一対三


 俺が本気だということを悟ったのか、相手も今までとは一変して顔が変わった。


『ブースト』

「無詠唱だと……」


 魔力を体全体に纏わらせた上での身体強化魔法。これならほとんどの相手なら視認することもギリギリのはずだ。


「だが、この速さなら——」


 金髪が俺の速さについてくる。

 こいつらの強さは思っていた以上だ。油断は禁物だ。


『我が求めるは強化の奇跡、スピードブースト』


 そう唱えられた途端、金髪のスピードが格段に上がってくる。

 最初にあの魔法使いからやるか。これ以上早くなられても面倒だし。

 そう決めると、金髪に追われながらも魔法を放つ。


『グラビティ』

『シャイニングサンダー』

「なっ……」


 二重魔法。二つの魔法を同時に使うことによって、相手に隙を与えない技術。

 『グラビティ』で相手の動きを封じ、『シャイニングサンダー』で確実に仕留める。


 流石の相手もこの攻撃は避けることはできず、魔法使い戦闘不能になる。


「次はお前だな」


 金髪に追われながら、青髪のところに向かう。青髪は大剣を構え戦闘態勢を取っていた。


「バーサーカーモード」


 そう呟くと、青髪の周りに赤いオーラが全身を纏った。


 その効果は素晴らしいものでミネアと戦っていた数倍の機動力とパワーを兼ね備えていた。


「おっと……」

「ヴォラァ!」


 青髪は剣を振りかざしてくる。さっきの『バスターブレード』だろう。


(早くはなっているな)


 そうわかった途端、俺はもう一段階スピードを上げて青髪に迫った。

 そのまま懐に入り込むと


『ゴットウィンド』

「グワァ……」


 そう唱え、風の刃を青髪に叩き込む。

 青髪がつけていた防具を粉砕し、そのまま倒れる。



 倒れたのを確信したあと、後ろにいる金髪の方へ向き、不意打ちされない様に警戒をとった。


「最後の一人」

「くっ……」


 最後に残った金髪の顔は少し焦りが見えていた。

 しかし、ガントレットをつけた拳をこちらに向けてくる。


 本当は焦っているだろうし、驚いてもいるだろうに、戦闘では変わらずに平常心でいる。


 凄いな。



「おら!」

「おっ……と」


 ちゃんと俺が避けた方向に拳が追ってくる。

 その攻撃ももう一段スピードを上げることによって、間一髪で避けることができた。


(今まで戦った中でもトップクラスかもな)


 その金髪の強さを見たお礼と言っては何だが、俺の中でも最高レベルの魔法を見せてやることにした。


『ロックシャウト』


 まず相手の動きを止めるため、岩の塊で金髪を閉じ込める。

 数秒しか足止めできないだろう。しかしその数秒あれば充分だ。


  ドンッ!


 そう鈍い音が聞こえるとともに、金髪は出てきた。五秒程度か。やはり早いな。しかし、



『銀河の導きに答えよ。スタージャベリン』



 詠唱は間に合い流星群の様な光が金髪を襲う。金髪は一瞬のことで避けることは出来ずモロに食らった。


 そして


「……チーム雷光戦闘不能! 最後に勝ったのはチームユグドラシルだぁぁ!」


 もう何度目かわからない実況の声が鳴り響く。


 ふう、少し魔力を使いすぎたな。


 俺はその場に座り込んだ。


 まぁまぁ疲れたが、とにかく勝利だ。


 俺はその事を実感して小さくガッツポーズをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る