アイドルデビューは異世界で!! ~【異世界活性】村おこし。神に貢がせ【投げ銭】無双? 世界に笑顔を届けます!!~

川乃こはく@【新ジャンル】開拓者

プロローグ 在りし日の誓い

『人を笑顔にさせる存在でありたい』


 それが私――伊吹いぶき絵恋えれんが目指すアイドルとしての存在理由だった。


 要領がいい方でもなければ、特別かわいいわけでない。

 そんな私が大層な夢を追いかけることになったのには理由がある。

 本人はもう忘れてしまったかもしれない、遠い遠い約束。


『ねぇりんちゃんはしょうらい何になりたいの?』

『あたし? あたしね、えれんちゃんといっしょにアイドルになるんだ!』


 思春期の少女にありがちな些細な『憧れ』。

 それこそ女の子なら誰もが一度は夢見る願望じみた理想像だ。


 アイドル――。


 そんな人々の見世物になるような、自由もへったくれもない茨の道を好んで進ませたがる親などいない。


 でも当時の私は幼すぎたのだ。


『みんなー、元気に笑顔きめてるー?』


 地元の小さなライブハウスのなか。多くの歓声と熱気を一身に受け、堂々とそれでいてハツラツに動く親友の姿に私は激しく胸を打たれていた。


 あんなに大人しく、引っ込み思案だった親友が舞台の上で一人ぼっちで踊っている。

 辛くて苦しくて、でも楽しそうに笑顔で。

 それだけで、私はその『夢』に手を伸ばさずにはいられなかった。


 いつか一緒にステージに立とうと。

 一緒に世界を笑顔にしようと、子供じみた約束を掲げ――


 人に夢や希望を与える存在になれなくても、私の生き方で誰かを笑顔にすることくらいはできるかもしれないから。

 ちっぽけな私でも誰かの心に寄り添えるくらいのことはできるかもしれない。

 だから――


『ねぇ、りんちゃん。わたし、絶対にアイドルになるから!!』


 白く無機質な部屋。

 電子音が鳴り響く世界の中で、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を無理やり歪め、私は冷たくなった親友の手のひらを握りしめ、幼い頃のへたくそな約束を叫ぶように口にするのであった。

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