第10話 玄龍寺招集会議!!

ーーーーーー



「だいたいの話の流れは分かった。…これは魔王の人相書きか?」

「そうです」

「…なるほど。覚えた」


秋仁さんの手腕でスムーズにこれまでの事の成り行きと情報の整理が終わったところで、漸く冬篤が大蛇から解放された。流石の冬篤もグッタリしている。


まあ、そりゃそうだろう。

大蛇の締め付ける圧力は人間の最高血圧値を超えるので、心臓が血液を送り出すことが出来なくなり、本気で締め付けられたら1分も経たないうちに気絶してしまうだろう。

あな恐ろしや。


しかしケツはまだ出したままなので同情するに至らない。早くケツしまえ。



おっと、コレも伝えておかなきゃ。


「あ、あと、首の後ろに俺のヘタクソな破魔札の字が入ってる」

「!」

「え、破魔札は効かなかったんじゃ…?」

「確かに自称魔王の魔を打ち破るほどの効力は無かったけど、アイツの体内で創造された魔を、循環阻害して外に放出されにくくするくらいには効いてる」



「……………」


みんなが驚いてる中、秋仁さんは静かに俺を見据えている。

秋仁さんのあの目は、より多くの情報を得ようと相手を捉え、物事の本質や真意を見極めようとする目だ。


「これは勘だけど、自称魔王は、魔氣を創造できると言っていたから、心臓〜鳩尾辺りに魔氣を創造できる器官のような物があって、そこから体内に循環させているんじゃないかと考えてる」


ホワイトボードに図説しながら説明を続ける。


「自称魔王は魔法?を放とうとした時、手を翳したが魔法?は出なかった。多分、俺の破魔札の字が、首の後ろから右肩にかけて入っていると思う。親父の放った破魔札はきっと

左の肩甲骨から肩にかけてか、左腕に入ってると思う」

「あ、だから、手からは魔法が出なかったってこと?」



そう、本来破魔札は魔を打ち破るものだ。自称魔王の魔、全てを打ち破れなくとも、貼り付いた部分の周辺の魔は打ち破っているのだろう。…親父の破魔札が左の肩甲骨でなく、左の胸に入っていれば、魔氣を創造させる事も阻害できたかもしれない。心臓部に貼り付けられていたら倒せていたかもしれない。…惜しかった…実に惜しかった!



「……………」


多分、秋仁さんは今の話を聞いて、何かを掴んだ筈だ。

秋仁さんは鬼才と言われるほどの切れ者だ。俺以上に何か気付いた事があるのかもしれないけど、証明や確信が持てない時は話してくれないからなぁ。


「……信善、破魔札が入ったのは文字だけか?印は確認出来たか?」

「黒いコート着てたから、首の後ろの本の一部しか見れなくて、印までは確認出来ませんでした」

「……そうか。文字だけだとしたら、いずれ消えてしまうかもしれないな」


そう、法力の込めた文字で札に明確な役割(破魔札なら魔を打ち破る力)を持たせ、それを留めて維持できる様に印で固定、又は封じさせる。

なので、印が無いと、維持できる確率が大幅に減るのだ。



「今なら破魔札の影響で首から上、腕から手には魔氣は流れない。となると、魔法?を出そうとするなら腰とかヘソ辺り〜足にかけてになるから、そう簡単に使えない筈だ」

「それでケツ…?」

「ん〜…魔法?の元になる魔氣とやらも氣のようなものだとしても、ケツ周辺の経穴は本来、陽の気が集まりやすい経路の経穴なんだ……それがケツ周辺の腰兪か長強辺りの経穴から出たとなると…やっぱり人間と身体の仕組みが違うのかな」

「力んだら屁が出ちゃったみたいな感じなんじゃね」

「言い得て妙w」

「アホか」



「……………」


いつの間にか復活していた冬篤が、珍しく顎に手を添えて真剣な表情で何やら考えている。


まぁ、変人だけど、頭はキレるし実力も相当にスゴイからな。やる時はやる男なので、今の話を聞いて、何か対策を思いついたのだろう。秋仁さんが鬼才なら冬篤は奇才だ。こういうところは凄く頼もしくてカッコいいんだけど…。いかんせん、変人気質が好評価を振り切ってしまうのだ。


「あ、さっき激しく締め付けられたせいで、フンドシが緩んだ…。誰か俺のフンドシ締め直してくれー。このままじゃ、俺の全てが丸出しにーー



好評価を振り切ってしまうのだ。



冬篤はフンドシを締め直す前に大蛇に絞め直されていた。



まぁ、大蛇に絞めつけられて腕が痛くて動かせないか、まだ腕に力が入らないかで、自分でフンドシを締め直せないんだろうけど、ワザと余計な言い回しで余計な事まで言うから…。



