第1話・Bパート

[同刻・L-11 家屋1F・居間]


[遠くの爆発の振動で微かに揺れる室内の壁]


 箱の片側を持つ女兵士が手元の腕時計の表示に気付く。


プレイヤー2「敵部隊の狙撃が止まりました。現在航空隊が追撃中」


プレイヤー1「今の内だ」


[無線のボタンを押す音]


 箱のもう片方を持つ分隊長の男が肩の無線に顔を寄せる。


プレイヤー1「チーム、ニューイヤー。敵の狙撃が停止。ローバーとエンジニアはスナイパーと合流し待機せよ」


無線1「待機ですか?」


 女兵士が分隊長の男を見る。


プレイヤー1「、、、あぁそうだ。砲弾はこちらだけで積み込む」


無線1・2「了解」


 女兵士が分隊長の男を見る。


プレイヤー2「・・・あの」


プレイヤー1「なんだ」


 二人は箱を持ったまま家屋外に出る。


プレイヤー2「・・・死体のタグ、見ました」


プレイヤー1「・・・」


プレイヤー2「砲弾を処理するのはどうでしょうか?」


プレイヤー1「ダメだ、時間が足りない」


プレイヤー2「・・・そうですか」


プレイヤー1「・・・すまない、巻き添えだ」


[箱を荷台に置く音]


プレイヤー2「・・・私はいいですよ」


[風の音]


プレイヤー2「私は いいです」



[ゲーム内某所 CCA共同施設 イベント管理室]


 大きな空間に制服を着た人間達が行き交う。


[電話の音]


赤の制服の男「えぇ、そうです。配信は問題ありません。広報課長にそうお伝えください」


白の制服の女「想定外の損失は今のところありません。第2集積場の解放は中止してください」


黒の制服の男「使用された弾丸は規制弾薬である可能性があります。緊急処置を行うので特飛場にいる先生達の召集をお願いします」


[電話を切る音]


 ガラス張りの部屋に3人が机を囲んで立っている。


赤の制服の男「配信は問題ない。そっちはどうだ」


白の制服の女「家屋がいくつか吹き飛んでいるけど想定の内よ。敵からのアクセス対応はもう大丈夫なの?」


黒の制服の男「あぁ、現地で解決したと連絡が来た」


白の制服の女「そうなの?、、、防群は不参加でしょ?」


赤の制服の男「まさか保群じゃないだろうな」


黒の制服の男「不明だ。だが対戦ヘリ使用の許可が下りた」


白の制服の女「え?撃つの?」


黒の制服の男「敵が領海に入ったらだ。防群には念を押しておく」


赤の制服の男「なら中継用の無人機の軌道を修正してくれ。こっちからだと操作できない」


黒の制服の男「分かった、伝えておく。他には?」


[呼び出し音]


黒の制服の男が携帯を取る。


黒の制服の男「はい、はい、はい」


赤の制服の男「・・・」


白の制服の女「・・・」


 二人が黒の制服の男を見つめる。


黒の制服の男「分かりました。今こちらで処置の手配をしています。ありがとうございます。はい、失礼します」


赤の制服の男「どこからだ?」


黒の制服の男「防群の技研からだ。敵が使用した弾の中にSD弾があった」


白の制服の女「マズいわね。こっちの総合病院に空きがあるから手配するわ」


黒の制服の男「あぁ、頼む。特飛場で処置した後、本土に運ぶ。次官の許可は俺から取る」


赤の制服の男「いや、情報部長に俺から話す。お前は特飛隊と対地隊についてやれ」


黒の制服の男「分かった。助かるよ」


[ブザー音]


 室内に低いブザーの音が鳴り、3人が天井を見上げる。


赤の制服の男「保群の奴らだ。一旦出よう」


[3人の足音]


 3人が部屋から大きな空間に出る。

 紺と白の服を着て防弾衣と防弾帽を付けた隊員達が部屋の入り口前で待機している。


隊員1「ご協力、感謝します」


赤の制服の男「、、、」


 隊員達が3人に近づく。


黒の制服の男「部屋はどこだ。私が連れていく」


隊員2「いえ、安全な場所まで我々がお連れします」


 隊員の防弾衣の背中には「CCAGC」と書かれている。


白の制服の女「あなた達の上司も、それくらい協力に積極的だと良いんだけど」


隊員3「すみません、私からはなんとも」


 隊員達と3人を部屋前廊下の蛍光灯が照らす。

 大きい空間からは先程までの人だかりが消えている。


隊員1「時間です、行きましょう」


[複数の足音]


[ドアが閉まる音]



[同施設・待機場2F・電設制御室]


 室内は大きな一つの空間になっており、隅にエレベーターの扉が一つ設置されている。


[キーボードのタイピング音]


 部屋の白い壁一面にスクリーンが広げられ、中央で3人の人間が手元のモニターと端末を操作している。

 スクリーンには先程の施設と山の空撮映像が映し出されている。


[電話の呼び出し音]


 スクリーン向かって右端に座り、紺の制服を着た男が受話器を取る。


制服の男「こちら本部。了解、第8隔離室へ」


[受話器を戻す音]


制服の男「警備から報告。保安作業、完了しました」


 スクリーン向かって左端に座り、紺の制服を着た女が手元の端末を操作する。


制服の女1「L-9にて動きあり。CPが2A1と接敵。2A1を無力化し、L-10へ移動中。2A2と2A3との距離、約500m」


 二人の真ん中に座る女は、同じように紺の制服を着てメガネをかけている。


制服の女2「了解、両陣営に交戦許可通達」


[端末の通知音]


 制服の男の端末に通知が表示される。

 男が端末の表示を確認する。


制服の男「レーダーに反応。E領域特飛場方面より防衛群航空機が接近中。距離4600m」


制服の女2「了解、CPに転送」


[端末の操作音]


 スクリーンにレーダーの図が表示される。


制服の女2「防群の連中、よほど警戒しているようね」


制服の女1「SD弾の検出があったからでしょうか?」


[電話の呼び出し音]


制服の男「こちら本部。はい、了解です」


[受話器を戻す音]


制服の男「対策部より周辺空域を閉鎖しろとの命令です」


制服の女2「了解。K-10からL-12に展開中の無人機の軌道を修正。中央飛行場へ。」


制服の男「了解」


[端末を操作する音]


 スクリーンの電光掲示が3人を照らす。


制服の女1「谷岡さん、間に合うんでしょうか?」


制服の女2「さぁ、どうだか」


 メガネの女がスクリーンを見つめる。


制服の女2「頼んだわよ」

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