第15話 屋敷の女主人

『いらっしゃいませ。』

陶器の人形のような女性が口を開いた。不思議な声だった。


私と柄本は、彼女の挨拶に反応して初めて立ち上がることができた。

『突然お邪魔して申し訳ありません。』

二人で屋敷の女主人に頭を下げる。


しかし彼女は鷹揚に笑って許してくれた。

『構いませんよ。豊田さんの部下の方でしょう。こちらこそお待たせしてしまって申し訳なかったわ。』

『いえ、レディの支度に時間がかかるのは仕方のないことですから。』

柄本が婦人に向かって道化を披露する。

『あら、わたしレディと呼ばれる歳でもありませんのよ。もうおばさんですもの。』

ふふふと、口元を白い手で隠して彼女は微笑む。

『いいえ、十分にお美しいです。』

確かにそれはその通りだ。私の心は柄本に同調していた。


『まあ、立ち話もなんですから。どうぞ座ってくださいな。』

そう言って彼女は中央の安楽椅子に腰掛けた。

『リアン。お客様にお茶のおかわりを。』

控えていた少女に命じると、少女は一礼して退室した。

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