第41話 一ノ瀬和也は和也
――サーナの隣にいるのは
――四天王みたいなことに巻き込まれていないのは、葵がそういうのを嫌ってるのをみんなが知ってるから。まぁ、それを言うと
――っで、葵の前にいるのが
――気を取り直して、志乃の隣にいるのが
――四天王が女子四人を表すのに対して、四神と呼ばれる男子四人のうち一人。これは私たちも先輩に言われたりしたことだから噂の域を超えてる。四天王ももう噂の域を超えてるけど・・・・・・
――後の人も紹介しておくね。タキの前にいるのが
――それで志乃の隣にいるもう一人の男子が
――え? あの六人の関係? う~ん、仲がいいって言ったらサーナと志乃のことがるから・・・・・・でも、全体的に見ると仲が良さそう。
この辺りが
食事が終わると何をするかは決まっている。片付けだ。みんなそろって川で皿洗い、といういかにも環境に悪そうなことをすることはなく、食器や調理器具を普通の蛇口で洗っている。
俺、
「イッチー、皿洗い終わりそう?」
「もう少しで終わる」
「そっか~」
「
「
俺の右斜め後ろから双葉、左斜め後ろから桐ヶ谷の声が聞こえてきた。桐ヶ谷の言っていたとおり桐ヶ谷は俺たちが使った調理場周りの床を掃いていた。双葉の方は調理場と食事をした場所の拭き掃除をしていた。
俺は「もう少しで終わる」と言ったが、今終わった。もう少し過ぎると言われればその通りだが、その辺は何も言わないでくれ。俺の語彙力の問題だ。
「タキ、ゴミ出しに行ってくる」
「おう、頼んだぞみっき」
「あいよ~」
蛇口の水を止めて手を拭く。そして、声のした右の方を向いてよくわけのわからないものたちを見る。俺は目の端で双葉の姿を捉えたが、双葉も同じ方向を向いていた。
ちょうど九十九たちに飯田が背を向けているところだった。二つあるゴミ袋を両方の手で持って歩き出そうとする。
「みっき、一人で平気か?」
「ばーたれ。平気すぎて怖いくらい」
何が怖いんだ? お前らのそのノリが怖い。
「俺がついていこうか?」
「タキは色々やることがあるんだろ? 俺の方はいいよ」
「んなこと言っても、こっちも人手が余ってるんだよな」
「山なのに
「・・・・・・みっき」
「ん?」
「やっぱり一人で行け」
「えー!!」
いやいや、一人で行く気満々だったのに「一人で行け」と言われれば突っ込むのか。なんともまぁ正直な性格をしているな。見習いたいくらいだ。本当にそう思う。うん。本当に。うん。うん。
「まじでどっちなんだ?」
「どっちでもいいけど」
「うーん」
海星をたくさん持っているやつ、もとより九十九が腕を組んで考えているポーズをとる。本当に考えているんだろうな。そんなことのために脳みそのキャパシティを使うことができるなんてすごいな。
「
俺が九十九たちの観察をしていると桐ヶ谷が声をかけてきた。俺は桐ヶ谷の方を向くが、どうしてこいつはいつもいつも俺の邪魔をしようとするんだ? 面倒な女というのは桐ヶ谷のようなやつのことを言うのか? 多少違うような気もするが。
「何でもない。何かあったとしても桐ヶ谷に言うはずがないだろ」
「なっ! 何よ!」
「別に。人の生活を引っかき回すような阿呆を色々なことに巻き込んでいたら、それこそ問題がややこしくなるだけだ」
「どうしてそんなにひねくれてるの?」
確かに俺はひねくれているんだろうな。自覚は多少ある。多少は。
「俺がひねくれているのか、それとも世界がひねくれているのか」
「どういうこと?」
「
「卵!」
「・・・・・・答えを求めていない」
頭がおかしいのか? 何をどう考えたらさっきの質問に答えようとするんだ? こいつのことはどうにもわからない。
「はぁ」
ため息が出てしまう。しかも頭痛もしてくる。気がするのではなく、本当にしてくる。気分が悪いな。
「・・・・・・少しは、私を頼って、困らせてもよくない?」
俺がそんなことを考えていると桐ヶ谷が意図のわからない言葉を発した。しかもその言葉を言うときにほおを少し赤くしているというおまけ付きで。
「桐ヶ谷、お前は――」
「
は?
「・・・・・・お前は何が言いたいんだ?」
「音杏って呼んで」
そのことではないんだが・・・・・・まぁ、それも聞きたかったが。
「どうしてだ?」
「だって・・・・・・付き合ってるのに、苗字呼びなんて、変、じゃん」
「はぁ、おかしくないだろ」
「・・・・・・
「あいつは苗字が嫌いだからほとんどのやつに名前で呼ばせてるだろ」
「・・・・・・不公平」
子供のわがままか。面倒だ。面倒すぎる。
「頼むから黙ってくれ」
俺はもう面倒になって九十九たちの方を見た。見ない間に人数が減っていた。
九十九と
しばらく篠山と話した後、今度は
・・・・・・にしても、さっきと何かが違う。何が違うんだ? 一体何が・・・・・・なるほど。だとすると、あぁ、なるほど。
「一ノ瀬
「桐ヶ谷、いい加減にしろ」
「和也」
俺は桐ヶ谷の方を振り向いた。驚いたというのが率直な心情だ。名前を呼ばれるのは家族以外ではほとんどいないからだ。
別にうれしいわけではない。繰り返しになるが驚いただけだ。それ以上でも以下でもない。
桐ヶ谷は前髪をくるくるといじっていた。髪をいじる、か・・・・・・なるほど、ものすごく面倒だ。この世のすべてから目を背けたくなるほど面倒だ。背けていないと言えば嘘になるが。
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