第33話 危険なゲーム


 ゲーム、ゲーム、ゲーム三昧。 確かにゲームは面白い。 やり過ぎると疲れる時はあるが、のめり込むと、時を忘れてしまう事があるくらいの魅力がある。 それが友達と盛り上がっている時なら尚更だ。


 ユウカと舞がお昼の買い出しから帰ると、二人はゲームをしていた。 相当白熱している様で、いつもユウカと舞は顔を見合わせて微笑んでいた。

 二人は朝起きてすぐゲームを始めていた。



「お前らまだゲームしてんのかよ」


「フラン、ちょっとは休憩しないとだめだよ」


「聞いてくれユウカ! もう少しでフランに勝てそうだったんだ……」


 エリィーが飛んでやって来たが、ユウカの横にもう一人女性が立っている事に気が付いた。


「あ、……こんにちわ」


「た、ただいま~」


 舞も少し気まずそうに挨拶をした


「もう、その他人行儀はしなくていいから、エリィー」


「そうか、良かった。 実はもう私も限界だったんだ。 という事は、こいつはもう私の事を知っているって事でいいんだな?

 なら、話は終わった。 舞もユウカもいっしょに遊ぼう」


 エリィーはまだ言葉は悪いが、大人な判断をすることが多い。それはユウカですら負けるほどに。


 エリィーは2人の手を引きながら部屋まで連れて行く。


「おい、エリィー! 俺らは」



 舞はそれがたまらなく嬉しかった。自分を認めてもらえる場所、自分を引き入れてくれる事が。


「いいじゃん、ユウカ。 ちょっとだけ付き合ってあげようよ」


「何だよ、お前、やっぱり優しいんだな」



「う、うっさい」


 大きな平手が飛んできた。 彼女は別に力を入れるつもりは無かったんだが、照れると力の言えれ具合が難しい。



「痛てぇ……」


 

 白熱する四人だったが、見るからに一人だけ無駄についていけてないキャラクターがいた。


「ユウカ、アンタやる気あんの?」


「舞、そう言うな。 信じられないと思うが、ユウカはこれで本当に精一杯なんだ」



「おい、お前ら、好き勝手言ってんじゃねぇぞ! なぁ、フラン」


「……ユウカは本当に弱い」


「なんで、フランまで」


 ユウカはその言葉に泣いた。



「じゃあ、次はチーム戦をやるぞ」


 エリィーの指揮のもと決まったチームはエリィー、フランチーム対、舞、ユウカチームだった。


「え、あたしアンタと?」


「何だよ? 嫌なのかよ、お前こそ足引っ張んなよ」


 エリィー達にはこの行きつく先の結果は見えていた。


「うむ、ではハンディをやろう」



『ハンディ?!』


 その言葉が2人の中の何かに火をつけてしまった。



「ハンディだと、そんなの要らん!」


「そうよ、私達でアンタたちを倒すんだから。 ハンディなんて必要ないわ」



「そ、そうかそこまで言うならいいが……」

 フランとエリィーは相当手を抜いた。 当然の如くエリィーとフランの圧勝だった。



「な、何だこの結果は」


「酷過ぎる、私達の結果」



「だ、だからハンディをと」


「……やっぱり、二人は弱すぎる」


「フ、フラン。 そこまで言わなくても……」


 エリィーは精一杯二人を気遣っていた。




「だいたいアンタが」

「だいたいおまえが」



 二人の痴話喧嘩が始まる。



「あの時アンタが足引っ張らなければ」


「はぁー? お前がひとりで突っ込むからだろうが。 俺はお前を守ろうとして、代わりに死んだんだよぉ! 」



「い、いや二人ともすごかったぞ。 じゃあ、次はチームを変えて」



『チームを変える?』


 

