皆はボクをいじられキャラだと思っている。

ぴの

NOSCENE〖プロローグ〗


«能力者のいる世界»




──世界異能革命──



 それは、今から約300年ほど前に起こった大革命である。


 異能力者を公に示すこととなったその革命を起こしたのはたった5人の異能力者だった。

 強力な空間の能力を所持していた彼らの内の1人は革命を起こすと同時に、異能力者が生活するための異次元都市、【異能都市】を作り上げた。


 その後から異能力所持検査が実施され、次々と異能力者が見つかり、異能力者は増える一方だった。


 その10年後、後に【ヒューマン・マス インクリース─人類大量増加─】と呼ばれる事象が日本に起こる。

 それにより、人口が約2倍近くまで増加。

 異能力者も日本の約3割を占めることとなる。



 異能力者の特徴として、髪の色と目の色が非能力者とは大きく異なることが挙げられる。

 日本人でも赤や青は勿論、緑や紫色の髪や目を持つ者が多い。

 逆に黒色の髪や目を持つ異能力者は極端に減少した。


 そして未だに詳しいことは解明されていないが、異能力者には生まれつきオッドアイの者はいない。


 だが、後天的なオッドアイは別だ。

 これは解明されていて、一定以上の、常人の想像を絶するような過度なストレスを抱えた事のある者は高確率でオッドアイになるという研究結果が出ている。


 又、異能力者は一人あたり複数の種類や数の異能力を所持している。

 種類はともかく、数は少なくて3、4個、多くて5、6個で、今まで計測されている世界最多が8個。

 だが、数が少なければ少ないほど忌避される傾向があり、社会問題ともなっている。


 更に【異能都市】では異能力を所持しているが故に、凶悪な犯罪が数多く起こる。

 よってそれらを阻止する為の組織も出来上がった。



 警察直属部隊、《青霧─あおぎり─》。



 実力派エリートが集った少数精鋭部隊であり、彼らの手に掛かれば如何なる事件でも大抵は解決できる。



 そして、今や日本の約3割を占めている異能力者達は、【異能都市】での規則や制度を定めた。


 一つ、バトル制度。

 これは、異能力者同士の闘いの為の制度である。

 必ず一対一であること、両者の承諾の上であることでなければ認められず、それに反した場合には【異能都市】の空間内に組み込まれた異能力により感知され、当人にペナルティが課される。


 一つ、ランク分け。

 異能力者は各々の実力によってXからFランクに分類される事が制定されている。

 ランクは発現した異能の種類(強弱)で定められるものではなく、その異能をどのように有効活用出来るか、その異能の使い方でどれほど強くなれるかがランクの基準である。


 主な目安として、


 異能力をほとんど使用しない又は使用が不可能により、ほぼ一般人と変わらない程の強さの異能力者がFランク

 護身術を扱える程の強さがEランク

 本格的な実戦を少しこなせるくらいならDランク

 異能力者として一人前と呼ばれる程ならCランク

 十分に強いと認識されているのがBランク

 強さを極めていると言われる程の強さがAランク


となっており、ここまでは誰でも努力で辿り着ける範囲となっている。


 そして、ここから上は悲しいことに才能で左右される。

 AランクとSランクでは大きな差があり、優れた才能を持ち合わせていなければSランクより上には上がることはできない。


 Aランクを軽く凌駕する程の強さを持つSランク


 “人外”と呼ばれる程のSSランク


 さらにその人外の域をも超越するXランク。


 これらが一般に知られる全ランクである。




 ………………逆に言えば、一般には知られていないランク、否、“知らされていない”ランクもある。


 一般に公表されていない、Xランクよりも上に位置する


【Zランク】


というランクが。


 それはもはやどこから見ても最強の一言に尽きる。

 そしてそのランクを知り、敵対する者達は皆、同じ事を考える。




 奴は、化け物である、と。





 このランクに属しているは世界でただ一人。

 “ソレ”は、約6年前からその世界に存在を知らしめていた。


 奴はこう呼ばれる。



 曰く、天才と。


 曰く、化け物と。


 曰く、災厄と。
















 曰く、《青霧》ですら捕まえられない、



【最強の犯罪者】である、と。







 コードネーム『アビス』。


 世界でたった一人のZランクである。

 何故Zランクが世に秘匿されているのか。それは先述したように、『アビス』が“犯罪者”であるからだ。

 『アビス』は殺人、人身売買、臓器取引など、幅広い分野の犯罪を犯している。


 能力名は、不明。

 その他年齢、性別すらも、全てが謎の人物なのである。


 現状で判明している奴の特徴は、灰色のシャツに左右白黒のパーカー、黒のズボンに鬼のマスクである。

 鬼のマスクは鼻から下が隠れるようになっており、褐色ベースの肌と白ひげの下には不気味に口角を上げている口が催されている。


 そして何より、極めつけはその実力だ。


 《青霧》が如何なる手段を用いようが奴の捕縛は疎か足止めすらも出来ない。

 《青霧》の精鋭であるXランクが立ちはだかろうとも、5分もしない内に無力化される。


 そして何より、『アビス』は獲物を逃さない。

 ロックオンされた者はまず命はもうないのだ。


 ……被害者は刻々とその数を圧倒的にしていった。

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