第3話

 彼は、かなり歳がいっているらしい。精神的に。見た目は若いのに。くろうがおおいのかな。

 年の差恋愛、それも23歳差ぐらいの恋愛ものを読んだとき、その結末でカチカンのソウイがあった。

 その漫画は23歳差という歳を気にしてふたりがくっつかないというバッドエンドで、さすがにわたしはおこった。現実にない展開を求めてるのに現実的な回答を出してくるんじゃねえと。しのごの言わずにくっついてハッピーエンドにしろよと。

 それを聞いた彼は、仏様みたいな笑みを浮かべて、一言だけ。


「結ばれないほうがお互いのためだよ」


 と言った。よく覚えている。どれだけわたしがくいさがっても、さすがに23歳差はしんどい、ヒロインのほうが先に寿命でしぬのは切ない、の一点張り。相容れなかった。

 今でも、あの漫画は結ばれるべきだと思っている。そして、そのとき、同時に決意した。よく覚えてる。

 わたしはこうやって、一生をかけて、彼の人生にくいさがってやろうと。彼の達観した、諦めの多い、どうしようもない人生を。わたしがくっついて、くいさがって、しあわせなものにしてやろうと。そう決意した。

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