第4話 [集いし女子]

「へっくしっ!! ズズッ……風邪……?」


 下校途中、なぜかいきなりくしゃみが出た。

 早くあったかいシャワー浴びよう……。


「ただいま」

「お帰りー」


 家へ帰ったら一直線に風呂場へ向かい、シャワーを浴びた。

 シャワーを浴びる前にトイレに入ったが……。まあ……今日はトマトスープは食べたくないと思った。

 その後は何もなく就寝した。



〜〜



 朝、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んできている。

 鳥の囀りも聞こえる……。

 実に清々しい朝———


「じゃなぁぁああい!! やっちまったぁああああ!!」


 うーわ、やっちまったよ。

 クラス一の陽キャに壁ダァン☆からの顎クイ、そして耳元で囁く?少女漫画かよぉ……。

 仮に少女漫画だとしても私主人公ポジじゃねぇじゃん。


 あと図書委の子にも偉そうな口で言っちゃったし……。

 迷惑だったかなぁ……。


 最後は令嬢様に舐めた口聞いちゃってたし……。

 金と権力で潰されない?大丈夫?


「はぁ……とりあえずいつも通りでいこう……」


 だるさは少し残っているけれどだいぶマシになった。

 今日はちゃんと髪を結び、メガネをつけて制服もちゃんと着た。


「行ってきまぁす……」


 重い足取りで学校まで向かった。



〜〜



 教室のすぐ目の前まできた。


 大丈夫だろうか……。机に落書きとかされてないかな……。

 えぇい! 女も度胸! 行くぞ!!


 教室のドアをガラッと開けるとクラスメイトが一斉にこちらを見てきた。


「うわっ……」


 やっぱり昨日目立ちすぎた……。反省だな。慎むべし、慎むべし。


 私は自分の席に座ろうとしたのだが、自分の机が他とは全く違うことに気がついた。


 なんと……机の上がピカピカだったのだ……!

