18話 バッドタイミング
ーーーで、どうするんだ?もっかい聞いてみて、ツクモ様はなんで言ってたんだ?
《えっと…ツクモ様は指定の場所に来いって言ってたよ。》
「指定の場所とな…それはどこなんじゃ?」
《シャープストリートの1番にある雑貨屋だって!》
「…ふむ?あそこは今、廃墟のはずじゃがな…」
「ツクモも神ですからね。おそらくは閲覧権限をかけて、特定の者にしかわからないようにしてるのではないですか?」
ーーーなるほどな!よぉし、そうと分かれば、さっそく学園長に現地へ行ってきてもらおう!!
「任せろガッテンじゃい!!」
《ちょっ…ちょっと待って!》
ーーーん?リーナ、どうした?まだ何かあるのか?
《実は、ツクモ様からひとつ条件をつけられてるんだ…》
ーーー条件?一体どんな条件だ?
《タケシを連れてこいって…そしたら権限を与えるって言ってた!》
ーーー俺か?また何で…
「…彼の考えそうなことですね。おそらくは、物に人の魂が宿っている黒井さんの存在が珍しいのでしょう?」
ーーーげぇ…やだよ俺。実験とか研究対象にされちゃうんじゃないよね…
《…大丈夫じゃないかな?話がしたいだけって言ってたよ。あとね、来る人も指定されたんだ!》
「いろいろ注文が多い神様じゃのぉ…して、誰を希望されとるんじゃ?」
《えっと…ちょっと言いにくいんだけど…》
「いいから早く言いなさい。彼は、誰に来いと言っているのです?」
《…いや、その逆で…『口うるさい女神は来んな』だってさ…》
「なぁっ!!?ツクモの奴め…失礼極まりない…ここは私の世界ですよ!!私が行かず誰がいくというのです!!そんな条件は飲めないと、彼に伝えなさい!!」
《うっ…うん!…………。え?は…はい。わかりました…》
「ツクモはなんて言ってるのです!?」
《『そんなら知らん。勝手にしろ』って…》
「ぬぐぐぐぐ…ツクモめ!私の世界で勝手な事は許しません!!私も絶対に行くと伝えなさい!」
ーーーおいおい…女神様って。
「黒井さんは黙っててください!リーナ!さぁ、はやく!!」
《はっ…はい!!…………………。え?!それは…あっ!はい…伝え…ます。》
「大丈夫かの?リーナちゃんや…」
《…うん。ツクモ様は『世界通行手形は主人様から正式に許可をもらった物だ。とやかく言われる筋合いもないし、お前も発行の承諾をしたじゃないか。だいたい、人の魂を物に転生させるとか、あり得なくね?そいつが可哀想ったらありゃしない。世界管理の女神も地に落ちたなぁ。』だって…》
「グギギギギギ…あ〜の〜や〜ろぉ〜!!リーナ!今からそっちへ行くから首を洗って待っていろ、絶対逃げるな!と伝えなさい!!!!」
ーーーだぁ!!!女神様!!!もう終わり!!!!!そんなことしてる場合じゃないでしょ?!そもそも、何度も何度も俺の魔力を使わないでくれる?!少し疲れてきたじゃないか!!俺は電話機でも通信機でもないんだから!!!
「ハッ…!すみません…私としたことが、奴の口車に乗せられてしまい…ハァ〜ッ、わかりました。ツクモと会うのは、あなた方にお願いします。終わった後に、必ず報告してください。」
ーーーわかればいいんです。わかれば。
「…お主も大変じゃのぉ。しかし、わしはお主の魔力の量に驚愕しとるんじゃが…今、三回はツクモ様と通信したじゃろ?それを…少し疲れただけとは…」
《お爺ちゃん、ごめん。それは正確じゃないかも…ツクモ様との回線はずっと開いたままにしてたから…》
「…へ?」
《1分に五十発分の魔力ってとこかなぁ。だから、合計でだいたい…五百発くらい…》
ドサッ
《え?お爺ちゃん!?泡吹いて…?白目むいてるよ!?》
ーーー学園長先生?!だっ…誰か!人工呼吸!!!
「はぁ…あなた方は何をしてるんですか…"レイズ"」
「ぬぬぬ〜…ほえ?わしゃ、今なにを…?」
《お爺ちゃん!!大丈夫?!急に倒れちゃったんだもん…死んじゃったかと思ったよぉ〜》
ーーーどうしたんだよ!急に!持病持ちなのか?心筋梗塞とか?心不全とか?!
「…いや、だってファイアインフェルノ五百発分の魔力を常時解放って…お主もう…魔王より強いぞ…ちと、ショックを受けてしまった…」
ーーー俺がか…?魔王って…そんなファンタジーチックな存在がいるの?
