姉って?妹って?LGBTクリスマスケーキに、教育の価値を、トッピングしてみたら…。

@maetaka

第1話 姉妹の事情。神か、悪魔か…?

 社会は、いくつもの事情が絡まった、神話のようなものだ。

 私は、どこかで、こんな神話を、聞いたことがあった。たしか、何者かに誘われた人が主人公となった(かわいそうになあ)話だ。

 「…ねえ、君?神様に、なってみないかい?それとも、悪魔になってみる?永遠の命を、手に入れられるよ?どうかな?それって、すっごく、価値あることのように、聞こえないだろうか?」

 その話は、どこで、知ったのだろう?

 私の、体験(違うって)?

 …学校の、図書館から借りた何かの本で読んだ?

 自宅にあった本でも、読んだのか?

 いたいけな私(自分で言うな)には、まるで、思い出せなかった。

 「永遠の命って、いったってさ…。それがどう価値あるものなのか、本当のところは、わかったものじゃないじゃないの」

 それが、その神話の教訓だったのだろうか?何もかも、あやふやなものだ。そういう話を、教育的指導に盛り込む人って、痛い感じだ。

 教育者って、そういうもの?

 「…それを教える教育者自身が、神話の意味なんて、理解できていなかったくせに!特に、今どきの学校の若い先生では、社会のたくさんの事情を解く勇気も知識も、ないんだろうし。って、それはさすがに、飛躍した考え方?この漫画は、いけてないなあ」

 良い気分で、休日を過ごしはじめていた。

 「また、ユキノは…。漫画を、読んでいるの?やめなさい」

 母は、うるさかった。

 「漫画なんて、ダメ」

 かつて、漫画は、母のその言葉の通りに、悪書とされやすかったものだ。

 「あんなのは、欺瞞。暴力でしょう?」

 なるほど、漫画は、欺瞞の嵐っぽかった。

 主人公らが敵対する者たちをやっつけるんだという暴力を肯定し(これって、おとぎ話なんかでも、ほぼほぼ、同じ)、ときには、命の価値を踏みにじるような描写もしたものだ。

 私たち子どもは喜んだが、それも、大人の視点からすれば、一喝だ。

 「そんな暴力物は、ダメ!」

 しかしその言葉こそ、暴力だと思えた。

 「お母さん?どうして、漫画は、暴力物だっていえるの?社会にあふれる漫画は、皆、暴力物なの?その理由って、何?」

 そう反発すれば、ほとんどの親が、言葉を返せなくなった。

 なぜ、いけないのか?そこには、どのような事情と価値があり、私たちにどのような影響を与えるのかが、親自身で、分析できていなかったのだろう。

 「若い学校の先生レベル、だわ…」

 休日、朝からごろごろ漫画を読んでいた私は、他人のことなど棚に上げて、そこそこ、楽しんでいた。

 「社会の事情を読めないなんて、価値の曲解なのよね…」

 漫画にたいする私の見方は、変わっていった。

 …のかも、しれなかった。

 「ごめんよ、漫画たち」

 心の中で、良く、謝っていた。

 「私も、甘かった」

 そうなのだ。

 よく考えれば、私だって、漫画に描かれていた行為のうわべだけを見て、勝手に、価値を見出そうとしていたのかもしれなかったのだ。

 「…私、どうして休日に、こんなことを考えているんだろう?休日なのに、じゃなくって、休日だから、かな?まあ、いいや」

 まあいいやと思いつつ、身体全体が、晴れなかった。

 そこにきて、先ほどの、神話の場面だ。

 「神様に、なってみる?それとも、悪魔?」

 そう言われた人は、永遠の命を手に入れられるからという甘い蜜で、誘われた。が、その人は、その甘い誘いを、見事に、断ることができていた。

 なぜ、断れたのだろう?

 その人は、こう、言ったという。

 「永遠の命に価値があるのなんて、わからない。だから、そんな誘いは、受けられない。お前には、永遠の命の価値というものが、どう理解できているんだ?理解、できていないんじゃないのか?だったら俺は、乗れないね」

 いい加減な教育者は、どこの社会にも、いたようだ。

 「あれ…。同じだ」

 丁度私が読んでいた漫画にも、そのようなシーンが、出てきた。

 「人間の価値は、期限がある点だ。神か悪魔か知らないが、それになってしまえば、もともとの人間という、かけがいのない命の価値を汚すことになるんじゃないのか?だったら、嫌だ。神にも悪魔にも、なりたくない」

 神とは何か、悪魔とは何か、私の心の中の価値観を絶妙に揺さぶりはじめた話は、ビミョーにも、ずるずると、侵し続けていた。

 価値を問う神話は、絶妙の、スパイスだ。

 絶妙でいて、ふわふわと、捉えどころがなかった。

 私たちは、その、捉えようのない部分について、必死に考えて、抜けたピースを補っていくしかないのか?

 「漫画なんて、ダメ!」

 そんなこと、誰が言ったのか?

 もちろん、母が言ったのだけれども、そんなのも、もう、いいや。

 …なんてことを考えながら、そろそろ本格的に起きようかと、哲学していた。

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