最終章 死後49の世界

Rust wolf


ガイの体が狼の姿に変化した。

暗黒色の狼。

「あれがガイの本当の姿…?」

僕は白玉に尋ねた。

「あぁ。狼の生き残りだ。」

絵本の絵とソックリだ…。

「ウォォォォォォォン!!!」

「!?」

ガイの叫び声が街中に響き渡る。

「来るぞ!!!」

百合の掛け声と共にガイが向かって来た。

「動きを止めるぞ!!」

闇は自分の鎌の鎖を操りガイの体を拘束した。

「任せて!!」

空蛾はそう言って地面に両手を付けた。

拘束されているガイをクリスタルで固めた。

「ガルルルッ!!!」

「「!?」」

ガイの体から黒いオーラが溢れ出た。

黒いオーラに触れた鎖とクリスタルは溶けて行った。

「ッ!!」

百合が黒い霧を放った。

「俺達は夜空の援護が目的だ。」

「「「了解!!」」」

僕以外の3人が声を合わせた。

ガイは黒い霧を払い除けこちらに化け物と共に向かって来た。

「俺と白玉は化け物を担当する!!行けるな白玉。」

「誰に言っておる。」

白玉と百合が化け物に向かって行った。

「闇!!あたし達は夜空の援護するよ!!」

「分かってる!!」

「2人とも行くよ!」

僕と2人はガイに向かって走った。

空蛾が器用にクリスタルの形を無数の短剣に変えガイに飛ばした。

ガイの体に何本か刺さっているのに動きを止めずに向かって来る。

「っな!?」

「空蛾!!下がって!!」

僕は空蛾の手を引き僕が前に出た。

「夜空!?」

「大丈夫!!」

僕は棘を操りガイの体を縛った。

「闇!!」

「任せろ!!!」

闇が銃を出しガイに向かって発砲した。

5発の弾はガイに命中した。

ガイは黒い血を吐いた。

「今だ夜空!!」

闇の声と共に僕は走り出した。

僕はガイの脇腹に向かって鎌を振った。

「ワァオオオオオオン!!!」

ガイが大声で叫んだ。

僕の腕に噛み付いた。

「ッ!!!」

僕の腕に噛み付いたまま離れなかった。

「「夜空!!」」

闇と空蛾がこっちに向かって来た。

「2人共来ちゃ駄目だ!!!」

「「!?」」

僕がそう言うと2人は足を止めた。

僕はガイをジッと見つめた。

ガイの瞳から涙が溢れていた。

「ガイ…。寂しかったんだよな?」

「ガルルルッ。」

「お姫様の事取られちゃったって思ったんだよな?」

「ガルルルッ…。」

噛まれてる部分が痛みを通り越して感覚が無くなった。

「ッ…!!。ガイはちゃんとお姫様の事考えた事あったの?」

「お…お前に何が分かる!!」

ガイは僕を投げ飛ばした。

そのまま僕に馬乗りになった。

ガイが僕の首に噛みつこうとした。

それを鎌で受け止めた。

「「夜空!!」」

白玉と百合がこちらに向かって来た。

「2人共来ないで!!」

「だけど…夜空!!」

白玉がこっちに来ようとする。

「大丈夫だから!!」

自分の血が顔に垂れる。

「ガイはもっとちゃんとお姫様の気持ちを考えてた?自分の事しか考えて無かったんじゃないの?お姫様が何で真珠と翡翠を連れて来たのか…。理由を聞きいた?」

「姫はボクが要らなくなったんだ!!だから…!!」

「ふざけんな!!!!」

そう言って僕はガイを殴り飛ばした。

ガイの体が人の形に戻った。

「!?」

「お姫様はガイが居たから変わったんだ!!!ガイがお姫様に愛を教えたからあの2人の魂を一緒に居させたんだ!!2人は死んでもお互いを思い続けて居たからお姫様は2人を連れ来たんだ!!」

「ひ、姫が…。」

「ガイと自分を重ねてだんだよ。」

「!?重ねてた…?」

僕はガイの胸ぐらを掴んだ。

「お姫様はガイと離れ離れになる事を1番恐れていた。死ぬ事よりも残酷な事だと。」

「そんな…。そんな事一言も言って…。」

ガイが自分の手で顔を覆った。

白玉達はこの光景を静かに見ていた。

「ガイなら分かってくれると思ったんだよ。言葉が無くても通じていると思ってたんだ。愛していたから。」

「そんな…。ボクは…じゃあ本当は姫に愛されていたって事なのか…。」

僕は静かにガイの肩を叩いた。

「お姫様の愛した男はお前だけだよガイ。」

そう言うとガイは泣き崩れた。

哀れな狼が愛に狂った。

姫と出会った事で愛を知り愛を与えた。

僕は横に落ちている杖を掴んだ。

「もっと早やく…気付いていれば…!!ボクは…ボクは…ヴ!!」

ガイの縫い目がほつれ、体の部分が腐っていった。

「な!?ガイ!?」

僕はガイに近づこうとした。

グイッ!!!

「行くな夜空!!!」

白玉が強く僕の服を引っ張った。

「白玉!?だけどガイが…!!」

「ガイの命を保っていたのはこの杖の力だ。それを無くした今はただの禁忌を犯した罪人だ。」

ガイの影から黒いドロドロとした手がガイの体に纏わり付いた。

「だ、だけど…。」

「姫に会いたい…。」

ガイは涙を流しながら姫の名前を呼び続けた。

「ガイ!!!」

「「「「!!!??」」」」

女の人の声が聞こえた。

僕達は後ろを振り返った。

「間に合ったな。」

そこに居たのは赤い髪の女の人と青い髪の男の人に白玉と同じくらいの男の子が2人。

「だ、誰?あの男の人…。」

「?何言ってるんだ夜空。青藍じゃないか。」

白玉の言葉に僕達は目が点になった。

「「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」

無茶苦茶イケメンなんですけど!!!?

「姫!?」

ガイが驚いた声を上げた。

この人がガイの愛したお姫様。

凄く綺麗な人だ。

「雫。ガイの魂が行く先、分かっつるよな?」

「えぇ。」

「どうするんだ。」

「答えはとっくに決まっているわ。」

お姫様はそう言ってガイの元に歩いて行った。

「姫!!来ちゃ駄目だ!!お願いだ!!!」

ガイの声を無視してお姫様はガイに近付いた。

そしてガイを抱き締めた。

「ひ、姫…駄目だよ…。姫…?」

「会いたかったわガイ…。」

哀れな狼と美しい姫がようやく再び出会った。

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