第13話 虫虫大戦争

 現在俺はアイレクスの背に乗り、狼達と虫の巣に向かっていた。

 俺は背中に刺さる狼達の視線を極力無視しながらアイレクスに問いかけた。


 なあ、まだなのか? 


“もう少しだから黙って我の背中にしがみついていろ”


 大分森の奥に来た気がするけどな。

 お前森の覇者なのになんで森の端っこを住処にしてんの? 


“…………………………キサマには関係ないだろう”


 大分長い間を取ってからアイレクスは応えた。


 何? その間。めっちゃ気になるんだけど。


“…………うるさい”


 なんか若干落ち込んだ感じで応えられた。

 え、ガチで気になるんだけど。

 こいつがこんなしおらしくなるなんて。


 なあなあ、教えてくれよ。

 気になるだろ。


“ええい、やかましい! キサマには関係ないと言ってるだろうが!”


 なあなあとしつこく聞いていたら、怒鳴られた。

 どうやらガチで聞かれたくない話らしい。


 話を聞くのを諦めて前を向くと、ちょうどラーヴァの群れが現れた。

 さらにラーヴァだけでなく体長1m程の巨大なカブトムシも複数見受けられる——というか。


 数多くね? 


“そうだな”


 草木によって全貌は分からないがざっと見て50を超えるラーヴァと20近くのカブトムシがいる。

 うじゃうじゃと気持ちの悪いことで。


 なあ、アイレクス。ちゃんと数減らしてたんだよな? 


“ああ、虫共は増えるのが早くてかなわんな”


 えー、如何なされるおつもりで? 


 止まる気配のないアイレクスに俺は内心で冷や汗をかきながら問う。


“こうする”


 そう『念話』を送ってきた直後、アイレクスは口を開け、そこから渦巻く風の刃を放った。

 恐らく『ウィンドブレス』のスキルだろう。

 アイレクスから放たれた『ウィンドブレス』は木々をなぎ倒しながら——いや、細切れにしながら直進し、虫の群れを肉片に変えた。


 な、なんちゅう威力だよ……。


“ふふん。我の力を思い知ったか”


 はいはい、まだまだ虫達は残ってますよー。


 アイレクスの攻撃で見えていた虫どころかそれ以上の敵を細切れにしたがさらにうじゃうじゃと湧いてきている。

 試しに『気配感知』のスキルを使ってみたら範囲内に数えるのも億劫になるほどの数の反応があった。

 スキルレベルが上がったとはいえ、まだまだそれほど広いとは言えない俺の『気配感知』の範囲内だけでも100に届きそうな数の虫たちに機械の体じゃなければ顔が引き攣っていただろう。

 というかこれ無理ゲーでは? 


 おい、ホントに数減らしてたのか? 


“だから言ったではないか! ヤツらは数が増えるのが早いと!”


 つまり減らしてコレか……。


 それでどうするんだ? 


“マキシスを含めたF、Eランク組はここで残って雑魚共の処理をしておれ。Dランク以上は我と共に主を倒しに行く”


 え、囲まれて殴られたら死ぬ気がするんだけど……。


“この辺りにはFやEランクのヤツらしかおらん。一応、ウィンド・ウルフを3匹護衛に置いておいてやる”


 なるほど……というかやっぱり俺必要だった? 


“我が子達が生き残る可能性が高くなるではないか”


 ひでぇや……。


“それでは、ここは任せたぞ! ”