 その言葉が2人の中の何かを騒がせた。


「ふざけるな、もう一回勝負だ」


「アンタたちに宣戦布告を申し込むわ。 今度は負けないから」


 いや、無理だろう。 二人はそう思いながらも、だだをこねる二人に付き合ってあげた。

 結果は……、言わなくていいだろう。

 だけどあきらめの悪い二人は納得がいかないのか、何度も勝負を挑んではストレスゲージを貯めて行った。




「チクショウ、やっぱりだめか。 何で勝てないんだろう」


「2人とも強すぎる。 私達の作戦じゃ歯が立たない、どうしたらいいんだろう」


 いつの間にか喧嘩していた二人はゲームによって一時的ではあれ協調性を強めていた。


 切りのいいここでお昼をとった。 すでに12時を2時間以上回って居たので遅いお昼となった。

 


 後半戦。 結局さっきの勝負も負けたままでは納得がいかないと、ユウカと舞が攻めてきた。

 結果は変わらない。 だが二人が組むとしつこい。負けを決して認めないのだ。

 エリィー達は2人が諦めるまで付き合い、ようやく戦意を喪失させた。

 そしていつしか矛先は勝者に向く。



「つうかさ、今思ったけど、おまえらずるいよな」


「え?」


「そうそう、思ったらこのゲーム私達よりいっぱいやってるんだもんね」


「ま、まぁそうだが」


「その二人が組むんだもんな。 攻略法とかも知ってんだろ」


「そ、そりゃ、まぁ一応な。 対戦ゲームだし」



「だから、チームが悪いんだよ!」

「だから、チームが悪いんじゃん!」


「えっと、だからチーム替えをしようとさっき言ってるんだが……」


 どっちが大人なのか。 断然エリィー達の方が大人の対応だ。



「ふん。 これでお前とはおさらばだな。 ようやく俺の強さを発揮できる」


「そうね、一時的とは言え、できる限り協力はしたけれど、これでわたしの足を引っ張る奴はいなくなるわけだし」



「じゃあ行くぞぉ」


 再びチームを分けた。 エリィー、フランチーム対、舞、ユウカチーム……



「さっきと一緒じゃねぇかぁ」

「さっきと一緒じゃん!!」


 2人はまた声を荒げていた。


「おい、なんでまたお前と一緒なんだよ。 ふざけんな」


「そっちこそふざけないでよ。 また私について来るわけ。 いい加減離れなさいよ。

そんなに私にべたべたしたい訳?」


「はぁ? そんなこと言って本当はお前が近寄ってきてんじゃねぇのかよ」


「ほんと仲のいい二人だな」

「……息ぴったり」


 エリィー、フランの二人は本当は練習すれば脅威のペアーになるのではないかと見ていた。

 なんだかんだあり、エリィー達が仲裁して、チームはエリィー、ユウカチーム対フラン、舞チームになった。


「よし、俺たちの力見せつけてやろうぜ」

 

 エリィーの目は曇っていた。


「いや、ダメだ。 チーム変えだ。 チームを変えよう」


「は? 何でだよ。 まだやってもないだろう、それにフランに勝てるチャンスかも知んねぇぞ」


「いや、微塵も勝てん」


 エリィーは至って冷静だった。


「よぉーしわかった。 だったら、俺らが勝ったら、ポテチパーティをしよう」


「何だと?!」


 エリィーの目に輝きが戻る。希望も何もかも捨て、敵を目の前に動かなくなったロボットが、急に動き出すように、彼女は力を取り戻した。


「ユウカその言葉忘れるなよ」


「おー、いつものエリィーが戻ってきたな」


「あんな二人などコテンパンにやっつけてやる。私達二人のやり込んだあの努力の結晶を見せつけてやろうぞ」


 エリィーチームはユウカの鼓舞によって、士気が高まっていた。


「あのさ、そのお金どうせウチ持ちでしょ? 何勝手な事言っちゃってる訳?」


 舞はこの条件に乗り気ではない。


「何だ舞、もしかして俺らのタッグの前に怖気づいたか」


「んー、別にそんなんじゃないけど……条件こっちだけ最悪じゃない? それ」


「どうせ、負けるのが怖いんだよな。 まぁ、借金女なら仕方がないか、」


 舞に再び火がともる。


「はぁ? 誰が負けるですって。 いいわ、その勝負受けて立とうじゃない! 上等よ。

 どっちが負ける運命にあるのか、思い知らしてあげるわ。 あんたが負けたら地に頭を垂らして今のことを詫びなさい、この貧乏男」



「ふん。

おもしれぇ! その勝負乗ったぜ!」




――――――――――――――――。



「申し訳ありませんでした」


 結果はユウカ達の惨敗だった。



「ふん。 よろしい」



「くっそー、良いところまでいったんだけどな」


「どこがいい所だぁ!

