第二話 ミミック生活の始まり

 私はパンドラミミックへと進化することに成功した。するとその瞬間またもや管理者画面が開いた。

〔パンドラミミックへと進化し、能力値が上昇しました。 スキル:叛逆の宝玉を獲得〕

〔Lv.89 種族:宝箱種 名前:エクセラ 生物名:パンドラミミック スキル:握獄,衝撃の魔眼,叛逆の宝玉 所有物:業火の剣 管理者権限:有り〕

「ミミック一体を倒しただけでここまで強くなるのか…。」

 思わず独り言が漏れる。

 どのスキルも私にはわからないが、よりは確実に強いだろう。能力値も上昇したからか身体が軽く、ミミックを倒す前よりも早く動ける。

 さて、これからどうしたものか。この洞窟を出るべきなのか。いや…それとも魔物ミミックである今の状態では外に出ない方が良いのだろうか。そんなことを考えながらふと横に振り向くと、大きな扉があることに気づいた。さっきの魔鉱石の大きさと比較すると…かなり大きいことが分かる。

 私は内なる好奇心に従ってその扉を開こうかと思ったが、安全を確保するためにも先に管理者画面を開こうとした。しかし…

〔管理者画面にアクセス失敗しました。管理者権限レベルの減少を確認。それに伴い情報の変更を行いました。 管理者権限:有り→無し〕

 管理者権限が無くなった…?外部から剥奪されたということだろうか。これもラムダルの仕業なのだろうか。今までは誰もこの世界に興味がなかったであろうに。

 ……もしかして『情報開示』も使えなくなったのだろうか。試しに私は『情報開示』を発動しようとした。

『情報開示』

〔Lv.89 種族:宝箱種 名前:エクセラ 生物名:パンドラミミック スキル:握獄,衝撃の魔眼,叛逆の宝玉 所有物:業火の剣 管理者権限:有り〕

 何の違和感もなく発動された。管理者権限は剥奪されたのに対し、未だ『情報開示』が使えるとはどういう状況なのか。

 管理者権限が剥奪された私に残された道は好奇心に任せてあの扉を開くことのみであろう。''今持っているスキルの内容も知らないのに扉を開いて大丈夫なのだろうか''とも思ったが、その時には私の宝箱身体が扉に触れていた。

 扉に触れた瞬間洞窟内に大きな振動を伝えながら扉が開き出した。

 中には様々な宝石がこしらえられている大きな玉座、それと扉を結ぶかのように敷かれた真っ白なカーペットがあった。

 明らかにこの部屋に入ってはいけない予感がする。だが私の好奇心は予感に止められる程やわなものではなかった。中へ入ると入って来たはずの扉は私の背後から消え、またもや大きな振動が洞窟内に伝わった。すると…

「久々の客が来たか…。何千年ぶりだ…?」

 その大きな声とともに大きなつるぎを両手に備えたいかにも魔神と呼ばれるような見た目のものが現れた。恐らく、本当に長い間誰も来なかったのだろう。それを真っ白なカーペットが物語っていた。

「我は魔神クロサレム。態々此処までやってきたようだが我の剣の錆となってもらおう!」

 魔神クロサレムははなから闘いつもりのようだ。私もこんな所で負けるわけにはいかない。しかし私とこの魔神では容易に想像できないほどの力の差があるのだろう。

『情報開示』

 私は魔神に対して『情報開示』を使った。

〔Lv.6853 種族:異神種 名前:クロサレム 生物名:魔神 スキル: 繧ュ繧サ繝弱Φ, 繧ソ繝ウ繧ー繧ケ繝?Φ, 繧ウ繝壹Ν繝九す繧ヲ繝?, 繧ヲ繝ゥ繝ウ, 繝励Ν繝医ル繧ヲ繝? 所有物:魔剣エクストラム,神剣ラグス〕

 明らかに勝てる相手ではない…。それにしても情報開示でスキルが表示されないとは

 どういうことだ?これも管理者権限が剥奪されたことに関係があるのだろうか。

「来ないのならこちらから行くぞ!!」

 魔神はその大きな剣を振う。あれに当たれば確実に死ぬのだろう。まずは…

『握獄』

 宝箱の中から青黒い、手を模した形の影が1本、2本、3本と次々に出てくる。しかしレベルの差は6000以上、そう易々と大きな剣は止められない。私は間一髪のところで避ける。

「フハハハハ!ちょこまかと逃げるなぁ!!この獲物を追う感覚は久しいぞ!!!」

次々に魔神は剣を振るう。握獄が通じないのであれば次だ。

『衝撃の魔眼』

グワッと魔神が体勢を崩した。どうやらこの技は有効なようだ。しかしどうやら体勢を崩しただけであってダメージは殆どないようだ。

「今のは少し驚いたぞ…!『衝撃の魔眼』を使うミミックは初めてだ!久々の相手がお前で我は嬉しいぞ!」

どうやらこの技について知っているらしい。そんな相手に勝てるのか…?でも私は負ける訳にはいかない。絶対に。

『叛逆の宝玉』『衝撃の魔眼』

同時に二つスキルを発動する。『叛逆の宝玉』から放たれた光が魔神を突き刺す。

「今のは効いたぞ!だが威力が足りない!!!『轟烈斬』!」

その瞬間身体が動かなくなる感覚がした。恐らく斬られたのだろう。

「どうすれば……。」

あまりの力量の差に心の声が漏れる。どう考えてもこのままだと私は最も簡単に殺されてしまうのだろう。何か方法はないのか、あの魔人に大きな一撃を与える技が。いや、まだやれることはある!!

『叛逆の宝玉』

私は魔神の手の近くで『叛逆の宝玉』を発動させ、

『衝撃の魔眼』『衝撃の魔眼』『衝撃の魔眼』!

私は何度も『衝撃の魔眼』を発動させた。すると魔神の手から剣が落ちた!

「ほぉ…?」

魔神が呆気に取られてる間に、『握極』と『衝撃の魔眼』を再び発動させその剣を魔神の方へ放った!!

剣が魔人の大きな体を貫いた。すると、まるで何もなかったかのように魔神は光の粒となり、消えていった。

〔魔神クロサレム Lv.6853を討伐しました。〕

勝った…?いや、管理者画面がこう言っているのだから本当に勝ったのだろう。

〔レベルが上昇しました。Lv.89→Lv.6303へと上昇。魔神の眼を獲得。異神種討伐に伴いスキル:握獄が進化し、スキル:神握しんあくとなりました。レベルアップに伴いスキル:衝撃の魔眼とスキル:叛逆の宝玉を合成できます。合成しますか?〕

スキルの合成…。こういうものもあるとは知らなかったが、1つのスキルにした方が便利であろう。

〔スキル:衝撃の魔眼とスキル:叛逆の宝玉が合成され、スキル:堕天の勾玉になりました。スキル:潜伏を獲得。スキル:不意打ちを獲得。レベルアップに伴いスキル:潜伏とスキル:不意打ちを合成できます。合成しますか?〕

やはりレベルが6000も上がると新しく覚えるスキルも多いようだ。このスキルも合成させておこう。

〔スキル:潜伏とスキル:不意打ちが合成され、スキル:暗潜あんせんになりました。称号:異神殺しを獲得。それに伴い能力値が上昇。〕

これで終わり…かな?そういえば今回は進化がなかった。ここまでレベルが上がって進化がないとは、もしかしてもう進化はないのだろうか。すると突然管理者画面が開いた。

〔ダンジョン:No.00をクリア。外へと転送します。〕

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