第6話 幻の最高学府

 都市伝説で選ばれた者しか入れない。学校らしきものが有るらしい。イザベルはそこで賢者の石を手に入れたそうだ。それを純化して賢者の雫を作ったらしい。賢者の石の作り方は不死の魔女しか知らないハズなので、不死の魔女もその学校で賢者の石の作り方を確立したのだろう。賢者の石の作り方に関わったウェイン家は既にブラッド家の創始者に滅ぼされている。現時点で賢者の石が欲しいならその学校、幻の最高学府を見つけるしかないのだ。

 イザベルはそこで長年魔術理論を研究していたらしいのだが、長大な寿命を持つハイエルフでも変化のない生活に嫌気が差したらしく。その学校から逃亡したらしい。魔術理論を本に落とし込むにも特別なインクが必要らしく、度々ダンジョンまで素材を取りに行かされる。そのこと自体に問題は無いが、一日でも早く帰らないと学院生の生活が立ち行かなくなる。洗濯自体は生活魔法で何とかなるにしても、訓練で破れた服の修繕は俺が行っている。付与魔法が使えるからだ。魔法に耐えられるようにまあ、色々と付与魔法を使うことになる。完成品に付与魔法をかけるのは簡単だが、一度壊れた付与魔法を修繕するとなると少しコツがいる。

「お前無駄に器用貧乏だよな」

「散々やってるから器用富豪と呼んでもいいんだぞ」

「そんな言葉はない」

 チクチクと針を動かしながら、イザベルは俺の作業を見ている。昼食前の空いた時間に破れた服を集めてこうして修繕していた。既製品でもまだ服は高価なモノでオーダーメイドの服など富豪以外着たりしない。

「塔に居た時も服は何着か着回しで修繕はした事がないな」

「研究馬鹿が服を破くような事しないだろ」

「そうでもない、どこぞの馬鹿が研究室ごと爆発して消火作業で何着かダメにした」

「へ~。どの世界でも馬鹿はいるもんだな」

「そういう時は管理人から服が支給されるんだ。デザインセンスは微妙だが」

「可愛いって大事だよな……」

「機能美は認めるんだけどな」

 頭の油で針に着けてチクチク縫う。バッチいかもしれないが、油を付けないと針の滑りが悪くて余計な力が掛かってしまう。作業を始めて一時間、五着の服の修繕は完了した。後は付与魔法を掛けるだけだ。

「器用貧乏というか、そんなちぐはぐになった付与魔法を良く直せるもんだな」

「長年の経験がモノをいうからな、イザベルはこおいう細かい作業は苦手そうなイメージだな」

「阿保か魔導書の執筆の方が繊細だよ」

「ま、魔法回路を本に込めるんだから下手すりゃ爆発は言い過ぎでも発火しそうだよな」

「魔導書の執筆には集中力最大で書くからな秘密の場所で書いてるし」

「そんなとこだと思ってたよ」

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