砂まんだら箱

λμ

※コンプライアンス

 女が震える声で尋ねた。


「なんで? どうしてなの? なんでそんなのに手を出すの?」


 男は買ったばかりのペットボトルの封に指をかけて答える。


「……お前のような女には分かるまい(※1)」


 パキン、と固いプラスチックの繋がりを断ち切り、直に口をつけ、喉を鳴らした。ゴッ、ゴッ、ゴッ、と一息で半分ほども飲むと、顔をしかめて腹の底から迫り上がってくるゲップに耐えた。


「俺のような男はな、いい歳してライフガードを美味しく飲めちまうんだ(※2)」


 ペットボトルに描かれた迷彩柄の薄気味悪いウサギのキャラクターが、大きな目玉をひん剥いて女を睨んでいた。


 

 ※1……話のわかる女もいます。

 ※2……飲めない男もいます。

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