第23話 バイパー乱入事件



「フラン、今日学校終わったら、次の日にお前の家に行こうか。

 きっと君を面倒見ている人も心配してると思うから」



 そう言ってユウカは家を出て行った。




 とある荒廃したビルの一角に、非行した人間がたむろっていた。

 その数200はいるだろうか。

 その室内の奥にビルの残骸がいくつも積み重なった場所があった。


 その頂点に一人意気揚々と座る男がいる。



「分かってんだろうな、お前ら。 俺らの仲間が殺された。 殺した奴を探せ。

 そしてここに連れてこい。 絶対殺すなよ。 手足はもいでも構わねぇ」


 凄まじい怒りとそれを支援する者たちの声援が反響する。


 200の軍勢は一気に廃墟を出た。

 まるで攻撃を開始する、軍隊蜂のように彼らは出てきた。

 バイクに2人乗り。 走っていくものや、車を回してくる者たちもいた。

 彼らは基本グループで動く。 何かあっても、何らかの情報を持って帰ってこれるようにする為だ。

 全てが出払った時、この場所はいつにもないほどの静けさだった。

 ただ一人の男を残して他は皆飛び散った。 各所に配置されたおさ達だ。



 探し回る連中は見境なしに破壊した。 目につくものはすべて。 別に人間に危害を加えるつもりはない。 だが、威嚇が行き過ぎて、関係のない人に突っかかる者も沢山目についた。

 彼らに見境は無かった。




「そう言えば、最近舞に合わなくなったな……」

 そんなことを考えながら、窓の外にふけていたユウカ。


「おい、ユウカ、 どこ見てるんだ」


 国語の先生に注意された。



「最近ユウカ君どうしたの? 

 なんだかどんどん悪い人になっちゃってるみたい」


 星が心配そうにしていた。

 それもそうだ。ユウカの学院のイメージと言ったら、真面目で、ふざけたりせず、しっかりと今まで物事をこなしてきた優等生タイプだ。

 授業で居眠りなんて一度だってしたこともない。

 先生に注意されることも少なかった。

 

 なのに最近はそれが目立つ。


「やっぱり色々疲れちゃってるんじゃない? 

 一人暮らしってすごく大変そうだから」



「そう、かな? ちょっと睡眠不足は感じてるかも。

 だけど、受験生なんだからみんな一緒だよ」

 

「それにしても、 日ごろのユウカ君見てるとどうも頑張り過ぎなような」



「ありがとう未来さん。 俺は大丈夫だから 少しこの時間は寝るよ。 そしたら、元気になるし」



「保健室行く? 」


「ううん。 いいよ。」


 今日ユウカは学校終わり、零錠と会う事になっていた。


「キャ―」


 校内にすさまじい音が響き渡った。

 バイクや車のエンジン音を高らかにならし、荒くれ者の連中が校内に入ろうとして来ていた。


「おい、あいつら、校庭のフェンスぶっ潰してるぞ」


「何アイツら。 ちょっとヤバいんだけど」


「怖いよ」


 生徒たちは教室内の窓から見えるその姿に脅えていた。


「何だよ、あいつら」


 ユウカもおどろいて窓の外を見る。

 ユウカの頭の中では、もしやエリィーがらみの事ではないのかとひやひやしていた。

 もしそうなら、早く家に帰らないといけない。



 ユウカは一目散に教室を出た。


 

 外では、学院内に入れさせまいとする教員たちが荒くれ者たちともみあいになっていた。


 とは言うが、これは一方的に教員が殴られているに過ぎない。


 校内放送が流れる 。


「緊急放送です。 皆さん、避難報告をお伝えします。 院内に不信な集団グループが鈍器をもって侵入しました。

 生徒の皆さん慌てず教職員の誘導に従って、落ち着いて移動してください。 繰り返します。

 院内に不信な集団グループが鈍器をもって侵入しました。生徒の皆さんは――」



 外に居た生徒の何人か。 そして学院内でいても立っても居られない生徒は前に立ちはだかろうとしたが、胸の腕章、服の刺繍、 そして、肩や後ろに入った『パイルバイパー』のマーク。

 これを目にして、争おうとする者は数人であった



「オラ、どけこら」


 このグループは校門側と校庭側より挟み撃ちにする形で入ってきた。

 これはパイルバイパーが組織だった場所を落とすのに使う彼らの戦法だ。



 占拠が完了すると、校庭側から、一人の男がバイクと共に建物に前進してくる。

 とてもド派手なバイクだ。 車体はでかく、もはや、縦長の車並みに大きい。

 極めつけは、その目立つ旗。 自分たちのマークはもちろん、それより小さく、今まで潰してきた者たちの旗が見せしめのように飾られていた。


 手には拡張期をもち、バイクの上に上がる。


「おい、てめぇらよく聞け。

 この建物の中に、うちらの仲間を痛めつけた奴がいやがるなら、隠してないで出しやがれ」


「2度は言わねぇ。 これが最後のチャンスだ

 俺らのチームに喧嘩売ったやろうがこの中に居るか? 」


 辺りは全くの静けさを保つ。


 アクセルをひねり、轟音が鳴り響き渡る。

 校庭に見える数はざっと50ほどだった。


 ユウカは丁度、校門側からでようとしたが、そこにもすでい奴らが40人ほどで制圧していた。

 教員はそこで伸び、縛られている。


「ちっ、ダメか。 ここからは出られない。 

 いったん戻って、皆と合流するか」




「あぁー? 返事が聞こえてこねぇんだけど。

 何も言わねぇってことは、どうぞお好きにってことだなぁ。

 そんなら遠慮なく失礼するぞ」

 