「おるよ、おるおる。魔王と竜王、この二人がこの世界の二代厄災と呼ばれとる。それを優に超える魔力量とは…お主本当に一体…」
「ライブラリ。その話はまた後でにしましょうか。今はツクモのところへ行くことが先決ですよ。」
ーーー女神様はそれ、偉そうに言えないって。
「ヴッ…わかってます!とにかく、皆さんにお願いするしかないのですから、よろしく頼みますよ!」
◆
「そろそろ、この辺りじゃ。」
《ツクモ様にお会いするのは初めてだからなぁ〜ちょっと緊張するよぉ。》
ーーー何だリーナ。契約する時に会ったりしないのか?
《契約と言っても、離れたところから命を吹き込まれるだけだからね。連絡したのも今回が初めてだし…いろんな世界にいろんな付喪神がいるから、ツクモ様も全部と交信は、できないんじゃないかな?》
ーーーなるほどなぁ。
「お二人さん、ついたぞい。ここじゃが…」
《うわぁ…本当に廃墟だ。》
ーーー本当にここなのか?どうやってツクモ様と会えるんだろ…リーナ。
《ツクモ様は入ればわかるって言ってたよ。》
「ならば、いざ…」
ギィィィィッ…パタン
ーーー正面から入ったものの、中はボロボロの廃墟だな…やっぱり間違えたかな?
『…ようこそ、よろず堂へ』
「なっ?なんじゃ!?壁が…いや、内装が輝き出したぞい?!まぶっ…し…クッ…」
・
・
《すごい!廃墟が一瞬で綺麗なお店になった!!》
ーーーうひゃー!すげぇな、今の!!もうなんか…ファンタジーだ!!!学園長!目を開けて大丈夫だぞ!!
「…ムッ…ムゥ。こっ…これはすごい!!我が隠蔽魔法でも、ここまで綺麗にはいかんぞ!!」
『ハハハ…神の力を人間と比較はできないだろ?』
三名は、どこからともなく聞こえてくる声にあたりを見回すと、カウンターに座る一人の男性を見つけた。ボサボサな髪は少し茶色が混じっていて、牛乳瓶の底のような丸メガネが特徴的である。
『やぁ!改めてようこそ、よろず堂へ。僕が"よろずの神"であるツクモだよぉ〜』
ーーーなっ…なんか想像と少し違ったな。もっと旅人っぽい感じを想像してたよ。
『おお!君が人間の魂を持つ黒板消しかい?!すごいね!見事に魂が適応してる!』
ーーーはっ…初めまして。そんなに身を乗り出さなくても…実験とかしちゃう系の人ですか?
『ハッハッハッハッ!大丈夫だよ、大丈夫!変なことなんてしないからさ。僕は珍しいものが好きなんだ!人間の魂が物に定着するとか…聞いたことないからね。君に会いたくって仕方なかったんだ!!だからこの世界にも少し長居してて、会うチャンスを探してたのさ!リーナがいてくれて助かったよ!こんなに早く会うことができたんだから!』
《…ツクモ様にそう言っていただけると光栄だよ!》
「しかし、見事に目にしたことのない魔具が置いてあるのですなぁ。わし、感嘆で泣きそうじゃ…」
『全部、神具だけどね。よかったら、後で一つあげるよ。ここにたどり着いた記念にね。』
「まっ!誠ですか!?また、倒れそうじゃ…」
ーーーちょっと!学園長先生!倒れるのはよしてくださいよ!!女神様は今いないんだから!はぁ…とりあえずツクモ様、さっそくなんですけど、このカメラについて教えてくれませんか?
『OK!だけどさ、先にひとつ、君たちに伝えておいた方がいい重要な事があるんだけど…聞くかい?』
ーーーえ?何ですか?重要な事?
『うん!今まさに、この街の上を飛び抜けていこうとしている、邪悪な存在についてだね!』
ーーーじゃっ…邪悪な存在って。やめてくださいよ。そんな物騒な単語を…
『冗談じゃなくてさ…あっ!ほら、今通ったよ!』
ーーーえっ?うそ…そんな緊張感のかけらもない言い方…ねぇ、学園長先生、勘弁してほし…ん?学園長先生?どうしたんですか?顔が真っ青じゃないですか…
「なんじゃ…この魔力は…あり得ん。これは…もしや!!」
ーーーだつ…大丈夫ですか、学園長先生?汗がひどいし、震えてますよ…
『ライブラリ君の予想は合ってると思うよ。おそらく、誰かが竜器である"竜王の心臓"を手に入れたみたいだね。』
「それが本当なら一大事ですじゃ!!!まさか…あれを手にして力を取り入れる者がおるとは!!タケシよ!すまんが、わしは一度学園に戻る!!国が…いや、世界が滅ぶかもしれん!!!」
学園長はそういうと、雑貨屋を飛び出していったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます