005話ヨシ! 3ヶ月後、うんてい開始
トレーニング生活3ヶ月目に突入すると、ランニングの距離が伸びてきた。
こころなし、太股やふくらはぎが逞しくなってきた気がする。
いまや、ウチから半径1キロ圏内はだいたい走破した。
ウチの近所で通ってない道は、城壁の内側に続く巡回路くらいだ。
この巡回ルートは、警備兵が毎日見回る、一般人お断りの場所。
そうなると、さすがに子供であっても入らせてくれない。
「にゃんこ~、まてまて~」
と、実に子供らしく野良猫を追っかける態で巡回路に入ってみた。
── だがダメだった。
軍人のおっちゃん達にすぐに追い出された。
(広々としてるし、馬車とか荷車とかすれ違わないし……
せっかく、良いランニングコースになりそうなのに……)
ちぇー、ケチー。
▲ ▽ ▲ ▽
それはともかく。
毎日走っていると、体力が上がってきたのも自覚する。
なので、新しいメニューを追加する事にした。
壁登りである。
レンガ造りで良い感じに凸凹のある我が家の壁を、ロッククライミングする事にした。
目指せ、指だけの腕立て伏せ!
通称『指立て伏せ』!。
3ヶ月のランニングの効果か、足を使えば2階の窓くらいまで登るのは余裕だ。
ちなみに我が家・エセフドラ家は3階建てだ。
屋上までチャレンジしようとしていると、妹に見つかった。
「わたしもする~」
「やめろ、あぶないぞ」
「お兄ちゃん、あぶないことしてるの?」
「お兄ちゃんは、あぶなくないの。
お前は、まだ子供だからあぶない」
「ぶぅ~、お兄ちゃんもこどもくせに、ずるい」
「お兄ちゃんは、くんれんしてんるんだよ、くんれん」
「わたしも『くんれん』する~」
「お前はあそんでるだけだろ」
「わたしも『くんれん』だもん」
と、もめていると、ママに見つかりこっぴどく
という訳で、我が家では『壁登り』は禁止されてしまった。
▲ ▽ ▲ ▽
う~ん、どうにかして上半身を鍛えたいんだが……。
このままでは、『足だけマッチョマン』になってしまう。
そんな事を考えながら、我が家の倉庫をあさっていると、鉄製のはしごを見付けた。
「なんか、こんな
公園とか校庭とかに……」
屋外用のテーブル(立食用)を離して2個置いて、その間に鉄製はしごを架け橋のように渡す。
どんな字かわすれたが『うんてい』とかいうヤツだ。
ほら、あの、子供がぶら下がって猿のように移動する
一回試してみると、ちょっとグラついたので、ロープを持ってきてテーブルに縛り付け、はしごを固定する。
屋外用のテーブルは、大人の胸くらいの高さがある。
おかげで5歳児としては、足を曲げると丁度よい高さだ。
「さあ、手の皮がむけるまでやってやんぜ!」
とか気合いを入れていると、また妹がやってきた。
やめろ、せっかくの訓練の邪魔すんな。
次はわたしの番、じゃねんだよ。
わたしも『くんれん』する~、じゃない。
そんな風に兄妹でもめていると、ママンに見つかり、パパンに知れ渡る。
ただ、今度は怒られなかった。
話を聞いたパパが、『子供に丁度良い遊び道具だ』とか言って木材を買ってきて、日曜大工でしっかりした構造の『うんてい』を作ってくれた。
試しにパパ(身長180cm以上のマッチョ兵士)がブラ下がってもビクともしない、頑丈さだ。
妹は、ついでに作ってもらったブランコ遊びに夢中だ。
これで『うんてい』独り占め!
懸垂だって、やり放題!
「──やったぜ!」
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