欠けた心のピースも、埋めてくれる人がいる

  • ★★★ Excellent!!!

 高木彬光の事を知らずに読みました。読む上で覚悟をしておいた方がいい箇所があるため、その注意を兼ねて少しネタバレ感のあるレビューになっておりますので、以下を読む方はご注意ください。



 日本の三大なんたら、の中で一番、知られてない人のような気もするけど、作中でも”知らない”人がたくさん出て来るので、作中で知って行けばいい、という感じでしょうか。

 最初に見えるのは「私」の周囲のひび割れた硝子。母がいない事で空いた心の穴。穴が開いたというか、本来は母が埋め尽くすはずだったエリアが、母がいない事で埋まらず、そのまま高校生になってしまったという感じですね。
 「私」は「私」をも含めた周囲への「嫌い」という言葉で傷つき、傷つけて行く。五話で、彼女は荒ぶってしまい、周囲の硝子が粉々に砕け、その破片で読者である私も、作中の「私」も、とにかくなんだか傷ついてしまい。五話以降が読めなくなって、随分間を空けてしまいました。受けた傷が癒えたのか続きを読もう!とやっと思えるようになり、続きを拝読したのですが、硝子が砕けた事による風通しの良さが、六話からスタート。

 ひび割れた硝子が砕け散った事によって、消え去る壁。
 周囲の距離感が一気に縮まっていく。
 
 これは心の物語ですね。一人の女子高生の心のピースが埋まるまで。言葉に表現しにくい、不可思議に動く心。理屈では言い表せない事柄が、心理学の知識で整理されていく。
 自分の気持ちが表現できなくて、”嫌い”と叫び続けた「私」。
 素敵な良い人がたくさん出てきます。
 とにかく、五話までを乗り切って、最後まで読んで欲しい一作です。