第15話 鉱石が採れる洞窟を目指して

 アキューちゃんを加えた私たち四人は、必要なものを揃えるために買い物をしている。

 私とアキューちゃんは、街を長く離れる冒険をしたことがないから、リアナちゃんとシャルちゃんにお任せだ。

 二人はあれこれ相談しながらいろんなアイテムを抱えていく。

 定番のたいまつやテントから、何に使うのかよくわからないものまで。

 その間に私とアキューちゃんは、鉱石を掘るためのつるはしを眺める。


「うーん、つるはしって小さいのと大きいのがあるんだね。どっちが良いんだろう?」

「……大は小を兼ねる」


 そう言ってアキューちゃんは大きいつるはしを手に取った。やっぱり小柄だからつるはしがすごく大きく見えるなぁ。


 こっちの小さいのも可愛くて良い感じだ。

 手に取って掘るマネをしてみる。

 うん、これは掘りやすそう!


「じゃあ、つるはしはこれで決定だね!」


 大きいのを二つと小さいのを一つ持って、リアナちゃんとシャルちゃんのところへ。

 二人もちょうど必要な物を揃え終わったみたい。


「そっちも決まったみたいだな」

「じゃあ会計済ませるよー」


 私たちがたくさんのアイテムをカウンターに並べると、雑貨屋さんの人が一つずつ手に取ってアイテムの価格を計算していく。

 地図、たいまつ、テント、ランプ、他にもいろいろなアイテム。もちろん私たちが選んだつるはしも!


 雑貨屋さんでの買い物は慣れていても、今回みたいな遠出用は初めてだから見ているだけでわくわくする!


 無事に会計を済ませて雑貨屋さんの外に出た。

 購入したアイテムはみんなで分けて持つことに。

 テントだけは譲れなかったので私はテント係りだ!


「さて、これでアイテムの準備は大丈夫だな」

「うんっ、早く行こう行こう!」


 待ちきれないから早く出発したい!

 隣でアキューちゃんもそわそわしている。

 しかしシャルちゃんが首を横に振った。


「そこ焦らなーい。一番大事な食べ物の準備ができてないよ」

「あ、そっか!」

「というわけで冒険者ギルドの酒場に行くよー」


 たくさんの荷物を持って冒険者ギルドへ向かう。

 楽しみだから自然と歩く速度も速くなっちゃうね!


 到着した冒険者ギルドは、いつも通り冒険者たちで溢れていて賑やかだった。

 クエストを選んだりパーティメンバーと話し合ったりしている先輩冒険者と、軽い挨拶を交わして地下の酒場へ。


 食べ物もリアナちゃんとシャルちゃんに選んでもらった。干し肉や日持ちする固いパンなどが次々に運ばれてくる。

 それらをカバンに詰め込んでいよいよ準備が完了した。


「よーし、じゃあみんな出発するよー」

「おーっ!」


 冒険者ギルドを出た私たちは、南西にあるというカチカチ鉱石が採れる洞窟を目指す。真上から暖かい光で照らす太陽に見守られて、レルエネッグの街を往く。


 南門を抜けて道なりに進むと分かれ道になっていて、東に行くとヨクアール森に行くことができる。

 今回は南西に向かうのでこのまま南へ。

 もう少し進んだところから南西に方角を変えるみたい。


 道には私たちの他にも数組の冒険者が歩いている。

 あの人たちはどこへ行くんだろう。

 遠い街に行ったりするのかな?

 行き先はわからないけれど、自分たちと同じように冒険をしている人たちを見ると嬉しくなった。


 逆にレルエネッグに向かってる人たちも多い。

 たくさんの荷物を積んだ馬車などもよく通っている。

 みんなきっといろんな旅をしてきたんだろうなぁ。

 遠ざかる馬車が小さくなるまで見送って、また自分たちの道を進む。


「私たちも夜までには休めるところに行かないとな」

「日が傾くまで進んでから川を目指そうかー」


 リアナちゃんとシャルちゃんの言葉に頷く。

 カチカチ鉱石や洞窟も楽しみだけどキャンプも楽しみだ!

