第14話 珍客??

 イチゴとシリュウを拠点に残し周囲を探索する。

 一人なのであまり無茶は出来ないが、大草原エリアの拠点周辺ならばなんの問題も無い。

 本当は新たにできた召喚獣イチゴとの連携を高めたり、召喚獣ありきの戦闘をしてみたかった。

 だけど、イチゴが反抗的過ぎて戦闘に協力してくれない。

 一応エリアボスを倒したら協力してくれることになっているが、その日は来るのだろうか....

 今日の朝、師匠は【深淵エリア】がどうのと言っていたので、師匠は【大草原エリア】はとっくにクリアしたのだろう。

 地力が違うのでこればかりは仕方がない。


 日が暮れるまでのんびりと戦闘を続ける。

 相手は兎なのでそれほどの苦労は無い。

 低レベルのモンスターを相手にしてるのでレベルの上りも悪い...でも、今回はレベル上げでは無く、スキルのレベル上げだ。

 短剣の専用スキルの強化をすることで、様々な効果を得られるしなによりスキル【斬撃】のレベルを上げることで、射程範囲が増えていくのだ。

 今の所、身長と得物が短剣という事もあって攻撃射程があまりにも短い。

 それを補うスキルが【斬撃】なので強化して悪いことはない。


 半日戦ったというのに上がったレベルは4...割に合わない。

 主目的の【斬撃】も2しか上がっていない。

 はぁ...

 思わずため息がこぼれる。

 やはり強い敵と戦う方が経験値効率は良いし習得できるスキルも多い、だが、現状...丘を登るとあの兎が居るので、一人では太刀打ちができない。

 そもそも二桁の草原エリアの丘を登ると四桁がうようよいることがおかしいんだ!


 それほど遠くまで来ては無いので簡単に帰路に就く。

 すると丘付近に人影があった。

 桃色の髪に白銀の翼。

 今でも鮮明に覚えている。


「ゼルセラ様?」


 不思議に思いつつも近づいてみる。

 近付く過程で徐々に違和感が生まれる。

 桃色の神に白銀の翼は同じだが...手甲もないし、頭上の輪もきれいな白色だ。

 別人?

 威圧感も無く、ポツンと草原にたたずんで居る。


 ゆっくりと近付きあまり驚かせないように声を掛ける。


「あの~」

「わぁっ!!びっくりしました...まったく気配を感じませんでした...不覚です...」


 気配を消した訳でもないし、そもそも気配なんて消せない、わりと普通に足音もたてたし...むしろ気付かない方が不自然だ。

 話しかけてみて想像が確信に変わる。やはりこの人はゼルセラ様ではない。


「どうかされたんですか?」

「はい...私フリューゲルの中でも落ちこぼれで...戦闘経験も無く...よくみんなの足を引っ張ってしまうんです...」

「そんな風には見えないですけど...立派な羽もついてるしすごく強そうですよ?」

「この羽は飾りです...私は空も飛べません...」


 え?羽ついてるのに?

 落ち込む少女にそう思うのは酷だろうか...悪い人ではなさそうなので拠点に連れていく。


「お名前をうかがってもよろしいですか?」

「私はミーシャ!ミーシャ・ストロニアて言います!!」

「ミーシャ...あっ!ご主人様のおっしゃっていた方ですね」


 ご主人様....この言葉から察するにゼルセラ様の部下でグレース様の親衛隊の内の一人なのだろう。


「かわいい~」


 話ながら歩いていると、天使の少女は兎に目を惹かれたようで近付いていく。

 徐に抱き上げ兎の頭を撫でる。

 よく見ると兎は少女の指をかじっている。


「噛んでるけど大丈夫?!」

「えっ?あっ本当だ...もうだめでしょ!


 コツン。

 可愛らしい効果音と共に兎が弾ける。


 え?


「わぁ!?弾けちゃいましたよ?!」


 驚いた素振りでこちらを振り向く少女。

 驚いてるのはこっちだ。

 戦闘経験が無くてみんなの足を引っ張るとはなんだったのか...


「あの~ステータス見せてもらってもいいですか?」

「ステータスですか?すいません...みんなはその鑑定の上位スキルを持ってるんですが...私..鑑定スキルすら持ってなくて...すいません...」


 あれ?ステータスの開示は私でも出来る...それをこのワンパン少女ができないとは思えない、だが、少女の表情からはとても嘘をついているようには見えない。


「たしか、この世界に来ただけで、いくつかスキルが付与されてステータスは習得できると思いますよ?」

「そうなんですか?博識なんですね...」


 私が博識なのではなく、少女が無知なだけでは?

 心で思ってしまうが、私もゼルセラ様の受け売りなのであまり知識をひけらかすのは良くない。でも、知りたいものは知りたいので、ステータスの開示方法を教える。


状態ステータスって言ってください」

「わかりました、やってみます!状態ステータス


 Lv:1

 名前:「リーエル」

 種族:【フリューゲル】

 職業:【   】

 称号:【死ヲ齎ス天使】

 HP:99999999

 MP:99999999

 ATK:99999999

 DEF:99999999

 INT:99999999

 RES:99999999

 SPD:99999999


 スキル:【頭突きLv2】【噛み付きLv1】【小動物威嚇Lv1】

 特殊スキル:【神族特攻LvMAX】

 究極スキル:【能力吸収Lv1】【慈愛の天使】【破滅の意志Lv0】


 え?


 え?


 どゆこと?


 一、十、百、千、万、十万、百万...一千万....

 九千九百九十九万九千九百九十九.....

 数字がダブって見える....


 師匠の三倍?それなのに戦闘未経験?マジ?いや...でもレベル1...

 それに...さっきの兎のスキルの【小動物威嚇】も既に習得しているし...さては化け物では?

 しかも...【神族特攻】って...

 詳しい効果はわからないけど字面から察するに神様に対して与えられるダメージが上昇するってことだよね?コワスギカ?


 そっと距離を取ろうと思ってしまったのは少女には秘密だ。


「リーエルさんですね!流石はグレース様の従者様って感じです!」

「いえ....みんなに比べたら私なんて雑魚です...なんの役にも立ちません...」

「御謙遜を...」


 嫌味か...?

 このステータスで役に立たなかったら...私や師匠ですらゴミ以下ってことになる...なので認めたくはない...。

 でも、今の私からしたら役に立つどころの話ではない、リーエルさんと友達になってイチゴをぎゃふんと言わせて召喚獣のイチゴを召喚獣らしく従わせる!


 方針が決まり上手くいく気しかしなくて思わず顔がにやけてしまう。

 待ってなさい...イチゴ...いつまでも私を舐めて居られると思ったら大間違いよ...フフ....フフッ...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る