宵闇に照らし出したる月宮殿 龍野の里に匂ひぬるかな

 たまたま、インターネットで地方ニュースを拾い読みしていたときのことだ。


 兵庫県龍野たつの市(現在は、平仮名で「たつの市」となっているようだが)の某所にて、梅が満開の見頃を迎え、夜間ライトアップをしているという内容が、鮮やかな写真とともに掲載されていた。


 クリックして写真を拡大してみれば、なるほど、下から煌々とライトに照らされる満開の梅が、輝くばかりに咲き誇っていた。

 多少色飛びしているのか、概ね白梅が目立つ写真だったが、記事の中で、紹介されていた梅の品種は二種類。


 ほんのりと甘い香りを漂わせる格調高い白梅、月宮殿げっきゅうでん

 そして、薄ピンクに色づく可愛らしい紅梅、紅千鳥べにちどり


 満開で、美しく色付く様のことを「にほふ(匂う)」と表現するそうだが、まさに、そのとおりだと思った。


 どちらの梅も、以前、別の場所で実物を拝見したことがあるのだが、何とも可憐な花々であった。


 その日は、気候も穏やかな梅見日和で、ちょうど、メジロが白梅の枝に六羽ほど、状態で、群がっていたのを覚えている。

 残念なのは、メジロは花を、首の根本からついばんで食べてしまうので、見頃の花から、どんどんと食い散らかされてしまったことだ。

 梅見ついでに、メジロの食欲旺盛さには驚かされた。


 因みに、記事では紹介されていない品種だが、わたしのお気に入りは「思いのまま」という、一本の木から紅白両方の花が咲く品種だ。

 同じ枝から、突然変異のように紅白の梅が咲き乱れている様を見るたびに、不思議に思う。

 一輪で、花弁の色付きが紅白相見あいまみえるという、摩訶不思議ちゃんも、枝の途中に現れる。実に興味深い品種なのだ。


 そんなことを、拾い読みした地方ニュースから、ふっと思い出した。そして、何だか衝動的に、詠みたくなったというわけだ。




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にほひ・ぬる・かな

「にほふ」えーっと、自動詞ハ行四段活用の連用形で、

「ぬ」この場合は、完了の助動詞の連用形で、

「かな」は終助詞で、詠嘆っと。

意味合いとしては、「綺麗に咲いたもんだなあ」的な感じで。

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