第3話 Rose

「誘い込まれているかもしれないって?」

「俺が門を打ち破ってから、まだ五分しかたっておらず、ロッソさんが車の音に気づいたのは打ち破ってからすぐのこと。すなわち、こんな室内を荒らすことは時間的に不可能ってことです」

「なるほどね。相手にマーカーがいる可能性も視野に入れないとね」

「そうです」

 一部屋ずつ壁までも確認していく三人。背後のケアだけでなく、上や隙間からの攻撃にも備えた布陣で進む。一階部分を捜索し終わり、二階へ行くと先程からしているの香りが強くなった。


「これは血か?」

 ロッソがしゃがんで、地面の残る赤いシミを指差す。それは確かに血であり、廊下に転々と散らばっていた。

「一悶着あったみたいね」

「おーい。この部屋から良い匂いが出てるっぽいぞ」

「そうか、気をつけて開けてみましょうか」

 大きなガラス窓が付いている部屋ではあるが、曇りガラスのために中の様子はわからない。グリーズがドアを開けてみると、そこには2〜3メートルほどの大きさがある薔薇が生えていた。驚きを隠せない二人グリーズとロッソ。一方、落ち着きを見せるマローナはリボルバーを構えて、そろりそろりと近づいていく。


大きいわね。わぁ!!」

 薔薇の影から出てきた男がゾンビのようにマローナの脚を掴んだのだった。彼女はすかさずリボルバーを男に放とうとするも、薔薇のが男を縛り上げ、部屋の外へ放り投げた。男は部屋のガラス窓から飛び出し、グリーズのところまで転がる。グリーズの視界には、割れた曇りガラスの窓越しに数本のが映った。


「綺麗な薔薇だけど、閉じてもらわないと困るのよね」

 周りに転がる敵の死体をツンツン蹴って生存確認をしてから、しっかりとリボルバーを構えるマローナ。

(窓は密閉されているし、この薔薇の香りに隠れているとしたら......あのボンベは)

「マローナ、撃つな!!」

「えっ?」

テンペスタ無風領域ノンヴェント・レジオーネ〜」

 寸前でグリーズの剣が投げ込まれ、マローナと薔薇、そしてグリーズをドーム状の風が包む。放たれた銃弾は風の中で爆発することはなかったが、風のドームを出た途端、爆音が鳴り響いた。


「完全にハメられたわ」

「全員吹っ飛ぶという最悪のシナリオは防げたが、ロッソは......」

「今は目の前のことを達成しましょう」

「ああ。おそらく上向きの風で支えているだけなんで、早くやらないと。あなたならでしょうから」

(バレてたか)

 ふっと息を吐き、キリッと決めなおすマローナ。彼女は両手でリボルバーを構え、薔薇へ三発ほど撃ち込んだ。薔薇はその弾丸を全てで払いのける。

「なるほど、なるほど。お行儀が良いと止められるのね」

 そう言うとマローナは一度リボルバーをマークに戻した。どうやら彼女のリボルバーはマークに戻すことでリロードされるようだ。


「いっちょ、本気出しますか」

「マローナ、あと1〜2分でケリをつけてくれ」

「タメ口は許したけど、上からは許してないんだよなぁ。まぁ、やりますか。拳銃リボルバー無限弾丸エンドレス・バレット〜」

 彼女は召喚したリボルバーをクルクルと手元で回転させながら、的確に薔薇の葉を撃ち抜いていく。シリンダーの弾数である6回に1回、マークに戻すことで再充填リロードの時間を削減しており、まさに無限の弾丸が飛んでいくようである。薔薇は悶えて反抗仕様にも出来ず、ただ穴だらけにされるのが明らかだった。と思ったところで、銃撃は止まった。


「これでオッケーかな。おーい、出ておいで」

「お姉ちゃん、だぁれ?」

「私はマローナ。ファミリーの構成員です」

「悪いおじさんも同じこと言ってた。信じられない!」

 硝煙のもやの中から出てきたのは、10歳程度の少女だった。涙目でぐずっているようで、マローナがなだめている。

「じゃあ、レプティルお姉さんからの使いですって言えば信じてくれる?」

「レプちゃんの友達なら信じる!」

 やっと落ち着いたところで、グリーズによる風のドームが解けた。ゆっくりと崩れていく二階から抜け出す三人。彼らの目に飛び込んできたのは、驚いた顔をしている数十人の敵と死んだはず?のロッソだった。


「長かったな。俺が爆発で吹っ飛ばされてからドンドン来やがったんだが、なかなか減らねぇんだわ、コイツら」

「良かった......」

「心配してくれたのか、グリーズ。俺は嬉しいぞ。マローナはツンデレさんなのかなぁ?」

 こんな冗談を交えながらも、ロッソは右手から出している炎を盾のようにして、敵からの銃撃を防いでいる。マローナは無視を貫き、少女を自分の後ろへ隠した。

「そろそろウザいな。消えろ、クソども。炎よ集まれ!!」

 爆発で燃えているログハウスの炎が、マークの刻まれたロッソの右手に集まっていく。

ファイア業火直球トップ・ストレート〜」

 ネーミングセンスが良いとは言えない一撃が敵を襲う。この火球は庭園ごと燃やし尽くし、一面が焼け野原と化した。

 ロッソは自慢げに

「俺が強いってのが、わかったかな?」

「まぁな。でも、これはやり過ぎだ」

「後始末が大変そうね」



 -高台

「嘘だろ。少女アレも死んでねぇ。死んだのは、俺の部下だけってか」

 高台にいる人数はたったの三人だけだった。

「戻ったら、スケイレに連絡しろ。アイツなら、使



 -帰りの車内

「君の名前は?」

「おとこなら、先に名乗りなさいよ!」

「おいおい。凄い教育を受けてるんだな」

 大人顔負けな対応を見せる少女。グリーズでさえ、困惑している。

「俺はグリーズだ、それで君は?」

「わたしの名前は、ローザ・

(ここまでは予想通り。あとは、スケイレか)

 グリーズは夜で暗くなる車内で、密かにほくそ笑んだ。



<次回予告> byグリーズ

今回は、俺の担当回だ。

初仕事はヒヤリとすることもあったが、どうにか成功できた。

とはいえ、まだ俺個人の仕事は終わってない。

あの二人を土産に持っていかないといけないからな。


尺もぴったり合わせたぞ

それでは次回もどうぞよろしく!

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