(2)勝家と長秀

柴田勝家といえば、「鬼」武将として有名で、秀吉の出世街道をことごとく邪魔する年配の怖い同僚という印象でしょう。


しかし。

勝家の名前を鑑定判断すると、22。つまり、画数2のキャラ、人望力の人です。

この柴田勝家こそ、織田軍団の最大の功労者にして、織田軍団組織の要となる最重要人物でした。


この人望力という人は、組織の安定化に欠かせないキャラです。

よく似たキャラとして、外交力の人があります。しかし外交力の人には、じつは人望力がありません。コミュ力は高いが、そうやって集めた人たちからの心理的なよりどころがありません。他人からの印象が、そうさせています。

他人と気軽に話せる人は、キャラの濃淡でいうと薄いという印象があります。自分のことよりも、他人との関係を優先してしまう傾向があるからです。

外交力の人は、組織の中では空気のような存在です。接着剤といってもいいかもしれません。何か人間関係でトラブルがあるときに、外交力の人がその存在価値を発揮します。しかしいったん組織が固まれば、存在価値が薄まります。

外交力の人は、組織作りに欠かせない人材ですが、組織を運営するには不足です。


組織を運営、というか安定させるには、人望力が必要です。メンバーの人たちの心のよりどころです。

柴田勝家は、まさにそういう存在でした。

信長の弟の信行が反旗を翻した時、その側近に勝家がいました。そのため信行の勢力は大きく、信長は劣勢でした。勝家が最終的に信行でなく信長に従ったのは、信長の外交力のたまものでしょう。

なお信行にはいろいろな名前があり、史料的には信勝・信成・達成と名乗っていたようです。いずれにしても、信長の外交力の前には敗れました。この差は、能力の差というよりは、キャラの差でした。

信長は、人望力のある勝家を組織にくわえることで、集めた人材を組織に定着させるのに成功しました。


当時、織田軍団に新規採用された秀吉・光秀は、勝家にとっては頭の痛い存在でした。なにせ下剋上の権化たちです。組織の安定を最も乱す恐れのある2人。よって勝家がこの2人につらく当たったというのも、事実でしょう。若者の出世を阻む老害みたいな印象を持たれていますが、組織の安定を考える勝家にとっては対策すべき2人でした。

ただ勝家は人望力がすごくて、秀吉・光秀といえども正面から反抗する気持ちはなかったと思います。たとえ反抗の計画を練ったところで、織田軍団内はすべて勝家に従っているから勝ち目はないのですけど。織田軍団が揺らいだ時に初めて、対立を始めました。


さて、織田軍団にはもう一人、組織の安定に欠かせない人物がいました。丹羽長秀です。織田軍団の中では地味な印象があり、信長の死後に秀吉が織田軍団内の主導権を握ろうとした時これに味方し、秀吉の台頭を後押ししています。

長秀の名前は、画数15。5の基礎力の人です。


基礎力とは、物事を進めるにあたって地道に慎重に、そしてまじめに取り組む傾向のあるキャラです。派手さはありませんが、こういうキャラのひとがいる組織は非常に安定します。

組織を作るには、外交力で人材を集める必要があります。組織を固めるには、人望力でメンバーの心を安定させる必要があります。そして組織を前に進めるには、基礎力で足元を固め日々着実に業務をこなしていく必要があります。なお、組織のトップとしてどのキャラのひとがふさわしいかは、キャラとはあまり関係がありません。けっきょく組織を動かすのは一人ではなく、人間集団だからです。組織のメンバーが、それぞれのキャラを生かし立ち回れば組織は動きます。

秀吉は、丹羽長秀の存在価値を認識していたので、清洲会議に当たって真っ先にこの人の支持を得ることに努力しました。


勝家は確かに人望力はあるが、長秀のような基礎力がなければ組織としては弱体化します。勝家が秀吉に敗れた最大の原因は、長秀からの支持を失ったことです。

もちろん信長の存命時、長秀は織田軍団組織の礎的な存在でした。

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