第18話 外の世界 〇

 第18話 外の世界 〇

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 ……まずいな。

 なんだかんだ理由をつけて、結局地下から一度も出ていない。


 ひきこもりが再発してしまったらしい。


 まずい、まずいとは思うんだが、前世のひきこもりと今の俺は一味違う。

 前世は収入もなく親のすねにかじりつき、部屋でゲームばかりしていた無職のヒキニートだった。


 しかし今世は、働いては……いないが。

 食べる物は……ロティスの配下が用意してくれて。

 俺は、レベル上げばかりしている。


 ……あれ?

 もしかして、前世と何も変わっていないのでは?


 い、いや。

 ロティスは俺の配下で、ロティスの配下も俺の配下みたいなものだ。

 そう、俺は資産家になったのだ。

 自分で働くのではなく、人に働かせる。

 いわゆる勝ち組になったのだ。


 ……ちょっと、外に顔出してようかな。


 危なくなったら、すぐに穴に引っ込めばいいし。


「キュウ?」


「ちょっと行ってくる」


 普段ここより上に行こうとしない俺が、上に向かったから気になったのだろうか?


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「……外に出てるなんて


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 ちょっと、嫌なことを思い出した。

 大丈夫。

 あのころとは違うのだから。


 ……ここが外に通じる道、この世界に転生した日以来か。

 穴の先、うっすらと光が見える。

 そう、光だ。


 土竜スキルか種族特性のおかげで、何の問題もなく過ごしてきたが洞窟の中は真っ暗なのである。

 太陽を見るのが久しぶりならともかく、光を見るのが久しぶりとか……

 ひきこもり上級者だな。


 穴から、ほんの少しだけ顔を出しあたりをうかがう。


 転生してきたときと変わらず、深い森の中だ。

 視界が全くない。

 ……というか、ここほんとに森か?


 上を見上げると大木に見えるだけの木、結構まばらだ。

 背の高い草が多いだけで、実はただの草原なのではなかろうか?


 まぁ、だとしてもモグラにとって、外が危険なことに変わりはないのだが。


 外に出る。

 正確には顔を出しただけで、出てはいないが。

 何となくすごいことを成し遂げたような気持になるが、実際問題転生して始めた降り立った場所に戻ってきただけである。


 要は、ゲームのスタート地点に戻ってきただけであり、何も進展などしていないという話である。


 外に出てひと散歩、とでもしゃれこみたいわけだが、外は危険だと優れた感覚器官が警鐘を鳴らしている。

 モグラが巣に侵入したときの不快感とは根本から違う、何も考えず逃げろと訴えかけてきている。


 何も見えないせいで、何がいるかはわからない。

 しかし、足音そして気配。

 今の俺じゃどうやってもかなわなそうな、魔物がこの近辺には結構な数存在しているらしい。


「グルルルル」


「グゥ~」


 めちゃくちゃ怖い。

 俺は、巣穴から半分顔を出した状態でいるわけだが、これって安全なのか?

 かなり不安だ。


 しかし、理由なく外を見に来たせいで、帰る理由がない。

 何でもいいから、何か収穫が欲しい。


「連携を崩すなよ」


「「「はい!!」」」


 !?

 人の声!!

 何も見えないが、何となく気配はわかる。


 声が聞こえた方の、この4つの気配。

 これが人……


 こ、こえぇ。


 え?

 嘘でしょ。

 めちゃくちゃ強そうな気配するんだけど。


 周りの俺がどうあがいてもかなわなそうな魔物たちより、さらに強そうな気配がする。

 しばらく観察……


 あれ?

 俺何か大切なこと……

 いや、モグラが害獣とはいえ、わざわざこんなところで退治するほど……


【土竜:体長2.6~21。名前の通り地中の中で過ごす。基本群れることはなく単独で生活し、それぞれの個体が縄張りを持つ。素材はその希少性と性能から高級品であり、貴族が欲してやまない……】


 高級……

 貴族……


 まずい!!


「あ、モールスキン!」


「おい、連携を乱すな!!」


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 テンプレ

 ーー次話予告ーー


『第19話 重税、独裁』

 明日更新


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