 もう……ピッカピカ! 鏡か? ってくらい反射してる。


「な、なんだこれ……新手のいじめ……?」


 私が自分の机の前で突っ立っていると、陽キャリーダーこと美澄 華織がいつのまにか近くに立っていた。


「な、何かご用ですか……」

「すー………」


 私が問うと、何も答えずに息を吸っていた。


「お……お……」

「お……?」


 な、なんだ……? 「お前のせいだ」的な? やめて、お姉さん許して。


「お友達になってくれませんか!?」

「——……は?」


 何故に? だって私昨日あんなことしちゃってたし。

 逆にいじめられるかと思っていたのに……。


「な、何故?」

「ほ、ほら! “まずはお友達から”とか言うじゃないですか!」

……? しかもなんで敬語?」


 友達になるかならないかの答えは“ならない”がいい。だって高校ではぼっちを満喫するつもりだったしなぁ。

 だが……。


「ダメ……ですか……?」

「うっ……そんな潤んだ目で見ないで……」


 こいつ本当にあの華織か……? 偽物じゃないのかってほど性格が豹変しているのだが……。


 さて、どうしたものか。とりあえず嘘はついていないことはわかる。そういうのを見破るのは得意だからだ。

 見破ってもどうするかが問題なんだよ。なんの解決にもなってないよ……。

 だがここで断ったら周りからの猛バッシングを受けそうだからなっておくか……。


「まぁ……構わないけれど……」

「本当ですか!? やったぁぁ!!」


 私が答えるとガッツポーズをしていた。まあ適当に受け答えしておけばいいだろうと思っていた。


「じゃあなんて呼べばいいでしょうか……百合園さんとかはダメですか!?」

「えぇ……さん付けじゃなくて普通に文乃でいいよ」

「そんな……まだ早すぎるので姉貴と呼ばせてもらいます!!」


 姉貴!? な、なんか嫌だ……。だけどめっちゃキラキラした目で見つめてる……。


「はぁ……まあいいや、承諾……」


 私はため息をつきながらピッカピカの机がある席へ座った。


 まあまだこの子だけだから私の安寧の学園生活は守られ——


「すみません、このクラスに茶髪で琥珀色の目をした超かっこいい女子の方はいらっしゃいますか?」


 聖女様こと海宝雫がいた。


『さようなら、僕はここでおさらばするよ』

『ま、待ってくれ!私の平和な学園生活ぅぅ!!』


 やばい……今度こそはやばい。華織は丸く収まったけれどお次はご令嬢様だ。そう上手くはいかないはず……。

 いや待てよ……?昨日の私は髪結んでなかったしメガネかけてなかった……。いけるのでは!?


「「「「「じー………」」」」」


 クラスメイトが私の方をジッと見つめていた。

 完全に忘れていた。昨日クラスメイトにめちゃめちゃ見られていたことを……。


 どうする私! どうする!?

 そ、そうだ!華織ということにできないか!?

 いやこいつ赤髪だったぁぁぁ!! 赤髪なら私に麦わら帽子でも授けてくれぇ!そして髪の毛の色を隠させてくれぇ!!


 そんなことを考えているうちに聖女様が私のすぐ真横まで来ていた。


「あ、あの……えーっと……人違いではナイデスカナ?」


 少し声を高くしてバレないようにした。

 クラスメイトがこっちを見ようが本人が否定すればいけるはず!


「ああ、やっぱり! 昨日のお人ですね!?」


 なんでわかんねん。

 だがバレてしまっているのならば仕方がない……謝るか、消されるか……ッ!!


「あの、昨日は本当にすみま——」

「昨日は本当にありがとうございました! 旦那様♡」

「「「「「旦那様!?」」」」」


 突如聖女様こと海宝さんに手を握られ、そんなこと言った。

 いや、どゆこと?


「ちょ、待て待て! 怒ってないの!? っていうか旦那様でもない! 私は女だ!!」

「ふふふ、性別なんて関係ありませんよ? 百合園 文乃さん」

「な、なんで私の名前を……」


 さらに私の手を握る力が強くなり、顔もずいっと近づけてきた。


「おい、離れろ女狐」


 華織が海宝さんを私から引き離した。

 「助かったぁ……」と、思ったのもつかの間。


「あら、なんですの? わたくしと百合園様との時間を邪魔しないでくれます?」

「あんなこそ、あたしと姉貴との時間邪魔されたくないんだけど」


 私から離れたはいいものの、二人とも睨み合ってバチバチと火花を散らしていた。


 あるぅぇー? どーしてこーなった。

 だ、誰か助けてぇ!


「昨日何があったんだ!?」

「華織さんだけでなく聖女様まで……」

「なんなんだあいつは……」

「昨日は別人だったな……」


 クラスのみんなからも希有な存在として見れられている気がする!

 だめだ! 誰も味方がいない!!


 私が頭を抱えながら悩んでいると、またも教室の扉が開く音が聞こえた。


「あ、あの! このクラスに茶髪で琥珀色の目をした昨日助けてくれた女の子はいますか!?」


 そちらに目を向けると東雲 真雪がいた。


 私に追い打ち……いや、オーバーキルをするつもりなのか……?


 私がそちらに目を向けないようにしていたのだがなぜかこちらへ近づいて来ていた。


「もしかして昨日の……」

「ヒトチガイダヨ」

「やっぱりそうだ!!」


 だからなんでやねん(二回目)。


「昨日は本当に助かったの! だからお礼を言いたかったし……」


 気に障っていないようだった。よかったぁ。だが何かもじもじとしていた。


「ぼ、僕とお友達になってくれないかな!!」


 僕っ娘……だと……!? 属性詰めすぎじゃあないか?

 まあいいさ。


「別にいいよ、私は百合園 文乃」

「ぼ、僕は東雲 真雪!」


 私たちは握手してお友達となったのであった。先ほどの二人はまだギャアギャアと口論しあっていた。

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