 お前の訳わからん動きで私一人で戦ってたじゃないか!」


「だってあれは、コントローラーが言う事聞かないからだろ」


「それはお前が下手くそなんじゃい!

 そもそもポテチがかかってたんだぞ。! もっと真剣にやらんかい!」


「はぁ?お前だって、ちょっとは俺の事サポートしろよ」


 白熱したゲームなら尚更、負けた時の仲間割れは拍車がかかる。



「まぁまぁ、結構いい勝負だったと思うよ?

 ねぇフラン」

 舞も喧嘩を始めた二人を止めようと言葉をかける。


「……そう、言う事にしておく」


 その時二人の心に火をつけた


「何だと、お前ら。 勝ち組が負け組に送る惨めな慰めか」


 だから燃えた火は舞に燃え移った。


「いや、別にそんなつもりは」


「そうだ、お前たち、私達を舐めているな。悔しい、もう一度だ」



 負けず嫌いな彼らは何度と戦いを挑み、そして散っていった。

 フラン本当に強いんだな。

 舞はフランと組んで遊んでみて、初めてフランがゲームが得意な事が分かった。 ユウカといた日々が楽しかったと言うフランの気持ちが、とても伝わってくるほどイメージができた。



「ダメだ、チームを変えよう」


 エリィーがそう零すと、空気が変わる。

 エリィーはユウカ以外と組みたい。 舞はユウカとなるのは避えけたかった。 フランは、……どう思っているのかは分からないができる事ならと言った感じだろう。


「でも、後組んで無いチームってユウカとフランのチームじゃない?」


 舞は単純にユウカと組んだらどうなるのだろうと思った。 これだけ強いなら、ユウカと組むと丁度良いバランスになるのではないかと。


「確かに……。 良し、 じゃあユウカ、フランチーム対、私と舞のチームで勝負だ!」


 エリィーは思った。 勝てる、これなら勝てるぞ!あのフランと言えど、ユウカと言う爆弾を抱えてしまえばそれまでだろうと。 やっとフランに一勝とれると。



「いいか? フラン俺とで」


 フランはしばらく目を細めて見ていた。


「……大丈夫。 私達が勝つから。 あなたは私が守る。 私の傍を離れないで」


 ユウカは少しときめきを覚えた。 いや、この時、この場にいるみんながフランにときめいた。



「か、勝った」


 ユウカとフランは手を取り合って喜んでいた。


「ば、バカな、ここまで来て負けるなんて」


「ユウカに私が負けるなんて」


 エリィーと舞はもう少しで勝てそうだったのに負けてしまった。 敗因はやはり、相手側にフランがいたからに他ならない。 フランが戦況をひっくり返してしまった。


 あまりの圧倒的差に、二人は膝から崩れ落ちていた。


「どうだ、俺だってやれば勝てるんだ。

 ありがとなフラン」

 

 フランはまさかのありがとうとユウカの嬉しそうな表情にすこし照れたように見えた。

 

「いやぁ、最後に勝って終わるってのは気分が良いな」


 その言葉が二人の灯に火をつける。



「はぁ? ユウカ、誰がこのまま終わると言った」

「ユウカアンタ、このまま逃げれるとでも思ってる訳? 止めないわよ」


「え? いや、もうやめようぜ。 結構やったし。飯も作らないと」


この戦いは今日一日中続いた。 50対23ぐらいで勝敗が動いていた為、お互いがゲームをやめる事をしなかったからだ。 結果だけ見ればユウカ達の勝利だったが、いい勝負だったのかもしれない。 こんな日が一日あってもいい想い出だ。 

 しかしゲームとは恐ろしい物である。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る