オクラホマミクサー

 放課後、カイタムが「ちょっくら密ろうや」と宣言したため、イーちゃんはハカセとハルキチも誘ってジャクリーンコレクションカルテットを緊急再結成し、ファストフードを離陸テイクオフして公園で密になっていた。

 カイタムはなぜ密ろうと思ったのか。イーちゃんは訝しむ。


「……オクホラマミクサーって、やったことある?」

「突然、なんだい?」


 ハルキチが象さんマークのシェイクをズゴっと啜った。

 

「だからオクラホマミクサーだよ。やったことある」

「……よう分からんが、それはやることなのかね」


 カイタムは一度でいいから頼んでみたかったという、丸ごと!!カニバーガーの異形を見つめながら興味なさげに聞き返す。

 イーちゃんが、じっくり真剣に頷いた。


「うん。おっかちゃんが子供の頃にやったんさーって言ってた」

「……なんと。イーちゃんのおっかちゃんは沖縄の人だったのか」

「違うけど」

「じゃあなんで、やったんさー、って」

「噛んだからかもしれないし、オクラホマミクサーの話をするときの儀礼なのかもしれぬ……」

「急に武士」


 ハルキチは自分の真正面で額をテーブルにくっつけているハカセの後頭部を優しくチョップ。

 ぶぇ、と小さな悲鳴をあげてハカセが額をあげて顎を机にくっつけた。


「なんぞ」

「ハカセの知識を借りたいのだ」

「……よかろう」


 ハカセは丸メガネが似合いすぎてて黙ってれば頭が良さそうに見えるのでハカセと呼ばれていた。JCQで唯一、愛称の理由が決まっているのだ。

 ハルキチはズゴゴ、とシェイクを啜った。


「オクラホマミクサーって、なに?」

「……オクラホマは地名だぬ」

「ぬ?」


 問い直しに、ハカセは顔を前に傾け顎先をテーブルでぐにょらせた。頷いたのだ。


「ミクサーは」

「ミクサーは」

 

 ハルキチの鸚鵡オウムがえしに、イーちゃんとカイタムも声を揃えた。

 ハカセはすぅっと目を細めた。


「ミクサークルに違いない」

「……ミクサークル……!?」

「うむ。ミクサークル、略してミクサーだぬ」

「ぬ」


 いったい、どんなサークルなのか。JCQの頭脳、ハカセを除く面々の脳内に、銀河が広がる。ビッグバン。

 はっ、とイーちゃんが口を広げた。


「やったんさーは、やったんサークル……!?」


 密になろうの発起人カイタムが、鋭い視線を丸ごと!!カニバーガーに向けた。


「ハカセ。爪いってみる?」

「よかろう」


 ハカセはパカっと口を開き、カイタムがカニの爪を突っ込んだ。

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