第4話 絶望の先の願い

全身に纏う魔力量が上がったな。

あいつ程ではないけど、それでも強いのはわかる。

武器を持っていないのは分が悪い。


「報告では回復術師クロムに物理的戦闘能力はないと聞いていたのだけど」

「回復術師クロムは死んだよ」


ダッシュで一気に懐まで迫る。

そのまま腹目掛けて右ストレートを放つもギリギリの所で剣の腹で受け止められた。


「ッ!……重い!」


そのまま力を抜いて回し蹴りで吹き飛ばした。

魔力で身体能力を強化されているからか、上半身は千切れなかった。


大規模魔法まであと1分くらいか。


「ねぇ隊長さん、誰の指図で村をわざわざ焼いたの?」

「お前に話す事はない」

「そう」


一瞬で背後を取るも読まれていたらしく、振り向きざまに横一閃。

それをしゃがんで避けながら脚を回して転ばせてそのまま組み伏せた。


「依頼は勇者くんかな?周りの取り巻きの貴族の圧力もあったりした?」

「だからお前に」


メリルの細い腕を折った。


「……ぅぅ」

「腕を折られて悲鳴を挙げないのは褒めるよ」

「以前のクロム殿ならこんな非道」


もう片方の腕も。


「っアァッ」

「話を逸らさないでよ。君に無駄話をする権利はないよ」


両腕を折った為、腕がぷらんぷらんしてる。


「ちなみに僕は一応回復術師だったし、腕、治した方が良いかな?また折れるし」


そう言うとメリルの眼から光が僅かに消えた。

拷問すれば確実に堕ちるな。


しかしメリルの目的は死を覚悟した時間稼ぎ。

あの規模の魔法なら僕は死なないだろうけど、拷問で使うメリルに死なれてはまだ困る。


「とりあえずっ……と」


動かれては困るので、両足の骨も折って身動きを取れなくした。

脚の骨ですら、まるで枝を折る感覚とほとんど変わらないのが怖い。


「ッあああああぁぁぁぁ!」


とりあえずで女の四肢の骨を折る僕ってどうだろう。

まあいいか。


「そこで観ててよ、隊長さん」

「ま、まて……」


「『ハイヒーリング』」


これで負荷に耐えられないと若干困るな。

まあ、実験だし今回はいいかな。


「『開放せよ、リミッター解除』」


ヴィナトから授かった禁術、リミッター解除。

話では肉体に掛かる負荷を無意識下の制御を外すらしい。


当然力などが増すが、身体に掛かる負担が桁違いだとか。


「魔力が内から溢れてくるな」


魔法を展開している兵士たちに向かってダッシュ。

蹴りあげられた地面が抉り飛ばされていく。


それだけで足腰に若干の悲鳴が聞こえた。


「くっ……」


ハイヒーリングとハーフ吸血鬼の回復力で直ぐに治るが、痛いものは痛いな。


武器を構えた兵士に蹴りをかますと身体が破裂した。

剣を拾って投げて射線上の兵士達を串刺しにした。


魔法を展開していた兵士を何名かの腕を千切ると、そのまま魔力暴走を起こして爆発が連鎖していった。


悲鳴が連呼し、血飛沫が辺りを濡らした。


立っている兵士は1人もいない。

何名かはまだ魔力を感知したので心臓を踏み潰して殺した。

全身の穴から血が吹き出して気持ち悪かった。


「隊長さん、残りは貴女だけだよ。どう?仲間が無惨に死んでいく光景は?」

「……悪魔め」

「さあ、続きといこうか。質問にちゃんと答えたら痛い事はしないよ」

「答えるくらいなら死んでやる」

「簡単に死ねると思ってるの?舌を噛んだくらいなら直ぐに治せるけど」


今のこいつには生きる権利も死ぬ権利もない。

僕の気ひとつで簡単に決まる。


「じゃあ拷問方法を選んでね。ひたすら手足を折られ続けるか、ゴブリンに陵辱されるか。どっちがいい?」

「お前を殺して私も死ぬ」

「追加しよう。君の穴という穴にムカデを入れる拷問も」


精神的に追い詰めていくと、メリルは空を仰いで涙を流した。


簡単に死ぬ事もできず、女としての尊厳は疎かヒトとしての尊厳をも奪われる絶望。

仲間は目の前で惨殺され、身動きひとつ出来ない体。


そんな時、ヒトは何を願うのだろうか。



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