第14話
「あの小娘の
わなわなと怒りで全身を震えさせながらキャシーはどうしようのない怒りを俺へぶつけ――――?
「よくてよ。エセルは国王であるお父様の命令で仕方なく……なのですもの。大変愚かしい事に我が王家には代々公爵よりの借財が、それこそもうこの国一つくらい差し出さねばいけない程に借りてしまったのですものね。そうね何時も
「キャシー」
「いいのよエセル。私達がこの世へ生まれ落ちたのもあの人達の身勝手な行為によるものだし、そうして生まれた私達は自分達が勝手に生まれてきたかの様に思われば親の愛情何て何処にも存在等しない。まるで動物の様に生み落とせば後は勝手に生きるだろうって言う様に面倒な事は全て人任せだったわ。その癖自分達の気が向いた時だけは猫なで声で擦り寄り、自分達の心が満たされ飽きるまでのほんのひと時だけを可愛がる。そうして飽きてしまえばまた放置。今までがそれの繰り返しだったわっっ。だからエセル、此度も今までと同じなの!! 自分達の借金を帳消しにしたいが為だけに貴方を生贄としたのよ!!」
「キャシー落ち着いて」
「これが落ち着いて等いられますか!! 今迄まではそれなりに我慢も出来たわっ。それは何故だかわかる? そうエセル……私には貴方が、私の半身である貴方が傍にいてくれるからこそよっ。だからどの様な理不尽な事でも貴方がいたからこそ耐えられたの!! で、でも此度だけは違う!! ねぇ何故? どうして私はエセルの半身なのに貴方と一つになる事が出来ない……の? ねぇエセル、私には今も昔もそしてこれから先も貴方だけ。貴方しかいらない。貴方がずっと傍にいてくれれば、私を愛してくれればそれだけでいいの。その他は何も望まない。だから――――」
両眼に涙を溜め、今にも零れ落ちそうになりながらもキャシーは必死になって俺への愛を乞う。
ツンとした気位の高いシャムネコの様なキャシー。
長年愛情に飢えていた所為もあって中々素直に気持ちを表す事が出来ず、王女なのに親しい友人と呼べる令嬢もおらず何時も一人で孤独に耐えていた俺の妹。
俺がいる時は衆目であろうとなかろうとずっと傍にいて離れまいとした精神的にやや幼い面のある少女。
今までならば時間の許す範囲でキャシーの気持ちに兄妹として寄り添ってきたのだが、今の俺には……俺の心の中にいるのはキャシーではなくエリザベス、心より愛する俺の唯一。
そして俺の心変わり……いや
だから心変わりとは少し違うのだが、キャシーにとって俺が貴女を愛していると言う事実こそが自分にしてみれば手酷い裏切りだと捉えてしまったのだろう。
しかし何処の世界に実の妹を女として愛する兄がいるのだと俺は激しく突っ込みを入れたい気分になったのだが、元々俺達は与えられる筈の愛情に飢えていた故にキャシーは裏切りと捉えそして――――。
「エセルは何もしなくていいわ。私が動くから……」
「おいキャシー動くとはどういう事だ」
「いいの。エセルは部屋で待っていて。貴方はとても優しいからこそ何も出来ないし断れなかったの。でも私は違うわ。私は私への愛情を失うくらいならば差し違える覚悟で以って何処までも足掻いてやるわ!!」
「キャシー!!」
可笑しい。
キャシーの様子が何時もと違う。
済んだ青い瞳は憎しみに満ちてギラつかせれば、美しい
いや、既に何か悪い霊に憑りつかれたかの様にも思えなくもない。
このまま放置すれば何かよからぬ行動を起こすのは目に見えている。
「キャシー俺はこの婚約を望んでいる。何も父上の命令だけの問題じゃない。この俺自身が彼女と、エリザベスと将来結婚をしたいと心より望んでいるのだよ。だから何もキャシーが心配……」
「ではエリザベスを殺してしまえばエセル、貴方は私の許へ帰ってきてくれるのね。ふふ、やはり私の思った通り私とエセルの障害となるのはエリザベス……あの小娘だったと言う訳ね」
「な、にを……言っている?」
嬉々とした声、そして然も不思議そうにこちらの様子を伺い全く罪のない微笑みを湛えたキャサリン。
悪い予感がしてならない。
頭の奥がガンガンと警鐘を鳴り響かせている。
キャシーを止めなけれ――――。
「決まっている事を言わせないで。待っていて、直ぐにエリザベスを殺してあげるから」
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