闇会社の神編

第24話



俺の名はハタラスギタクヤ。神様見習いである。

なにを言っているかわからないと思うが、心配はない。俺もよくわかっていない。

簡単にかいつまんで言葉にすると、俺は社畜の神になるための試練の一部として、ふたたび生を受けこの世界ではセルト・デュラントという農家の長男として生きている。

ようするに半神半人。まだ神ではないと言うことだ。

なる気もないが……

働けば働くほど神の力が成長していくようなので、できればいつまでも休暇気分でいたいものである。

しかしそういうわけにもいかなくなってきたかもしれない。


この前、知人が誘拐事件の被害にあい、その結果俺はある組織との戦闘に巻き込まれた。

やつらの名は神聖機関というらしい。問題は、そいつらの目的だ。

謎の犯罪組織である神聖機関は『神』なるものをこの地に召喚しようとしているらしい。

なんのためにそんなことをしたがるのかはわからないが、機関の構成員が集落を乗っ取り、モンスターを精製し、街を襲っていたところを実際にこの目で見ている。

神にもいろいろある。俺が社畜の神であるように、悪い神もいる。

イヤな予感がする。とにかく何を考えているかわからない危険な連中だ。

まだほかにも構成員が生き残っている可能性はある。のんびりと暮らしたいものだが、注意しなければな。


「ドロボウ?」


 授業の合間の教室で、俺は同級生の女の子であるミスキに聞く。


「うん……なんでもかなり被害が出てるみたいなんだけど、まだ犯人がつかまってないんだ」


「憲兵もギルドもうごいてるらしいよ。というか、実はあたしも盗まれちゃったんだよね」


 同じく同級生のカレンが、なぜかすこし顔を赤く染めながら言った。


「そうなんですか? 実は私も……」


 と、ミスキも言いながら恥ずかしそうに身をよじる。


「盗まれた……!? いったいなにを?」


 なにか神聖機関が関わっているかもしれないと思い、俺は真面目にきく。


「なにって……あれだよね?」


「アレ、ですよね」


 カレンとミスキの二人はあいかわらず恥ずかしそうに顔を桜色にして落ち着かない様子になる。なにか答えづらいのだろうか。

まあ泥棒に入られると言うことは年頃の女子からすると怖いことのはずだ。男の俺があまりずかずかと踏み込むべきタイミングではないのかもしれない。


「こうしちゃいられないな……調査にいってくる」


 立ち上がり、相棒の幼獣モスの入ったバッグを持ち上げる。

 そこにカレンが、


「えっ。ちょ、ちょっと! な、なんであんたがやる気出すのよ!? いつもぐーたらなクセに!」


 顔を真っ赤にして怒鳴り散らしてくる。隣のミスキもおどろいていた。


「ま、まさかそういう趣味が……?」


「なにを言ってる? 当たり前だろ」


 当然だ、というように俺は答えて見せる。なぜか二人はあわあわとうろたえていた。

 憲兵がつかまえられなかったということは手練れの可能性もある。つまりその背後に、神聖機関があるかもしれない。


「って授業は?」


 教室を出て行こうとする俺に顔の赤いカレンがきく。


「腹をくだしたとか、適当に言っておいてくれ」


 相手は神とやらを召喚しようとしている連中だ。時は一刻を争う。

 教室を飛び出したあと、カレンのあきれるような声が聞こえた。


「……ホント、さすがご隠居さまだわ……」


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