めちゃくちゃ小さい不幸ばかり降りかかってくるガール

アイスティー・ポン太

第1話 メイコ、不幸のはじまり

 私はメイコ!今年の4月から憧れの赤白大学に通うことになった現役女子大生!

 自慢ではないんですが、私は今までの人生で人よりちょびっと「運が良い」ことが多かったです!


 例えば小学校では、給食の余ったプリンをかけてジャンケンして負けたことがありません!中学校では席替えの時、隣の席に来るのはいつもイケメンな男子ばかり!そして高校では通ってた塾の先生の教え方が私にピッタリだったおかげで、成績が上がりっぱなしでした!


 そんな私、メイコは大学に入ってから大きな転機を迎えるのです……

 それは大学の新歓が落ち着いてきてそろそろ所属するサークルを決める5月のことでした……



 5月6日 赤白大学 奥武山キャンパス 第4教室 3限終了時刻


「ねえメイコ、もう入るサークル決まった?」

「ううん、まだ迷ってる。」

「私もー。体育会系は絶対ナシだし、飲みサーもナシ」

「それ私も。できればユルい文化系がいいよねー」


 いま私と喋っているのは、同じ高校から一緒に進学したヒカルちゃん。

 同じ高校出身だけどヒカルちゃんは一浪してるので、ホントは高校の一つ上の学年の先輩になるんだよね~。でも高校時代に面識がなかったおかげで普通にタメで喋っています。


 人もまばらになった講義室で二人で喋っているなか、一人の男が話しかけてきた。


「お、まだ二人ともサークル決めてないん?」

「お、タグチじゃん。タグチは軽音サークル入るっしょ?」

「軽音ってのは決めてるんだけど、真面目な『赤白大学軽音学部』かもう少しゆるい『FUTABA』かで迷ってるんよね。どっちも新歓いったけど。」

「え、い~な~。うちらジャンルすら決まってないんだけど(笑)」

「俺的にはヒカルちゃん、『Peace』とか似合うと思うんだけど」

「え!?あれヤバイ飲みサーじゃん!私ゼッタイ無理だわ(笑)」


 タグチくんは、大学近くの緑谷高校から入学して来た男の子だ。ちなみに緑谷高校は赤白大学の入学者数が毎年トップというかなり賢い高校である。

 彼は昔から音楽が好きで中学から高校までベースを弾いていたらしい。ベースってどんな楽器なのか知らないけど。


「そういえば講義の前にこんなビラもらったんだけど……」

 そういってタグチくんは一枚のビラを取り出した。


「『少年漫画研究会』???『赤白大学漫画研究会』じゃないの?」

「それがこの研究会、3年前にできたらしくて今年公認サークルになったばっかりなんだって。」

「で、なんでアンタがこれ持ってんの?」

「これ持って部室いけば、一週間部室の漫画読み放題なんだって。それでさっきは『ラッキー!』って思ったけど部室の場所がわかりづらくて行くの面倒になっちゃって。」

「へぇ~。アタシはそんなに漫画興味ないな~」

「そっか。じゃあメイコちゃん、これ要る?」


(え、私も少年漫画そんなに読まないんですけど……)

 と咄嗟に考えたが、入るわけでもないし、「サークルの雰囲気を見に行くくらいならいいか……」という気持ちが勝ってしまい、


「私、ちょっと覗いてみようかな」

「え!マジ!なんか意外!メイコ少年漫画読むんだ~」

「いや、ちょっと覗くだけだから……」

「じゃあとりあえずこのビラあげるね。」

 

そういってビラを私に渡したタグチくんは教室を去っていった。


「あ、アタシそろそろバイトの時間だわ。じゃあまた明日ね~」

「うん。また明日。」

 ヒカルとも別れた私は『少年漫画研究会』のある部室へ向かうことにした。


 ところがこの『少年漫画研究会』のある場所は、タグチの言っていた通り本当にわかりづらい場所にあることがわかった。


(え、松山キャンパスって道路挟んで向かいのキャンパスだし、ここの2倍くらい広いし何なの……)


 松山キャンパスは「本キャン」と言われ、2年生以上の学生が主に講義を受けたり実験が行われたりするキャンパスです。基本的には工学部棟や大学病院、中央図書館などもここに集まっています。私たち1年生は奥武山キャンパスで講義を受けることが多いため、まだ松山キャンパスには馴染みがないのです。


(ええと、工学部F棟の2階の212号室……?まず工学部の棟、多過ぎじゃない?AからHまであるんですけど……しかも建物ボロいし暗いしなんか匂うし……)


工学部棟まで辿り着いたものの、工学部棟自体が一種の迷宮のように感じられるほど複雑な構造をしており唖然としてしまいました。いや、複雑なのはまだいい。このボロくて暗くてなんか匂うのはなんとかしてくれ。

 

私が在籍している理学部の建物は、例外的に奥武山キャンパスにある上に、工学部棟と比べてもう少しこじんまりとしていて、更に5年前に改築されて結構キレイになっているので軽いショックを受けてしまいました。


(なんとかF棟まではたどりつけた……あとは登って212号室を探すだけ……)


少しホッとしつつ、階段で順調に登っていきました。

が、2階のフロアに上がる瞬間のことです。


「あっ」


何年振りでしょうか。階段の段差で思いっきりコケてしまったのです。


思えばこれが不幸の始まりでした……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る