なえみやねこねこ大騒動! 〜マタタビ人間ってどういうこと!?〜

雨蕗空何(あまぶき・くうか)

第一章 マタタビ人間の覚醒と集う猫たち!

第1話 覚醒!マタタビ人間!

 目覚まし時計が鳴り響き、十六歳の誕生日を迎えた苗宮喜初(なえみやキウイ)は目を覚ました。

 そしてキウイは、部屋が大量の猫でぎゅうぎゅう詰めになっているのに気づいた。


「……なんで!?」


 キウイの声に反応して、猫たちがにゃーにゃー鳴き出した。

 部屋の扉がバン!と開き、母親が顔を見せた。


「息子よ……とうとう覚醒しましたね」


「覚醒って何!? 母ちゃん何か知ってるの!?」


 神妙な顔で正座した母は(山積みの猫をかき分けてスペースを作った)、語り出した。


「息子よ、あなたには隠していた秘密があります」


「えっこれから真面目な話をする感じ? 部屋中にゃーにゃー鳴きまくってるけど」


「母の父、つまりあなたの祖父である苗宮虎徹(なえみやコテツ)は、無類の猫好きでした」


「はい」


「しかし苗宮家は代々、猫に嫌われる体質でした」


「そうなんだ」


「祖父は嘆き悲しみ、子孫が同じ悲しみを背負わないよう、妻としてマタタビをめとりました」


「待って待って待って!? マタタビって植物のマタタビ!? マタタビをめとるってどういうこと!?」


「そうして産まれたこの母は、残念ながらマタタビの血が発現しませんでしたが」


「さらっと言ってるけどマタタビが母ちゃん産んだの!? 母ちゃん日本人とマタタビのハーフなの!? そんで俺はマタタビのクォーターなの!?」


「息子よ、十六歳の誕生日を迎えた今日、とうとうマタタビの血が覚醒しました。あなたは今日からマタタビ人間です」


「マタタビ人間って何!?」


「息子よ! その選ばれし力を使い、あまねく猫を飼いならし、もって人間社会を支配するのです!」


「話が飛躍しすぎている! 俺世界征服できるようなすごい力を持ってるの!?」


「人は猫に屈服する運命なのです」


「いるけども! 猫相手に骨抜きになる人! 猫の世話が最優先で猫の召使いみたいになってる人!」


「ところで息子よ、学校は大丈夫ですか」


「話してるうちに遅刻する!」


 キウイは猫の山をかき分け、制服を探した。


 そうしたらねこみみ幼女が発掘された。


 しばらく、キウイと幼女は目が合った。

 キウイはしばらく硬直し、考え、それから猫の山を幼女の上に戻して、制服探しを再開した。


「スルーするなだにゃ」


「猫山噴火して幼女再発掘!?」


「あなたはまさか、猫又のスズさん!?」


「知ってるの母ちゃん!?」


「猫又とは年老いた猫の尻尾が二股に分かれ、妖怪と化した存在です。スズさんはその猫又の中でも、ご町内の猫をすべる町猫番長なのです」


「町猫番長って何!?」


「このぷりちーな幼い見た目は仮の姿にゃ。キウイ、オマエやママさんが苗木のころから知ってるにゃ」


「苗木って言わないで! 植物の血を引いてる話を補強しないで!」


「ママさん、キウイの覚醒おめでとうだにゃ。これからはスズが責任を持ってキウイの力を導くにゃ」


「はいスズさん、息子をよろしくお願いします」


「二人で勝手に話を進めないで!」


「はふぅ……マタタビの臭気がいい心地だにゃ〜ぺろぺろ」


「ちょっぺろぺろしないで……うわあスズにつられて他の猫たちも一斉にぺろぺろしてきた!?」


「息子よ、ハーレムですね。世の猫好きが見たら血の涙を流してうらやましがるでしょう」


「俺はこれにどうリアクションしろと!? よだれでベトベトなんだけど!?」


「さあ息子よ! 学校に行くのです! 手始めに学校の人間に今の幸せな状況を見せつけ、ひれ伏させるのです!」


「ねえ母ちゃん俺を何にしたいの? 魔王にでも仕立て上げる気? 俺勇者に倒されるの?」


「キウイは猫たちにとって勇者だにゃ。四六時中自由にマタタビを供給できるとっても便利な存在だにゃ」


「ンンンンン似たような表現を知ってるような気がするなーお金の供給源として使われる通称ATMって呼ばれる人種と同じような気がするなー!」


「さて息子よ、急がないと本当に遅刻しますよ」


「だーもー行ってやるよ! 猫に囲まれた状態で学校行ってやるよコンチクショー!」


 苗宮キウイ、十六歳の誕生日。

 神様からのギフトは、波乱とねこみみもふもふハーレムを呼ぶものだった。


 そして物語は、ここから始まる。

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