×ウインドーク

5−1「焼け焦げた人々」

 …ウウウウ…オオオオン


 低い飛行機の飛ぶような音に布団の中で目を覚ます。

 そこは覚えのない畳の部屋で天井に下がる白熱球はチカチカと点滅していた。

 窓は板張りになっており、風の音から外は大分荒れているようだ。


(寒いし…ここは一体、どこだろう?)


 不意に喉の渇きを覚え、私は布団から起き上がる。

 着ているのは見覚えのないセーターにジーンズ。

 …その時、部屋の奥からパチパチという音とともに焦げ臭い匂いがし始めた。


(え、ヤダ火事!?)


 慌てて布団をはねのけ近くの襖を開ける。

 その先には2つの部屋と廊下が続いていたが…


 オオオオン…オオオオン


 途端に向かいの障子が開くと、煤のような人たちが飛び出してくる。

 焼け焦げ、身体中が欠落し、ザリッザリッと足元に煤を落とす黒い人だかり。


「…や、いやああああ!」


 私は叫びながら板の間の廊下を走り、置かれていたサンダルを履くとそのまま外へと向かう…と、道中のテーブルや食堂からも次々と火の手が上がり、自分の肩口を見ると飛び火したのか小さな火が私の服のあちこちについていた。


「わ、あ…ぎゃあ!!」


 とっさにセーターに腕を回し、服ごと火を消そうとするが…そこに声が響く。


『服を脱いじゃあいかん、低体温症で凍死するぞ!』


 突然あがる【師匠】の言葉に驚くと、ジーンズのポケットにスマートフォンが入れられていることに気がつく。


『…間に合ったようだな。どうやらお前さんたちは寝ているあいだに怪獣の攻撃を受けていたようだ。とっさにこちらで備え付けの妨害音声を流したから大事には至っていないようだが…そういえば、千丈くんはどうした』


 そこで私はハッと気がつき周囲を見渡す。

 奥の部屋にも食堂にも火の手や黒焦げの人たちはいない。


 オオオオン…オオオオン


 風の音だけが聞こえる人気のない山小屋。

 …そう、私たちは現在3000メートル級の山の上にいた。

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