 地図を広げたアキューちゃんの隣に並んで一緒に川を探す。

 レルエネッグがここで、これがヨクアール森。

 そこから南西に視線を動かしていく。


 うん、川はどれだろう。

 アキューちゃんと二人で首を傾げていると、シャルちゃんがやってきて川の位置に指をさして教えてくれた。


「この線が川だねー」

「おぉ、これが川!」


 地図で見ると川は西側から南側へ斜めに伸びている。

 この川のどこかが今日の目的地。そこへ行けばテントを張ってキャンプができるから楽しみだ。


「できるだけ戦闘は避けたいから、小さな森とかは迂回しないといけないねー」

「モンスターの縄張りに入らないようにするんだね」

「そゆこと。だからここから南西の森を突っ切ると早いけど、ここをぐるっと迂回して……森から少し離れてるところを目指そう」


 目的の川に行くまでのルートは決まった。

 後は陽が沈む前に辿り着くだけだ!


 それから私たちは、太陽の位置が上から横になるまで歩いた。途中でレルエネッグから南に続く道を逸れたから、今ではほとんど冒険者も馬車も見かけない。


 少し寂しさもあるけれど、四人でわいわい騒ぎながらの移動はすごく楽しかった。

 予定通り森をぐるっと迂回して進み、そして――。


「川だああああああああ!」

「……大きな川!」


 地図で見ると細くて小さいと思った川は、実際に見てみると結構大きかった!

 渡ろうとすると流されてしまうかもしれないから注意が必要だ!


 そっと触れた川の水は冷たくて気持ち良い。

 触れた水面から、水の精霊たちがひょこっと顔を出して手を振っている。


「今日はここにお世話になるね」


 精霊たちは頷いて水面に円を描いて泳ぐ。

 隣でその様子を見ていたアキューちゃんが、一見無表情だけど興味深そうに聞いてきた。


「……水の精霊?」

「うん、この川の精霊たちだよ」

「……おぉ」


 アキューちゃんには以前に説明だけはしておいたけど、やっぱり実際にその姿を見るのは初めてだから嬉しそうだ。

 みんなで精霊たちに挨拶をして、私たちはキャンプの準備に取り掛かった。


 いよいよ私が持っているテントの出番だ!

 折りたたまれているテントをぶわっと広げると、想像よりも大きくなってびっくりした。

 リアナちゃんとシャルちゃんに、教えてもらいながらテントを組み立てる。ひとりだと少し大変そうだけど、四人でするとすぐにふっくらした三角のテントになった!


「次にこれをテントの周りに置いてっと」

「シャルちゃん、それは何?」


 テントの周りに置かれたのは、綺麗な石が埋め込まれたよくわからないアイテムだった。


「これはテントが風で飛ばされたりしないようにする、魔法が施されたアイテムだよ。昔は杭なんかで固定してたらしいけど、今はこれを置くだけでできる。便利な世の中になったもんだねー」


 雑貨屋で買っていた使い道のよくわからないアイテムたちには、そんなにすごい効果があったみたいだ!

 魔法に縁がないので原理はわからないけど魔法ってすごく便利だなぁ。


 他にも使いどころのよくわからなかったアイテムで、焚き火の準備をしたりしている内に辺りが段々暗くなっていた。


「じゃあ火を付けるぞ」


 リアナちゃんが焚き火に火を付けると、闇に包まれていく世界がぼうっと明るくなる。


「わぁぁぁ!」


 火が珍しいわけじゃないけど、みんなで囲む焚き火は普段お家で使うようなものと違って心が躍った。


 私たち四人の初めてのキャンプ!

 それに次はカチカチ鉱石が採れる洞窟!

 今夜眠れるかな、興奮して眠れないかもしれないけれど、それも含めてこの冒険を楽しむぞ!

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