6、お米主食化計画発動!






 ノベライズ版ではお兄様は馬車の外で凍死していたと書かれていた。

 御者は御者台に座ったままで凍死していた。


 ということはつまり、外にいた御者の方が先に死んでしまい、動けなくなったお兄様は心細くて雪がやむまで待てずに外に出て、凍死したということだろう。


 でも、今回は早々に御者を馬車の中に避難させたので、御者は凍死せずに済んだ。

 お兄様もぶつぶつ言っていたけれど、寒さには勝てなかったのか私の差し出したセーターを着て縮こまっていた。


 はあ、寒い。カイロが欲しい。


 眠らないように飴を舐めたりあれこれ話したりして時間を潰す。外の雪はどんどん酷くなっていき、馬車は雪に埋まっていく。

 夜になれば真っ暗になり、心細くなる。なるほど、お兄様が堪えきれずに外に出るはずだ。真っ暗な馬車の中で風の吹き付ける音だけを聞き続けると頭がおかしくなりそうだ。


 長い長い時間を過ごし、明るくなってからだいぶ経って私達は発見された。


 体力を消耗して凍えていたけれど、お兄様も御者もしっかり意識があった。


 屋敷に戻った私はアンナに泣かれて心配されて手厚く看護されてしまった。熱が出て三日ほど寝込む羽目になったけれど、凍死は阻止できたので私は満足だった。


「本当に心配しましたよ。お嬢様!」


 熱が下がったけれどアンナがベッドから出るのを許してくれないので、上半身だけ起こして編み物をして過ごした。


「お兄様はどうしてる?」

「昨日までは熱がおありでしたけど、今朝は朝食の席に着いておられましたよ」


 ふむ。御者も熱は出したけれどちゃんと元気になったらしい。良かった良かった。


 ところで、寝込んでいる時に痛感したんだけど、病気の時はやっぱりおかゆが食べたい。お米欲しい!


「ねえ、アンナ。お米って知ってる?」

「おこめ……ですか?」


 アンナは怪訝な表情を浮かべる。


「こめ、或いはライス。白くて、炊いたり煮たりして食べるやつ……」

「えっと……もしかして、家畜の餌のライスのことですか?」


 か、家畜の餌?


「南と東の方ではライスを食べる習慣があるって聞いたこともありますけれど……」


 北では家畜の餌かぁ。

 でも、米が存在するなら是非とも主食にしたい。元日本人ですもの。


「アンナ。お米って手に入れられる?」

「え、ええ。それほど高価なものではありませんから」


 よっしゃ。たった今からお米主食化計画発動だ!




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