「山田くーん、締め直してあげてー」


自我を持たない下位式神、山田くん。黒子の様な格好をしている。俺は何となく山田くんと呼んでる。山田くんはグッタリしている冬篤のフンドシを駄犬と一緒に締め直してあげていた。



「何にせよ、その魔王が力をつける前に何とかしないとだねぇ〜。生まれたてなのに強かったんでしょ?」


生まれたてって…


「そんな可愛いもんじゃなかったですけどね!言っときますけど、格闘系めっっっちゃくちゃ強いですからね!!!躱すのが精一杯で反撃の一つも出来なかったくらいにね!一歩でも間違えてたらボロ雑巾より悲惨な末路になってましたからね!」


顔面と五臓六腑全部風穴開くところでしたからね!!!


「そんなにか。ヤバイな」

「え、信くんが反撃出来なかったの!?」

「格闘バカが生まれたてに負けた…確かにヤベェ」

「負けてない!!!」

「でも、こういうのは、復活したてでまだ力をつけていない今のうちがチャンスなんじゃない?」


そりゃそうなんだが…


「ケツから火を噴くという予想外の出来事に呆気に取られてらるうちに逃げられちゃって、その後の行方が分かんない☆テヘペロ」

「バカ猿」

「黙れ駄犬」


「春さん」


秋仁さんが春徳さんに問いかける。


「はい、何でしょう?」

「春さんも何か考えやお話がある、違いますか?」

「ふふ、流石ですね。私も確かなことはまだ言えませんが、取り敢えず本山と宮家本家に御伺いしようと思います」

「…なるほど。では7つの対魔の力と神器はお任せします」

「うへぇ〜…曲者揃いの本山に自ら赴くなんて物好きくらいなもんだよ」


いつの間にやら再復活していた変人。変人に曲者揃いと言われるなんて、、、本山恐ろしや、、、。


「とりあえず、各自、今出来る対策としては、武術強化。信善の護衛。式神を遣った捜索…こんなところか。魔王の氣の解析が出来ればそれに合わせた対魔王用結界と札、護符を」

「俺の護衛とか、大丈夫ですよ。自分の身は自分で護ります!」


みんなの負担にはなりたくないからね!


「猿のお守りか…」

「だから要らないっての!誰が猿かっ!」

「では、桃花鳥姫ときじを渡そう」


秋仁さんが小鳥の式神を渡してきた。




……トキジさん可愛いいいーーーーー!!!!!





えっ、ふわっっっふわっっっ!!!


白に近いパステルカラーの毛色!?羽色!?

おわーーーーー!!!羽広がると超キレイーーーーー!!!

長い尻尾までもキレイーーー!!!!!


おおーーー!!鳴き声まで可愛いーーーーー!!!!!



「秋仁さん何ですかこの可愛すぎる式神生物は!?いつからどこに隠し持ってたんですか!?」

「………可愛い、か」


秋仁さんは何か意味深なセリフを言いながらトキジさんの背中に紐を通した特殊な硝煙弾をかける。

ナップザックを背負った小鳥みたいだ。可愛い。癒される。


「魔王に遭遇したら、桃花鳥姫はクチバシで紐を切って背中から硝煙弾をおろしたあと、足と口を使って硝煙弾を打ち上げ、俺の元に知らせに飛んで行く」

「ぴっ」


トキジさん賢いー!!!器用ー!!!可愛いーーー!!!


「魔王が現れたら俺が相手をしよう。いろいろ試してみたいことがある。白狼。お前も信善の側に。俺が行くまでの間、信善の護衛と補佐を任せる」


秋仁さんに招ばれて白くて大きな狼が現れた。





カッッッコイイイーーーーー!!!!!!!!!

強そぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!!!!!



素晴らしい毛並み!!!

骨格や体格、シルエットまでもがカッコいい!!!!!


しかし、秋仁さんの元を離れるのはとても寂しそうだ。

秋仁さんが大好きなんだね。なんだか可哀想になってきた。


「いや秋仁さん、白狼はーー

「…桃太郎」

「何か言ったか駄犬!!」


誰が猿かっ!!!


「…あぁ、確かに。秋仁さんは申、酉、戌の方位を守護する退鬼師、秋宮家の出身だもんな」

「そこに、申、酉、戌、か。真も上手いこと言う」


誰が申かっ!!!


