第8話:激怒・アラステア視点

「アラステア王弟殿下、真摯な申し込みありがとうございます。

 これほどのプロポーズをしていただけた事、女冥利でございます。

 ですが、申し訳ないのですが、私は男性が信用できないのです。

 エヴァンズ公爵家の長女という立場にあってすら、婚約解消を求められました。

 その時の辛い気持ちが消えないのです。

 アラステア王弟殿下のような地位も名誉もある立派な方が、永遠に私を愛し続けててくださるとはとても信じられないのです。

 ですから、殿下が嫌いとかではなく、私の身勝手でお断りさせていただきます。

 私は領地の修道院で祈りの日々を送らせていただきます。

 遠く離れた修道院からではありますが、殿下のご多幸をお祈り申し上げます」


 アマーリエ嬢はそう言うと逃げ出すように会場から出て行ってしまった。

 百戦錬磨の俺が、竜さえ斃してきた俺が、一歩も動けなかった。

 それどころか「待ってくれ」のひと言も言えなかった。

 ただ茫然とアマーリエ嬢の後姿を見送るしかできなかった。

 会場中が水を打ったような静寂に包まれていたが、そんな事にも気がつかなった。


 しばらくして、心の中に沸々と怒りが沸き起こってきた。

 頭に血がのぼって会場中の人間を殺してしまいたくなった。

 改めて、アマーリエ嬢をあそこまで追い詰めた人間をぶち殺したくなった。

 ロバートだけでなくここにいる全貴族が陰口や悪口でアマーリエ嬢を追い詰めた。


 だが、だからといって、全員を殺すわけにはいかない。

 ただし、何の復讐もしないと俺の怒りの持って行きようがない。

 それにこの連中は自分がやった最低の行動すら自覚しない。

 だから魔眼に殺気を込めて睨みつけてやった。

 心臓が止まらない程度に、だが失禁脱糞して一生恥をかく程度に。


 しかしこの程度では俺の煮えたぎる怒りは収まらない。

 元凶であるロバートを叩き潰さないと怒りのあまり王城を破壊してしまいそうだ。

 だから一旦解放したロバートをまた会場に連行してきた。

 丁度いい感じに回復魔法で治療されている。


 もう一度顎を粉砕して舌を引き千切った。

 それだけでは怒りが収まらないので急所をゆっくりと握り潰した。

 指や手首、肘や膝など手足の関節を全て粉砕した。

 だがそれでも怒りが収まらないので、口から手を突っ込んで胃を引きずり出した。

 これ以上やると死んでしまうので、治療術師の方に放り投げた。

 

 アレグザンドラも同じ目にあわせたかったが、グッとこらえて我慢した。

 アマーリエ嬢に失望されたくないので我慢した。

 その代わりロバートの側近連中を同じ目にあわせた。

 ようやく少しだけ怒りが収まったので、アマーリエ嬢を引き留める方法を考えた。

 アマーリエ嬢を領地の修道院に引籠らせる訳にはいかない。


「国王陛下、先ほどの王位継承権の話ですが」

 

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