強化兵士ジェニム・ロット

イサリア

レジスタンス編

第1話 活動せよ、ジェニム・ロット!

 《GSVフランチャイズワールド世界線》


 ジエール帝国連邦は銀河初の管理主義を国是とした国家だった。管理主義ナットスィウロンシュとは資本主義と社会主義を融合させた新体制の政治思想であり、自動化生産・労働時間の分配・ベーシック・インカムの導入・研究の奨励・学者統治を軸とした統治体系だった。


 しかし、シンテーア歴1679年にダーケフオス危機が発生すると、銀河は前代未聞の大恐慌に見舞われた。システム化が進み、交流・交易の盛んな時代である。帝国連邦の経済は大打撃を受け、飢饉すら発生してしまう。

 帝国連邦は状況を改善するため、領有惑星であるアヴァイトラールをエルトリア王国へ売却することを学会決定する。しかし、もとより領有権を主張していたサーヴァリア企業連合がこれに異を唱え、最終的に戦争になってしまう。


 『管理主義ナットスィウロンシュ』の栄光は朽ち果てた。


 福祉国家であった帝国連邦は企業国家である企業連合の圧倒的経済力の前に敗れた。サーヴァリア企業連合は次に同盟国であったはずのヴァルエルク共和国を攻撃。

 突然の裏切りを受けたヴァルエルク共和国はこれをしのぎ切れず、レーウス宙圏は企業連合の支配下に置かれ、その結果研鑽主義が支配する企業統治体制が確立した。


 一方ゲルデン宙圏ではグロスクロイツ社会主義共和国連邦がベリオン共和国を下し、共産主義体制を作り上げていた。


 「企業国家と共産主義国家が水面下で戦う冷戦時代!!」


 冷戦の勃発により、帝国連邦は惑星ヒェルニエ、惑星エルナー・ゲリテーンの割譲で命を取り留めた。同じく、大国であったヴァルエルク共和国も今は小国として生きながらえている。


★★★


 「というわけなのじゃ。」


 マルチデバイスが映し出すこのホログラムの老人、ギャッコー・セーヴェル・ディオンは私の信じる『管理主義ナットスィウロンシュ』の生みの親だ。彼はすでに亡くなっており、これはデバイス上のAIなのだが、管理主義の危機だなんやと私に「活動せよ」と訴えてくるのだ。


 今私がいるのは、惑星ヒェルニエ。今はサーヴァリア企業連合の傀儡となっている。子供たちは管理主義の平和な世界を知らず、研鑽主義教育を受けて自由競争の準備をしている。私の使命はあの頃の平穏を取り戻すことだ。


 私は「人工強化兵シュッリルムスライト」。管理主義が生み出したクローン兵だ。カプセルで育ち、カプセルでヴァーチャル訓練を受けた。私は管理主義の兵士。管理主義を愛し、人民を愛する。それが私の存在意義なのだ。


 私はアルバスラ博士が最後の開発した強化スーツを手にした。肩にマルチデバイスがついていて、カードをスキャンするとモード・チェンジや亜空間収納機能などが使用できる。アルバスラ博士はすでに戦死しており、このスーツは彼が開発した最後の試作品だ。彼はこのスーツを直々に私に託したのだ。「管理主義を守れ」と。だから私は守らなければならない。人民を。たとえ管理主義者なまけものと罵られようと、私は私の使命を果たす。思想への忠義を果たす。


 「おい、S:1048-0060-8742RR、あれをみるのじゃ!!拝金主義モンスターが悪さをしておる!!」


 だから本名で呼ぶなと言っているだろう!


 「ウワハハ~~~。ベーシック・インカムなどくそくらえ!そんなものは怠け者の制度だ~~~~!報酬を得るには労働をするんだ。役員様の目線で物事を考えて、率先して労働すればおもちゃもキラカードも何でも手に入るんだぞ~~!」


 「そうだね!みんなで役員様のお役に立てるよう研鑽するんだ!」

 「そうだそうだ!」

 「キラカード欲しいよう!」

 

 あれは!拝金主義モンスター!!私と同じ改造兵士だが、研鑽主義の力でおぞましい存在になっている。あんな奴らに子供たちを洗脳されるわけにはいかない!!

 

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