 校庭側の族が動き出した。

 バイクが校舎の扉を突き破り侵入する。

 それに続いて一斉に、なだれ込んでくる。

 窓を割り、壁を破壊しながら、校舎内を暴れ回った。



「オラ、 どこだコラァ。 出てこい」


 教室内はめちゃくちゃだ、机は荒れくるい、ガラスの破片は飛び散った。




「おい、入ったぞ。 行けぇー! いけぇ! 」


 校門側からも荒らすように雪崩れ入った。


 奴らは、知らない間に逃げ出すものがいないよう、4.5人ほどメンバーを出口に待機させている。



 全クラス、避難する時間はない。 

 動けたクラスは体育館へ避難したが、半分以上は移動できず、校舎に取り残されている。


 各クラスに族が入り、脅す。 

 当然クラス内はめちゃくちゃ、傷を負う生徒も沢山いた。


 3階に居たユウカ達も同じだ。

 

「おいこら女。 

 お前美人だな。 なんか知っていないか? 」


 星は標的にされていた。

 

「な、なにも知りません。 止めてください」


 族は星の髪を嗅ぎながら、舐めずりまわしていた。


「星さんに何するんだ。 嫌がってるじゃないか」


 一人の男子生徒が、止めに入ったが。


「あ、何だお前? やれ」



 その男性は半殺しにされて、床に倒れた。

 もう顔の形が分からない。



「キャァ――」


「騒ぐなガキ」


 荒立てる声がバットの金属音と喪に響く。


「この女マジでいい匂いがする。 

 スゲヶ美人だ」


 星の体を触りまくる。


「嫌、離してください」


「お前こっち来い」


「いや、止めて。 離して

 きゃぁ――――」



「未来さん」


 星は抱かれて、連れていかれた。



 教員が、追おとするユウカを止めた。


「止めなさい。 今何かしたら貴方まで殺されてしまう」


「だけど、未来さんが。 未来さんが」



「警察が来てくれる。 だから、警官に任せなさい」



「それじゃあ未来さんが」



「ユウカ君! 私達に、何ができると言うの?


 手が空いてる生徒は、 彼の治療を、救急車を呼べる人はいる? 」




 校舎に入ってきた族どもが撤退していくと、先生は冷静に指示を仰いだ。



「え―。 聞こえますか。 学生の皆さん、 どうやら、調べた所匿っている訳ではなさそうです。

 なので、ここで失礼させて頂きます。 ただし、もし、 黒い服にパーカをかぶった男を見かけたら、必ず俺らに連絡してこい。 じゃねぇとどうなるか分かってるな? 」



「後、 こいつら何人かもらっていくぞ? 

 こいつらが気に入ったみたいただからな

 いいよな? お前らの者もみんな俺らのもの何だからよ

 安心しろ、殺したりしねぇ。 遊んだら、返してやるからさ。


 行くぞゴラァ」




 族は騒音と主に帰って行った。



 この事件は令嬢学園内で、すぐに広まった。


「おい、聞いたかよ、今さっき成華学院にバイパーが入ったらしいぞ」


「嘘でしょ? あいつらが? 怖い」



「成華、半壊らしいぞ。

 生徒のほとんどがボコボコにされて、教員はみんな吊るしあげられたってよ」


「おっそろしい。 何かしたのか成華? 」


「さぁ、分からねぇけど」



「ねぇねぇ、街で暴れてたバイパー、今度は成華に来たんだって」


「えぇ、家にも来ないよね? 」



 学園内は少しのパニック状態になっていた。


 帰る身支度をする桜華舞も、人伝いに飛び交う情報を耳にしていた。





「え――、 全校生徒の皆さんは一次、休校とさせて頂きますので、自宅で待機をしていてください。  三年生の学生につきましては、別途教室を用意して、授業を進めさせていただきます。

 学校の再開につきましてはまた、近々、お知らせいたします。 また保護者の方々へもお知らせのお手紙を、随時郵送させて頂きますので、伝える様にお願いいたします。

 お知らせが届くまでは自宅から出ないで、十分に警戒を怠らない様にしてください」



 校内放送が終わり、一斉下校となった。


 しかし、学校の姿は見るも悲惨で、教員すら、重症で運ばれる始末。

 まるで、戦場跡のような光景が夕日と共に皆の目に焼き付いていた。


 警察が来たのは、事件から15分後のことだった。

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