第5話 始まり - 5 -

 本格的に影として修行が始まったのも学校に入ってからだった。村の大人たちと軍に従事し、前線の諜報活動を行なったこともあった。友人にも村の大人にも、私を特別だと意識させることで、私自身にも認識させるつもりだったのだろうか。


 子供だった私は純粋にその”特別”という言葉に誇りを感じていた。


 だから、拷問のような修行にも耐えることができた。誰かのために打たれ、誰かのために耐える、それが”特別”ということだと教えられた。私にしかできないことは、私を無くすことと等しかった。


 影は、影だけで存在することを許されない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る