に来てくれればいいから!」


そんな幸せな会話を。


すぐ隣でカレーを食ってた同僚の藤島に聞かれた。


山野井さんが立ち去った頃に。


ギロリと睨まれて尋ねられた。


「何だよ!おまえら、付き合ってるんじゃねぇだろうな!?今の会話、恋人同士の会話みてぇだったぞ」


まさか、言えない。


通い妻ならぬ、通い旦那みたいなことに

なってしまっているなんて、口が裂けても言えない。


藤島の奴は俺のことをやたら敵対してる。


藤島は山野井さんを俺の女にしてぇ!などと

常日頃、宣っていたし。


俺に対してだけ、山野井さんが甘い対応なのを

ふざけんなって思って見てたんだ。



「いや、全然。恋人同士とか違うからさ。

誤解しないでよ」


「ふーん。じゃあさ。おまえ、今、フリーってことだよな。

実はさ、今夜、8時から可愛い子ばかりの5対5の合コンやるんだよ。1人人数が足りなくなっちゃったからおまえ、来いよ。俺の友達が幹事なんだけど、

俺も数合わせで参加するんだ」



「参加できるよな?フリーなんだからさ」


藤島は威圧感のある顔で言った。


「いや、すきやきが...」


「は?すきやき?そんなもん断れるだろ。

てか、ぜってえ、させねぇ。山野井さんと

すきやきだぁ?ふざけんなっていうんだ!

なんで、フツメンのおまえが、美人上司と

飯食えるんだよ!!」


俺は困った。藤島は怖い顔だった。


山野井さんとのすきやき、断らなきゃな、と思った。










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