超短編小説集

Yukari Kousaka

桜の木の下で

母が首を吊った花盛りの桜の木の下には手のひらほどに小さい女がいた。花魄かはくだと私は思った。花魄は三人以上が首を吊った木に彼らの無念が集まって生まれる木の精だと、母は私に教えてくれた。花魄は穏やかに眠っていた。私は花魄をそっと起こさぬように手のひらに乗せた。私は花魄をじっと眺めた。花魄は母の顔をしていた。生きているときそのままの、優しいあの母の顔。父の不義を知ってもなお笑っていたあの美しい母の顔。私はそれに微笑みかけると、一気に飲み込んだ。これで私は永遠に、母と一緒だ。



Toshiya Kameiさんによる本作品の翻訳がwebマガジンNew World Writingに掲載されました。(https://newworldwriting.net/under-the-cherry-blossom-tree-yukari-kousaka/)


Toshiya Kameiさんによる本作品の翻訳が100Words小説選集「Mythical Beings of Asia」に掲載されます。

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