「えぇ〜?!秋ズルイ、俺が行くよぉ〜。お前学校あるだろう」


珍しくやる気の変人。


「その時に行ける人選で向かえばいい。学校の方は上手く話はつけておく。寺への襲撃にそなえて、いくつかの作も立てよう」


ふぁぁぁーーー!ほんっとうに心強い!!!

もぉ、魔王の存在とか霞んできた(笑)


こうして、召集会議から作戦会議にまでなり、着々と話は進んでいった。


そしてようやく、会議が終わって解散の流れになった時、

秋仁さんに手招きされた。


「秋仁さん、何でしょうか」


「あぁ、大したことではないのだがーーー










 ケツの縫い目、破けてるぞ」



「…………………」






えええぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!!!???




「いつからですか!!?」

「俺が来た時には既に破けてたが」

「早く言ってくださいよっ!!!!!」

「魔王についての話の方が最優先だから先に会議を進めた」



どこまでもクーーール!!!


そんなところも大好きですがっ!!!



「俺が来た時には破けてたんだ。皆も既に知ってただろう」




恥ずかしいーーー!!!!!


俺、超ーーー恥ずかしい奴じゃん!!!!!



破けたケツで、ホワイトボードで説明した…り…


ホワイトボード書いてる時、めっちゃケツ丸出しやん!!

だって書いてる時、後ろ姿みんなに見せてるわけだしね!?


そんで、なに、破けたケツで魔王のケツから火を噴くジェスチャーしたり、あいつ自分の魔法でケツ破けてたんだぜみたいなこと言ってたりしてたわけでしょ俺!?自分のケツも破けてるクセに!!!



恥ずかしいーーー!!!!!


俺、超ーーー恥ずかしい奴じゃん!!!!!



えっ、待ってまってマッテ……!!!

聡嗣先輩と叡治先輩、写メとか動画撮ってたよね!!!?



恥ずかしいーーー!!!!!


俺、もう超ーーー恥ずかしい奴確定じゃん!!!!!



てか、怖い!!頭脳派コンビ怖い!!!後が怖い!!!!!




というか、、、!!!


何故!!誰も!!!教えてくれなかったのか!!!!!


いじめ?!新手のいやがらせ!?



あぁ!!だからあの時、変人が俺のケツニヤニヤ見てたり、

まんまお前じゃねぇかとか言ってたのか?!



くそぉぉぉあぁぁぁーーー恥ずかしい!!悔しいぃぃ!!!



おれが硬直しながら悶々とこんな事をフル回転で考えてるのを知ってか知らずか、秋仁さんが淡々と


「繕ってもいいが、新しいのを新調した方がいいだろう」


と言いながら去っていく。




どこまでもクーーール!!!


もぅここまできたら抱かれてもいい!!!(ヤケクソ)

もぉ今ならどんな恥も怖くない!!!(ヤケクソ)

くっそぉ〜〜〜!!!

でも大好きだぁぁぁ!!!尊敬してます!!!!!



「……………」



寂しそうに秋仁さんを目で追う白狼。大狼なのに捨てられた仔犬みたいだ。……可愛いなコイツ。カッコイイくせに。



「……白狼。とりあえず、恥ずかしいから俺が入れる穴掘ってくれ」


まさに穴があったら入りたい状態だ。


…穴は入れるか出すかするためにあるもんだという変人のセリフが一瞬浮かんだがすぐに消し去った。




「…………」


白狼は片手を大きく挙げて





ドシャァァァーーーーーーン!!!!!






俺の頭を床に叩きつけた。





「「「 !!!!!???   」」」




何事かとみんなビックリしてこちらを見た後、

なんだなんだと様子を見に集まってきた。





………白狼よ。違う、そうじゃないだろう。


確かに俺サイズの人型の穴が出来たけど、

入ってるんじゃなくて埋まってるって言うんだからねコレ。


ていうか、モノスゴイ馬鹿力でモノスゴイ衝撃………





死んでしまうわぁぁぁーーー!!!!!





扱い悪いなこのヤロー。


狼なので、少しずつ俺の方が上だと躾けしていかないと、

今後もこんな扱いされるだろう。


俺は負けない!!


今のも俺に掘れと言われて、ココ掘れワンワンかっ!ってツッコミを入れたのだとポディティブ解釈しよう。

ポディティブって大切だよね。




「…犬猿の仲w」


誰が猿か!!っと言い返そうとして、自分のケツが破けている事を思い出す。


また破けたケツをこの集まっている公衆の面前に晒すことになると気づき、バッと上を脱いで腰に巻く。



「ちきしょーーー!!覚えてろよぉ〜!!!」




「「「 ……………… 」」」




俺は何処かで聞いたことのあるセリフを言いながら走り去って行った。

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