 俺を下ろすとアイレクスはそう言って風を纏いながら高ランクの狼達を率いて虫たちが湧いてくる方向へ走っていった。

 アイレクスの纏う風に多くの虫が細切れにされたがそれでもまだまだ腐るほどいる。

 アイレクスの風で木々がなぎ倒され、少し視界が開けたがその全てが虫で埋め尽くされている。

 めっっっちゃ気持ち悪い。


 というかこれ明らかに弾丸足りねぇよな。

 結局マナリスに頼るやんけ。

 進化先間違えたかなぁ……。

 い、いや、さすがに今の攻撃力ならラーヴァくらいなら倒せるはず。


「キシャァァァア!」


 アイレクスによって少し引いてた虫たちの波が再び接近し、無数のラーヴァが俺に噛み付いてきた。

 ガキンガキンと音を立てるが俺の体には傷一つ付かない。

 このステータス差とラーヴァのスキルレベルならダメージは受けないようだ。

 しかし、無数のラーヴァにまとわりつかれて身動きが取りづらい。

 俺は諦め悪くギリギリと俺を噛み締めるラーヴァを一体掴み、全力で地面に叩きつけた。


「ギジャァア!?」


 叩きつけたラーヴァは悲鳴と緑色の体液を吹き出して力無く地面に横たわった。


[経験値を獲得しました。称号『魔なる神の加護』の効果で経験値が増加します。21の経験値を獲得しました]


 あ、死んだ。

 予想通り、ラーヴァくらいならスキルやマナリスに頼るまでもないな。

 とりあえず身体中のラーヴァを何とかしよう。


 俺は大きく身体を揺さぶってラーヴァを振り落とす。

 周囲に目を向けると狼達も虫達と交戦を始めていた。

 ひとまずは優勢だと思う。

 こっちはDランクがいるが虫達にはラーヴァとEランクと思しき1m程の巨大なカブトムシがいるだけだ。


 まずは、空中でホバリングしているカブトムシのステータスを確認しておくか。


******************

名前:

種族名:ジャイアント・ビートル

状態:通常

性別:オス

LV:7/16

HP:52/52

MP:52/52

攻撃:35

防御:35

魔攻:17

魔防:26

敏捷:36

ランク:E


特性スキル:

『昆虫の甲殻:LV1』『飛行:LV2』


耐性スキル:

『毒耐性:LV1』『物理耐性:LV1』


攻撃スキル:

『噛み付く:LV2』『角でつく:LV2』『猪突猛進:Lv1』


通常スキル:

『救援要請:LV2』


称号:


******************


 ふむ、特に特別なスキルとかも無さそうだな。

 しかし、レベル差のおかげで殆どのステータスでは勝ってるが、それほど差がないから苦戦しそうだな。

 敏捷では負けてるしな。


 俺は先制攻撃をするべく、ステータスを確認してたジャイアント・ビートルへ銃口を向ける。

 そして、『射撃』を使用した。

 銃口から青い光を放ち弾丸がジャイアント・ビートルへ直撃した。

 甲殻を穿ち、緑色の体液を吹き出しながら衝撃で墜落した。


 ステータスを確認すると20程のダメージを与えられたようだ。

 悪くないダメージだ。

 しかし、こっちも同じ20もMPを消費しているという大問題があるんだがな。

 弾丸より先にMPが尽きちまうな。

 やっぱ、マナリスを使うか。


 俺は胸の『格納庫』からマナリスを取り出し、左手に構える。

 ちょうどジャイアント・ビートルは再び飛び上がり、こちらに角を向けているところだった。


「キシャ──!」


 そして、物凄い勢いでこちらに突進してきた。

 恐らく『猪突猛進』だと思われるが敏捷の差から予想した通り、避けられそうにない。

 避けようとしたが、避けられず胸に角が直撃した。

 衝撃が身体を襲うが俺の身体は多少揺らいだ程度だった。


 はて? 

 想像してたより衝撃が弱いぞ? 


******************

名前:マキシス

種族名:マシンガンナー

状態:通常

性別:不明

LV:10/18

HP:65/70

MP:74/94

******************


 かすり傷じゃねぇか。

 え、嘘、弱くね? 

 ステータス的にそこまで差はないが。

 しかし、これなら余裕だな。

 俺は胸元のジャイアント・ビートルにマナリスを振り下ろした。


[経験値を獲得しました。称号『魔なる神の加護』の効果で経験値が増加します。84の経験値を獲得しました]

[経験値が一定数値に達しました。LVが10から13に上がりました]


 やはりこの手に限る。

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