第2話 図書塔の主

 今日は学院の図書塔の本の整理に駆り出された。

 六階建て地下二階の石作り図書塔の広さはめまいを起こすほど広い。そこに国中の本が納められている。その種類は多岐に渡るが、魔導書が大半を占める。特権階級だった魔法士の家系はとある家のせいで爆発的に魔法士の数が増えた。一般人が魔法を使うには魔導書片手に呪文を唱えると言う魔術士達は急に増えた魔法士のせいで仕事が激減した。それでも人は争いをやめず魔法士と魔術士の育成に力を入れている。

 俺ことレオニス・ブラッドも魔法士の血が流れているが、魔法の効率を上げる為に魔導書の世話になった事もある。この国の識字率は高く、魔導書の内容も理解できるのだが、魔導書を書けるのは理事長こと大魔導士ハイエルフのイザベル・マランだけだった。

 一人で膨大の数の本を書きあげるのも凄いが、本という媒体に魔法式を計算された配置で魔術回路を組み込むのはイザベルだけにしかできない神技。大魔導士と言われる所以だ。

「ミコレット、頼むから本を読むか整理を手伝うかどっちにしてくれ」

「仕方ないじゃない。忘れていた魔法理論があるとついつい見ちゃうのよ」

 引っ越しや模様替えで出てきたアルバムにこんな事もあったなと思い出に浸ってしまうアレである。

 作業時間は限られているし、学院生達が過去の文献をテキトーに本を戻すから図書塔の整理は一種の苦行だ。

「時間が有れば本を読んでるお前がテキトーに本を戻すからみんなも真似するんだよ⁉」

「イイじゃない、レオニスが元に戻すんだから」

「だから、俺の仕事を増やすんじゃねぇよ。本って重いから筋肉痛で大変なんだぞ?」

「数時間後には治ってるからいいじゃない」

「痛いものは痛いんだぞ? マジふざけんな」

「そんなに怒らないでよ」

「どいつもこいつも俺の仕事増やしやがって、また石化してもやっていいんだぞ⁉ 困るのお前達だし」

「それだけは止めて私が死んじゃう!」

「いっぺん一度死んでみろ」

「死んだら終わりじゃないの! レオニス一緒にしないで!」

「俺だって死にたくて死んでるわけじゃねえんだよ、過労死してんだよ!」

「分かったわよ整理すればいいんでしょ! でも、お昼ご飯は豪華にしてよね!」

「阿保か。学院生と一緒に決まってるだろ」

「なんでよ!」

「自分の職務も真っ当に出来ない奴に食わせる飯はねぇんだよ!」

「それはそうだけど……。一人で出来ないものは出来ないのよ……」

「だから手伝ってやってるだろ。さっさと終わらせるぞ」

「分かったわよ」

 数時間後、本を借りに来た学院生たちにも手伝ってもらって何とか整理は終わった。手伝ってくれた学院生にはデザートを一品増やしてやった。ミコレットはそれを贔屓だとわめいていたが図書塔の主として責務を全うしてからにしろと言ったら渋々納得した。

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