第17話 いざ洞窟へ、つるはしを添えて

「洞窟だー!」

「……おぉ」


 レルエネッグの南西にあるカチカチ鉱石の洞窟。

 私たちは今、その洞窟の前に立っている!

 初めて見る洞窟に思わず感動してしまう。

 アキューちゃんも私の隣で目を輝かせていた。


「よ、よし、たた、たいまつの用意もできたしカチカチ鉱石を探しに、い、行こうか」


 たいまつを持ったリアナちゃんが先頭を歩く。

 どうやら洞窟も怖いみたいで声と脚が震えている。


「リアナ、怖いなら先頭代わるよー」

「だだ大丈夫だ、シャルはすぐに戦えるよ、ようにしておいてくれ」


 リアナちゃんに続いて私たちも洞窟へ!

 通路は広くて並んで歩いても余裕があるし、天井も高いから窮屈な感じは全然しない。

 それと空気がひんやりしていて涼しくて気持ちいい。


 更にこの中のどこかにカチカチ鉱石が、所謂お宝が眠ってるのだから冒険者がダンジョンを好きなのも頷ける。

 少し歩いたところでリアナちゃんの脚が止まった。


「こ、この先は下に降りて行かないといけないようだ。み、みみみんな気を付けて降りるんだぞ」

「おー!」


 高さはそこまでなさそうに見える。

 でも気を付けないとケガをすると大変だ。

 段差をゆっくり降りていく、暗くて高さが分かりにくいから慎重に慎重に。

 一番下の地面に足が付いたらほっと一息。

 たいまつの炎で照らされた辺りを見渡してみる。


「ここは少し開けた場所みたいだね」

「しっ……何かいるよー」


 シャルちゃんがフォークとナイフを構えて前方の暗闇をじっと見つめる。

 私もアキューちゃん製メイスを両手で握って構えた。

 耳を澄ませると確かに何かが近づいてくる音がする。

 ごくり……洞窟に住んでるモンスターってどんなのだろう。


「ひっ!?」


 先頭でたいまつを掲げるリアナちゃんが小さな悲鳴をあげた。

 リアナちゃんが怖がるということは……『あっち系』のモンスターか!


「リアナ、下がっていいよ!」

「さぁ来い、私たちが相手だー!」


 すぐにリアナちゃんの前に立つ。

 ほぼ同時にそいつは暗闇から飛び出してきた。


「カタカタカタカタカタカタカタ!」

「きゃあああああああ!?」


 うぉー! 骨だ、ガイコツが動いている!

 それとリアナちゃんの綺麗な悲鳴がかわいい!


 攻撃を仕掛けてきたのは大きな骨を持ったガイコツだ。

 あの持ってる骨は何の骨だろう。

 なんて気にしてる場合じゃないけど気になる!


 シャルちゃんが素早く前に出てガイコツの攻撃を防いで反撃した。

 でもガイコツは一瞬よろけただけで、またすぐにシャルちゃんに襲い掛かる。

 もう一度攻撃を弾いてシャルちゃんは私の横に戻ってきた。


「ちっ……あたしの武器じゃ相性が悪いねー。こいつはココに任せても良い?」

「うん!」


 ナイフは切って使うものだしフォークは刺して使うものだから、お肉のないガイコツにはいまいち効き目がないみたいだ。

 シャルちゃんはもう一度攻撃してきたガイコツの大きな骨を、武器を×の形にして受け止めた。


「ココ、今だよ!」

「てーーーい!」


 ぐるんと一回転させたメイスでガイコツの頭を思いっきり叩いた!

 頭が割れたガイコツはふらふらと後退する。


「もう一回だぁー!」


 今度はガイコツの体にメイスを叩きつけた!

 がしゃーん!

 大きな音を響かせて、ガイコツの骨はバラバラに散らばり動かなくなった。


「や、やったー!」

「よくやったココ!」


 シャルちゃんとハイタッチして勝利を喜び合う。

 見た目は怖かったけどちゃんと倒せた!

 私はやればできる女!


 ガイコツがいなくなり大きく深呼吸しているリアナちゃんと、ぱちぱちと拍手をしているアキューちゃんに、ぐっと親指を立てて見せた。


 危険が過ぎ去り改めて今いる空洞を調べて回る。

 どうやらここには鉱石らしいものはないみたい。

 その代わりに奥の壁に先へと続く穴が2つ空いていた。


「分かれ道になってるねー」

「どっちに進もう?」

「お、おお、お、おばけがいないほうで……!」


 リアナちゃんの望みを叶えてあげたいけど、どっちにもモンスターがいそうに見えるなぁ。

 私たちがどっちに進むか迷っていると、アキューちゃんが右の穴を指さした。


「……こっちに、カチカチ鉱石がある気がする」

「決まりだね!」

「それじゃ右の穴に進んでみよー」


 再びリアナちゃんが先頭に立って右の穴の奥へと進んでいく。

 穴の先にはまた段差があり更に下に降りて先へ。

 進んでいるとまたガイコツが現れたけど、さっきと同じ戦法で倒すことができた。

 そして私たちが行き着いたのは……。


「行き止まりかぁ」


 穴はそこで途切れていた。

 もしかするとこの洞窟を見つけた人がこの穴を掘ったのかもしれない。

 でも残念だけどこっちはハズレで、カチカチ鉱石が見つからなかったから諦めたのかも。

 がっくりと肩を落として諦めかけていると、アキューちゃんがじっと壁を見つめているのに気が付いた。


「どうしたのアキューちゃん?」

「……ここを、少し掘りたい」

「この先にカチカチ鉱石があるの?」

「……わたしはそう思う」


 力強く頷くアキューちゃんの目は真剣そのものだ。

 だったら、反対する理由なんてない!


「うん掘ろう! 良いよねリアナちゃん、シャルちゃん」

「もも、もちろんだ」

「アキューの勘を信じよー!」


 壁に向き直ったアキューちゃんは大きなつるはしを、両手でしっかりと持って壁を掘り出した。

 ポニーテールをぴょこぴょこ揺らしながら。

 一生懸命穴を掘るアキューちゃんはかわいいなぁ!

 ……おっと、私も小さいつるはしでお手伝いしよう!


 片手で持てるつるはしで穴を掘り掘り。

 なんだか童心に帰って砂遊びをしている気分になってきた!


「つつ疲れたら代わるからな、いつでも言ってくれ」

「その間にあたしたちは見張りとお昼ごはんの準備をしとくねー」

「うん、ありがとう!」


 各々役割分担をして作業を続ける。

 掘って掘って掘りまくり、時々噴き出した汗を袖で拭ってまた穴を掘った。

 アキューちゃんも汗だくになりながら、それでも一生懸命掘り続ける。


 がんばって絶対にカチカチ鉱石を見つける!

 そしてアキューちゃんの喜ぶ顔を見るんだ!


 初めての洞窟に初めての採掘。

 カチカチ鉱石を自分たちで見つけるわくわく感。

 穴を掘るのはすごく疲れるけど、みんなと一緒なら楽しいからがんばれる!

 だから疲れても負けないぞ!


 私たちが掘っている穴は少しずつ大きくなってきている。

 それだけでも力になるんだろう、アキューちゃんの瞳はますます輝きを増していた。

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