第21話 1日目 師弟の夜
新井くんには連絡係としてコテージに残ってもらっている。
「ったくよォ、あの一年が現れてから、ロクなことが起きねェ」
そもそも、初対面では無かったのか。
頭の中で、良くない考えが回り続ける。
小一時間ほどかけて全てのコテージの周りを探したが、
懐中電灯片手に途方に暮れていると、ポケットの中でスマートフォンが鳴った。
たぶん新井くんだ。
「……
新井くんからのメッセージを見ながら、
「一人でか。なら嬢ちゃんは何処で何してんだ」
「分からん。とりあえず俺らも一度戻ってみるか」
コテージまでの帰り道、俺たちは無言で歩き続けた。
口を開けば、きっと
事情を知らないまま、
それに、
とにかく、情報が欲しい。
コテージの前にたどり着いた俺は、レンガ造りのかまどに人影を見つけた。
「ちょっと止まってくれ」
「あん?」
並んで歩く
かまどに腰掛ける人影。
月明かりに浮かぶあのピンクのパーカーは、
フードを被っているためその髪色は確認できないが、十中八九。
「──
安堵とともに、苛立ちが募る。
が、
「ま、嬢ちゃんが無事で何よりだ。あとはリーダー、任せたぜ」
ポンと俺の肩を叩いて、
ひとり取り残された俺は、気づく。
「アイツ、厄介ごとを俺に押しつけて逃げやがった……」
リーダーなんて、引き受けるんじゃなかった。
覚悟を決めた俺は、歩を進める。
向かうはレンガ造りのかまど。
湿った土を踏みしめて、一歩一歩近づく。
そして、俺がかまどの前に立つと、
「師匠……」
俺は、第一声にかける言葉を選んでいた。
が、元々コミュ障の俺には、気の利いた言葉なんぞ浮かぶはずはなく。
「ちょっと待ってろ」
そう言い残して、小細工のための道具を取りにコテージへ戻った。
道具を持って再びかまどへ向かうと、先程と変わらない姿で
俺は、
細い薪を傍らに置き、その何本かをナイフで削って、毛羽立たせる。
フェザースティックと呼ばれるものだ。
こうする事で、火がつきやすくなるのだ。
何本かをフェザーにしたら、次は麻縄を
麻縄を繊維状に
小さなファイヤースターターを取り出して、棒状のロッドを麻縄の綿にあてがう。
ナイフの背をロッドに押し当てて、一呼吸。
ロッドを一気に引き抜いた。
バチバチと火花が出て、あっという間に麻の綿に着火する。
「すごい……一発で着火した……」
漏らすように呟く
フェザーの削りくずを煙を上げる麻の綿に混ぜ込み、軽く息を吹きかける。
それをレンガ造りのかまどに移して、フェザースティックを一本くべる。
取り出したのは、火吹き棒。
といっても金属で出来た、ただのストローみたいなものだ。
ピンポイントで息を吹いてやると、麻の綿からフェザーの羽の部分に引火した。
そこから太い部分に火を回らせ、何本か削ってあったフェザースティックを少しずつくべていく。
火花は、火になり、炎へと成長した。
「やっぱり師匠、すごい」
別にすごい事は無い。練習すれば誰でも出来る。
そういう方法だし、そのための道具だ。
俺は無言のまま、クッカーにペットボトルの水を満たす。
それを焚き火に組んだ薪の上に、
じっと見つめる
シェラカップに粉末を入れて、沸騰した湯を注ぐ。
それをスプーンでかき混ぜると、あっという間にコーンポタージュとなった。
冷たい、山特有の夜風が吹いた。
ぶるると肩を震わせる
俺の顔をしばし見つめて、ほんの少しだけ頷いた
「……おいしい」
ほんの少しだけ、
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