ヒガシマルで花丸なお夜食

ちょこっと

第1話 白くてふわふわな、お出汁じゅんわり。

 おなかがすいた。


 自然な欲求。


 そう気付いてしまうと、途端に頭の中は空腹というシグナルで埋め尽くされる。


 お腹はからっぽなのに、頭は食欲で一杯になる。ふふ、減ってるのにいっぱい、へんなの。


 そんな事を思いながら、一人で深夜の台所へ向かう。目指すは冷蔵庫、もしくは乾物をストックしている戸棚。


 さてさて、今夜は何を頂きましょうかね。




 何が入っているかだなんて、だいたい頭に入っているのに、つい中をゴソゴソあさってしまう。


 卵かけご飯? いやいや、深夜にご飯はカロリー的にちょっと、食べたいけれど、ちょっとね?


 そう、今夜はやっぱり君に決めた。


 私は、白くて四角いソレを冷蔵庫から取り出した。


 お鍋に浅く3~4cm程度の水を張る。


 そこへヒガシマルのうどんスープを一袋サラサラ入れる。


 このうどんスープ、粉末つゆの素は自炊し始めた頃からの付き合いである。

 書いて字の如く、当然うどんスープに合う。だし巻き卵の味付けにも合う。おでんにも最高。茶碗蒸しにも完璧。いつも切らさないヒガシマルは、マヨネーズみたいにいつだって台所で控えてくれている。


 鍋を軽くオタマでかきまぜて、冷蔵庫から出したソレをそっと入れる。


 そう、はんぺんだ。


 はんぺん。魚肉にヤマイモなんかをすりまぜて蒸して固められたもの。


 つい、バター醤油で焼きたくなるが、それだとカロリーがね。夜食にはね。


 四角いままお鍋に入れたはんぺんを、オタマでざくざく食べやすい大きさに切っていく。包丁やまな板で切るなんて、自分の夜食に洗い物を増やすような事はしない。柔らかいはんぺんは、オタマでも簡単に切れる。これで十分。


 そう、はんぺん。カロリーも脂質も低くて、タンパク質は多い。タンパク質は筋肉の維持や基礎代謝向上なんかでダイエットに適していると言われる。


 お鍋のなかでふつふつと、すぐに膨らんでくるはんぺん。お出汁を吸って、うっすら色づくはんぺん。おでんのはんぺん味。ごくり。


 疲れ切ってる時は、これで完成。

 でも、今夜はちょこっとだけ足しておこう。野菜室にある緑を、思い出した。


 冷蔵庫の野菜室から、ブロッコリースプラウトを出す。出来るだけ生食が栄養素的には良いと言われているけれど、生だと苦い! 結構苦い。だから、火を止めてからサッと入れて、荒熱で少し苦みを抑えるようにする。お味噌汁の時のお味噌みたい。沸騰している時には入れず、火を止めてから入れる。それだけでも、苦さは減って、丁度良いアクセントになるから。


 しまった、やはりまな板と包丁が必要か。ブロッコリースプラウトをさっと水で洗って、ざっくり切る。スポンジから生えてる種部分を切るだけなんだけどね。


 火を止めたお鍋にパラパラ入れて、どんぶりを出す。


 どんぶりへ豪快によそって、仕上げの七味をぱららっと。


 仕上げは、七味でもいいし、ポン酢醤油を回し入れてもいいし、梅干しを落としたって最高。



 ほかほかのどんぶりには、あったかいお出汁。ふわふわのはんぺん。しんなり緑のブロッコリースプラウト。


 さあ、口に入れると、お出汁がじゅんわり。はっふはふ。ちょっと苦い緑が口の中をリセット。またはふはふ。


 どんぶりいっぱいのおいしいは、あっという間になくなった。



 ああ、お腹からあったまって眠たくなってきた。

 今夜は、もう歯磨きして寝よう。


 ごちそーさまっ。おいしかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る