ゴブリンよ連帯保証人になってくれて、ありがとう!死ね!~パワーでも魔力でも何でも無限に借りれるスキルを手に入れた。返済? そんなもの他人に押し付けてしまえ~

喰寝丸太

第1話 追放

「アカジ、君は追放だ」

「デビット。なんで、なんだよ」

「そんな事も分かんないの。リーダー失格よ。というか元リーダーだった」

「リーチェも酷い」

「酷いのはアカジだろう。そりゃ俺達は食ってはいけた。だが、それだけだ。何年Fランクやってると思う。二年だよ」

「皆も同じ意見なのか」

「そうだな」

「おう」


「分かるだろう。この世界は力を持っている奴が正義だ。君のやり方では駄目だ」


 俺が何をしたって言うんだ。

 俺はアカジ。

 異世界人ってだけが特徴のしがない男さ。

 取柄と言えば転移してきた時に持ってきたソーラー電卓で計算が出来るって事だけだ。

 パーティの金勘定は俺が担当。

 必然的に俺は冒険者パーティのリーダーを務めていた。

 だが、パーティメンバーのデビットが覚醒者になった。


 覚醒者とはスキルに目覚めた者を言う。

 一般人はスキルは無しだ。

 覚醒者だけが超常のスキルを使う事が出来る。

 戦闘力はスキルのない者の何百倍もある。

 だが、一般人の数の方が圧倒的に多い。


 冒険者パーティなんて普通は一般人だけで構成される。

 俺達も一般人だけで組まれていた。


「デビットが覚醒者になったので、それを中心にやって行くのか」

「そうだ。泥臭く稼ぐのももう終わりだ。パーティで貯めたお金と装備は当然置いていくよな」

「あれは俺の取り分も入っているはずだ」

「なあ、みんなはどう思う」

「置いていくのが当然だ」

「そうだ」

「そうよ」

「置いていってもらおう」


「そうか。なら置いていこう」


 俺達が貯めたお金を全て取られた。

 装備の修理代や宿代は全てそこから出していたから、俺の全財産は小遣い程度だ。


 何がいけなかったのかな。

 俺の戦法というのが罠を仕掛けて嵌めるというもの。

 力のない一般人には適したものだと思ったのだがな。

 確かにパーティメンバーには不評だった。

 卑怯だとか。みみっちいだとか言われた。

 命は一つだろ。

 安全を取って何が悪い。


「くそう、飲んでやる」


 俺はギルドの酒場で酔いつぶれた。


「おい、朝だぞ。飲み代の銀貨5枚。払ってもらおう」


 ありゃ、足りない。

 ちょっとまずいぞ。


「ギルドマスター、お金貸してくんない」

「聞いたぞ。パーティ首になったって。よし、依頼をやれ。その金を今払ってやる」

「とほほ、ただ働きかよ」

「贅沢を言うな。衣服を売っ払ってもいいんだぞ」

「やるよ。やらしてくれ」


 俺は必死に薬草採取した。

 なんとか依頼を達成してギルドに帰る。


「マスター、今晩泊まる金がない。前借りさせてよ」

「しょうがない奴だな。明日の依頼で返せよ」


 思うにこれがいけなかったのだろう。

 前借りしては必死に依頼を達成する毎日が日常化。

 俺の通り名は借金くずになっていた。


 そんなある日。

 ステータスをチェックしてみると。


――――――――――――――

名前:アカジ LV9


魔力:52

筋力:37

防御:17

知力:55

器用:64

瞬発:23


スキル:ローン LV1

――――――――――――――


 スキルがありやがる。

 どうやら俺は覚醒者になったらしい。


――――――――――――――

ローン LV1

 十秒間、力を借り入れる事が出来る。

 十秒間が終わると返済に移行する。

 レベル1では1種類。

――――――――――――――



 俺のスキルはローンというのだな。

 十秒間力を貸してくれるらしい。


 やってみるか。


「【ローン】」


 俺はスピードを10人分借りた。

 百メートルの距離を一瞬で移動する。


「お……お。あ……れ。な……ん……で……こ……ん……な……に……遅い」


 ステータスを念じる。


――――――――――――――

名前:アカジ LV9


魔力:52

筋力:37

防御:17

知力:55

器用:64

瞬発:1 返済中


スキル:ローン LV1

――――――――――――――


 十秒が切れると返済期間に入るらしい。

 スピードを借りると返済期間はナメクジの速さだな。


 さっきのは速さ10人分だから、10×10秒で百秒の返済だ。

 これは考えて借りないと大変な事になる。

 調子にのって一万人分とか借りたらえらい事になる。

 千人分が167分だから約三時間だな。

 このぐらいを目安に運用してみよう。


 ローンスキルの有効な使い方ってなんだ。

 荷物運びは十秒じゃ駄目だな。

 そこで俺が選んだ仕事は露店にて果物を手で絞るだった。

 五人分の握力で絞り、一分休憩。

 また絞る。

 それだけじゃ食っていけないから、採取の仕事を一日一回やっているけどな。


 そんな生活をしてスキルを使いまくり、スキルのレベルが4になった。

 同時に借りられるのが4種類になっただけだ。

 レベル4になったからと言って生活は変わらない。

 デビット達のパーティが通りかかった。


「見て見て。アカジが露店やっているよ」

「とうとう、そんな所まで落ちぶれたか」

「行こう。目が腐る」

「Fランク臭くなる」


 Fランクの何が悪い。

 お前らだって三ヶ月前はそうだったじゃねえか。

 俺のスキルに返済期間がなけりゃあなぁ。

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