エピローグ

最終話 いつまでもあなたと 


 反乱と言うか、侵略に便乗した反乱は終わった。

 これで、私が提案した計画は成功し、終わりを迎えた。


 庭園で色々あったあの後、隠し通路から逃げていた政権側の貴族も、通路の出口で待ち構えていた軍人たちによって捕らえられた。


 さすがに腐敗政権に関わっていた全員を捕まえたかどうかは確認できないけれど、少なくとも国内に居る者は全て捕まえたと言って良いはずだ。反乱が起きた段階で国外に出ていた者を捕まえるのはさすがに出来ないしね。


 それで、捕まえた腐敗政権に関わっていた者の中でも王族や重鎮などは、反乱が終わってからそれほど時間が立たないうちに公開処刑されることになった。


 公開処刑と言っても、国民すべてが見られるものではなく貴族などの国の重要な部分を支えている人たちだけがみられるもの。だから、そんなに見物に来ている人はいなかった。


 ただ、あの令嬢の処刑に関しては結構な人が集まっていた。

 おそらくあの令嬢に|貶≪おとし≫められて亡くなったり、被害に会ったりした家族が居る貴族が多いと言うことなのだと思う。



 ベルテンス王国については、計画通り内部の反乱により政権が変わったと言うことになっているので国名が変わることは無かった。


 そして、国王についても計画通りオルセア皇子が就くこととなり、オルセア・ベルテンス国王が誕生した。まあ、今はまだ王都は復興中だから形だけなのだけれど、その内正式に式典を開いて国内外にそのことが広まっていくことになるはず。


 私はと言うと、あの場でプロポーズされたことでオルセアの妻であると広く広まってしまった。別に嫌ではないのだけれど、実際はまだ婚約状態なのだから、人と会うたびに王妃様呼ばわりされるのは微妙な気持ちになるのよね。


 と言うか、あの場でオルセアに私が死のうとしている、と言われてしまったのであの後から私の周りに監視をする人員が増えた。


 いや、あそこまで言われたらもう死のう、と言うか消えようとは思わないのだけど、いくらもうそんなことは思わないと言っても監視の人員は減らなかった。

 正直、常に監視されているのはストレスを感じるから止めて欲しかった。


 とりあえず、今はその監視も減って(0にはならなかった)ストレスを感じる頻度も激減した。


 ついでに、オルセアに王政のあれこれを教えている人員は、お父様を含めて10人以上に増えた。いくら大国の皇子だったとはいえ、やはり政治関係の知識はそう多くなかったと言うことだと思う。まあ、たぶん皇国とベルテンス王国の政治のやり方が違うからその辺りでダメ出しを食らったとかだろうね。


 そうして色々あってオルセアがベルテンス王国の国王として、正式に民衆に対してお披露目する日がやって来た。


 まあ、噂が出回るのが早かったせいで、だいぶ前から王国の民衆も他国の王族が自国の王になることを知っていた。

 だからだと思うけど、お披露目の会場になっている王城前の庭園には多くの民衆が集まっていた。

 ただ、集まった理由は期待しているからとかではない。


 そもそも民衆には腐敗政権の影響が出ていなかった。だから、知らない間に今まで広告を支えていた王族が消え、知らない皇子が王に立つと聞けば不安にもなる。

 だから、こうして多くの人が新たに王となるオルセアが、どう言う人物なのかを確認するために集まったのだろう。


 さて、オルセアはこの民衆に対して何を言うのだろうか。

 私も予定ではあるけど妃として一緒に舞台に上がるから、かっこよく演説するオルセアを期待している。

 でも、何で一緒に民衆の前に出る予定になっている私に原稿と言うか流れが伝わってこないのだろうか? 


 とりあえずオルセアの隣で微笑んでいればいいと言われているのだけれど、何かちょっとだけ嫌な予感がしているのよね。




 式典が始まった。


 式典では初めにどうして今回王族が排除されたのかの説明と、グラハルト商国による侵略計画の概要が説明されることになっている。


 それを聞いた民衆の反応はあまり良くない。まあ、当たり前よね。自分たちには大した影響が出ていなかったのだから。


 でも、説明が進むにつれ、民衆の反応は変わった。いや、国民総奴隷なんて言われたら当たり前だけどね。私だっていきなりそんなことを言われたらさすがに戸惑うし、信じられないから。


 国王の醜態や腐敗政権のしたことなどが次々説明されていく、そして説明が終わったらしくようやく新国王のお披露目になった。


「行こう。ミリア」

「ええ」


 オルセアに手を引かれ舞台に上がる。他にも一緒に舞台に上がっている人もいるけれど、私の視界には先に進んでいるオルセアしか映ってはいない。


 室内から舞台に上がる際に外から入って来た光でオルセアが照らされる。

 そして嬉しそうに微笑んでいるオルセアが私の方に振り向き、外に出ると同時に私を引き寄せ抱きしめた。


「愛している。ミリア」

「私も愛していますよ、オルセア」


 私もオルセアに微笑み返す。


 まだ、これから王国を復興していかなければならないけれど、オルセアと一緒ならたぶん大丈夫。


 この、私に向けてくれる微笑みをなくさない様に、オルセアを支えて励ましてこれからも頑張っていかないとね。

 そして、私を支えて励ましてくださいね、オルセア。









最後まで読んでいただきありがとうございます。

この話にはいくつかサイドストーリーがありますので、よろしければ読んでいただけたらと思います。

またこの話のシリーズで纏めたコレクションが存在します。そちらから読むことも可能です。


・夜会の給仕の思うこと(完結2話)

https://kakuyomu.jp/works/16816452218346646778


・亡命令嬢の心残り(完結5話)

https://kakuyomu.jp/works/16816452218780340680


・裏舞台 付き人のメイドより

https://kakuyomu.jp/works/16816452219184304940

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る