第4話 編入生の苦悩

 王立魔法院だが、在来生には年齢にバラつきがある。大抵は成人後に入学して三年ほどで一般教養と技能試験を受け、卒業の証とて魔法士は剣のシンボルを魔術士は杖のシンボルを貰って卒業となる。当然、魔法の研究生として学院に残る者も居れば、卒業試験に落ちて留年する学院生も居る。大抵留年生は親の仕送りが止まり、学院内外でアルバイしたりして金銭を稼ぐ。

 また、家の方針で一般教養を家庭教師から教わり、魔法知識だけ習う者いる。そういう者は年若く入学してくる。だから、学院生の年齢はバラつきが出てしまう。

 そして、魔法の素養が突然発現して魔法の才能に目覚める者も居る。それらの子らは総じて魔法回路が強靭で扱う魔力量も違う。つまり、強くて孤立しやすのだ。

 人は自分とは違う者、特に弱者も強者を異と判断しがちだ。力は元々持っていた者であり、心の持ち方が一番大事な事だと学院で知る者も沢山いる。包丁は刃物だが野菜や肉を切るモノであり、人に向けるモノでは無い。それを知っているのと、実際に行うのでは心の持ちようで違うのだ。それと同じように魔法も何に使うかで評価されるべきだと言うのが学院の基本方針である。

「何を悩んでいる若人よ」

「何故、人はおっぱいに惹かれるのでしょう……」

「うん、ここは人は何故いがみ合うのでしょうとか、どうしても友達が出来ませんとかいう場面」

「思春期の男にとっては大問題です!」

「落ち着け、そして声がでかい」

 周りを見渡して誰も注目していない事を確認する。

「若いリビドーはなんとなく分かるがそんなに溜め込んでるなら、娼館でも行って発散して来い」

「そんなお金、編入生の俺には用意できません……」

「あぁ、そういう悩みも有るわな」

 顔面偏差値が高くないとか、イケメンに限るとか、世間の風は冷たい。お金が有れば有るに越したことは無いのだ。主に性欲的に。

「彼女でも作れれば……」

「なに都市伝説的なこと言ってるんです?」

「そこまでか、お前。そんなに酷くないだろ」

 彼女作るってそんなに難しい? 好きな子に好きって言うだけじゃん? 俺がおかしいの? 振られるからって行かないと付き合えないじゃん。

「彼女彼氏持ちなんて滅んでしまえばいいんだ!」

「それじゃ世界が滅んじゃうよ」

 モテないを拗らせるとこうなるのか……。ま、編入生の悩みとしてはまだマシな方だと思うけど。下手すると孤独を拗らせて世界征服しようとする。なんか腕に包帯巻いた奴とか眼帯付ける奴とか必ず一年に一人は居るからな……。

「先生が奢ってやるから娼館行こ! な!」

「ほ、ホントですか‼」

「何回もはダメだけど、最初の一回くらいなら。あ、編入生だけの特別処置だから公言しないように」

「分かりました。楽しみにしてます!」

 給料もらっても使う機会無いんじゃあまりにも自分が可哀想過ぎる。学院生の為に使ってやるのが大人の余裕ってもんじゃないか……。俺はいつも余裕が無いけどな、仕事が終わらんし。はぁ、休みたい。





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