婚約破棄編
第1話 どうやら婚約破棄されるらしいです
暖かな昼下がり。
学園の中庭にあるガゼボでお茶を楽しんでいると友人であるエリーザが見えた。
慌てた様子で駆け寄ってくる彼女に首を傾げる。
「リア!大変だよ!」
「リーザ。走るなんてはしたないわよ」
走ったせいで息を切らす友人に注意をする。
「それはそうだけど。それよりも大変なんだって!」
私の侍女であるカルラが淹れてくれた紅茶を一気に飲んだ後、カップを鳴らしながらソーサーに叩き付けるエリーザを見て眉を顰める。
エリーザは淑女と呼ぶには少々不安な部分がある。しかしここまで酷い真似は普段の彼女はしたりしない。
そうなると彼女にここまでの行動を取らせた特別な理由があるのだろう。
「なにかあったの?」
「それがね。あの馬鹿王子がリアとの婚約を破棄しようとしてるらしいのよ!」
それを聞いた瞬間、開いた口が塞がらなくなった。
エリーザが言う馬鹿王子とは、この国の第二王子であり私の婚約者様でもあるアルバン・フォン・デッケンの事。
頭の出来があまり良くない為、顔だけ王子、馬鹿王子と陰で笑う人が多いのだ。
その婚約者様が私との婚約を破棄する?
「それは本当なの?」
エリーザの勘違いだと思いたくはないが確認をせず行動をする方が馬鹿のする事だ。
私の威圧に驚いたのか、怖らがせてしまったのか震えながら青白い顔で何度も頷くエリーザ。
「本当よ。ほら、最近あの馬鹿王子と一緒にいる子が居たでしょ?」
「あのピンク髪の頭の軽そうな方ね」
「その子と結婚するためにリアとの婚約を破棄するって言い回っているらしくて」
最近、婚約者様は私の知らない女生徒と楽しそうに話している事が増えた。それ自体は別にどうでも良いです。むしろ学生同士仲良くしてくださって大いに結構。ですが、彼女と結婚するために私との婚約を破棄?
「あの
持っていたカップに力を込めるとピシッとヒビの入る音が聞こえてくる。
折角お父様に買って貰ったお気に入りのカップなのに。
やってしまったわ。
カップ代は割れた元凶を作った婚約者様に請求するとしましょう。
「リ、リア?」
「リーザ。私、やる事が出来たから失礼するわね」
立ち上がると制服の袖を掴まれました。
どうしたら良いのか分からないという顔をするエリーザに目を細める。
優しく笑って「大丈夫よ」と軽く頭を撫でてから侍女のカルラに視線を向けた。
「カルラ、今日は帰るわ」
「午後の授業はどうなさいますか?」
「休んでも問題ないわ」
小さい頃から様々な英才教育を受けてきた。
勉強、魔法、社交ダンス、テーブルマナーなど貴族として、淑女として、必要な物は既に身に付けている。学園の授業をちょっと休んだくらいで置いていかれるほど私は馬鹿ではない。
婚約者様とは違いますからね。
「お父様のところに行ってくるわ」
「宰相閣下のところに!?」
「リーザ、ご機嫌よう」
声を上げるリーザに淑女の礼を取って、その場を後にする。
婚約者様、待っていてくださいね。
貴方が婚約破棄する気なら、その前に私が婚約破棄をしてあげますから。
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