第18話前夜祭打ち上げ①

「みんな戻ってるかー」

部室に帰ってくると杏果さんの姿があった。

「まだ私だけみたいだぞ」

「なんだそうだったか。ところで杏果、依頼の方は…」

「終わらしてるに決まってるだろ」

親指を立てて力強く杏果さんは言った。

「流石は杏果だな」

「まぁな〜。焼肉だしな〜」

ニヤニヤしながら言ってるけどこの焼肉、確実に裏があるんだよなぁ…

事情を知ってるせいか何故か素直に喜ばない。

「美月ちゃんはじきに戻ってくるだろうから後は優斗だな」

「優斗先輩は、食堂の人の依頼でしたっけ?」

「そうだぞー、優斗は料理が得意だからな。去年も呼ばれてたんだ」

「え、そうなんですか?」

「呼ばれてたぞ。何気にあいつの料理は評価が高いんだ。俺でもあいつのケーキは美味しく食べれるからな」

「部長って甘いのダメなんですか?」

「こいつは甘いの苦手なんだ。その分脂っこいのよく食べるけどな」

「余計な事言うな。とにかく料理とか家事全般の依頼はあいつに任せてるんだよ」

「そんな人をどうやってこの部に引き込んだんですか…」

「そりゃ秘密だ」

フッと笑われて誤魔化された。

冬馬の中でまた一つ万屋部の謎が増えた。

「ただいま。戻ってきたよ」

「戻りました〜」

「あ、戻ってきた」

「ちょうどそこで美月ちゃんと会ってね。一緒に帰ってきたんだ」

「よし、じゃあみんな戻ってきたわけだし行くか!」

「よっしゃ!焼肉だ!早く行こうぜ!」

「まぁ落ち着けお前は場所わからんだろ」

興奮している杏果さんを部長が嗜めながら焼肉店へと出発した。

「マジでか琢磨」

「琢磨くん本当にいいのかい?」

「ここでいいんですか?」

「だ、大丈夫なんでしょうか?」

「問題ない」

部長に連れられたのはちょっといい…いやそこそこいい焼肉店だった。

食べ放題だけどここって一人当たり3000円くらいするんじゃなかったっけ…

「さ、入るぞ〜」

もっと安い格安焼肉を想定してたからちょっと申し訳なく思うけどそれ以上にこれが賄賂であると言う事実を知ってるから一体何をさせられるのか怖くて仕方ない…

「5人で予約の尾上だ」

「はい、お待ちしておりました。席にご案内致します」

予約してくれていたおかげですぐに席につくことができた。用意周到だ…

「さて、じゃんじゃん頼んでくれよ。せっかく食べ放題で予約したんだ、何も考えず満腹になるまで食ってくれよ」

「まさかこんなとこ連れて来てくれるとは思わなかったぜ。やるな琢磨。遠慮なく食べるぞ!」

「ありがとう琢磨くん」

「ありがとうございます部長さん」

「いぃいぃ気にするな!」

各々がお肉をいろいろ頼みそれぞれが焼いていく。

「シロくんどうかしたんですか?」

「え、あー…うぅんなんでもないよ」

「?」

とりあえず今はこの焼肉を楽しもう…

「さてみんな食べながら聞いてくれ」

残り制限時間30分ごろに部長が声を上げた。

「ん〜なんだー?」

ホルモンをもにもにしながら杏果さんが聞く。

この人どれだけ食べるんだ…

「とりあえず今日はお疲れ様だ。おかげで今年も忙しい日を乗り越えることができた」

「そうだね。今回は人数も多かったしなんとかなったよ」

「私も頑張ったからなー」

「杏ちゃん先輩すごかったですもんね。一人であんなに依頼をこなせるなんて」

「お手柄だね」

「そーだろーそーだろー」

嬉しさからかサラミとキムチでご飯をかきこむ杏果さん。どこに入っていくのか…

「さて、話は変わるが今回の文化祭なんだが万屋部でも出し物をしようと思ってる」

「なにするんだ?」

「初耳だね」

「優斗先輩も知らないんですか?」

「なにするんでしょうか…?」

「メイド喫茶だ」

全員の箸が止まった。

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