第24話 あれ、財団の方?2

「え、どこらへんが俺の望んだ理想なの?」



 俺が問うと一道はやれやれと肩をすくめて、壁に背を預けた。



「木塚君が提示した条件は二つ。一つはあなたの醜い本性を口外しないこと。そしてもう一つは学校ではあなたに敵意を向けないこと、そうよね?」



 人差し指を立て、それから中指を立て、最終的にピースサインの形を作って確認してきた一道に「おう」と俺は短く答えた。



「どちらも破ってないわよね? 私」

「まあそうだけど、つかそもそも破らないのは大前提なんだけれども……それが俺の理想とやらにどう繋がるんだ? てか俺の理想ってなに?」

「敵意を向けるな、それは言い換えれば私が木塚君に対して抱いている嫌悪感を表に出さないでほしい、ということよね?」



 俺が一昨日言ったことを口にする一道。



「そうだが」

「察するに木塚君は私に〝友達〟として振る舞ってもらえれば十分だと考えていたはず」

「まあな」

「でしょ? ただこの私――一道真琴は昔から要望に対して期待以上に応えてしまう癖が身についてしまってるのよ」

「…………は?」



 まるで意味が分からないを一文字に要約して聞き返すと、一道は一歩前に出てさながら舞台の上でスポットライトを浴びている演者のように手をかざした。



「友達としてで事足りるところを私は〝恋人〟として応えた……木塚君が思い描いていた理想に私はいろどりを添え華やかに仕上げた。これを期待以上と言わずなんと言うの?」

「ありがた迷惑って言うんだよそれはッ!」

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