43話。聖剣のアビリティ

 【光翼(シャイニング・フェザー)】を展開したボクに向かって、天魔騎士団が殺到してくる。


「アンジェラ、スキルを貸してもらうぞ!」


『はっ! ルカ様、光栄でありますわ! 我が力、どうぞお使いください!』


 ボクの呼びかけに聖騎士団一番隊隊長アンジェラの声が、頭の中に響いた。


 ボクの聖剣のアビリティ【スキル共有】は、絆を結んだ人のスキルを借り受けて使うことができる。

 アンジェラの存在をまるで彼女が隣にいるかのように感じた。


 アンジェラのスキル【魔法ブーストA】は、一日に三度だけ魔法効果を1.5倍に高めることができる。


「【雷嵐(テンペスト)】!」


 天魔騎士団に、ブーストされた二属性複合魔法をぶつけた。荒れ狂う暴風と雷撃が、光の翼を持つ少女たちを八つ裂きにする。


 だが……


『言ったであろう? 我が天魔騎士団は、不滅の軍団!』


 時間を巻き戻したかのように、少女たちの身体が復元していく。

 

 彼女らは、手にした剣や槍を掲げてボクに突撃してきた。


『ルカよ。貴様のことは調べ上げておる。イルティアにつけられた呪いの腕輪。それを破壊すれば即死の呪いが発動し、いかに不死身と言えど、死ぬのであろう?』


 やはり、こちらの弱点は調べあげられているようだ。

 油断は微塵もできない。


『さあ。あの男から受け継いだ剣技を見せてみよ!』


 あの男? 国王は師匠のことを知っているのだろうか。

 一瞬、疑問が脳裏を過ぎるが、今は余計なことを考えている余裕はない。


「望むところだ!」


 特訓して、奥義をふたつだけだが物にした。その成果を見せてやる。


「変移抜刀【疾風剣】』(へんいばっとう、しっぷうけん)!」


 聖剣の光の刃を、魔法で形成した風の鞘で覆う。即席の鞘を使い、鞘走りで剣速を加速させる居合い斬りだ。


 天魔騎士団の先鋒隊が、まとめてなぎ払われた。

 怯みもせず、後から押し寄せる彼女らを連続で斬りつける。


『ぬう!? 不滅である天魔騎士が滅ぶだと……! それが貴様の聖剣か』


 聖剣で斬られた天魔騎士たちは、浄化され消滅していった。


『……ありがとう』


 消える瞬間、聖剣を通して、彼女たちから感謝が伝わってくる。


 アンデットにされた者は、死後も安息を得ることなく、永遠に続く苦痛にさいなまれるという。


 聖剣でルディア姫を、苦痛から完全に解放してやらなければならない。


「うぉおおおおっ……!」

 

 ボクは力の続く限り、剣を振るい続けた。

 四方八方から襲い来る天魔騎士は途切れることなく、息が上がり始める。


「ルカ様!」

 

 ボクの背後に座ったエリザが警告を発する。同時に彼女は、フェリオと一緒に魔法障壁を展開。

 一斉発射された天魔騎士団の【魔法の矢(マジックアロー)】を弾き返した。


「くそ! そうか、味方ごと!」


 天魔騎士は、聖剣以外では滅ぼすことができない。だから、味方の背を撃つこともためらわなかった。


『そうだルディアよ。ユニコーンごと叩き落とせ! ルカよ。余の元にたどり着けぬようでは、強者とは言えぬ。余と戦う資格などなし!』


 空中都市に向かって飛ぶボクたちに、天魔騎士団から、攻撃魔法が乱れ飛ぶ。


 接近戦では勝ち目が無いと悟って、遠距離攻撃に切り替えたようだ。いずれも必殺の威力を持つ炎や雷や氷が、雨あられと叩きつけられる。


「ぐっ!? ルカ様、このままでは障壁が!」


『こちらの魔力が持たないよ!』


 エリザとフェリオが絶叫を上げる。


「ふたりとも踏ん張れ! もう少しで空中都市にたどり着く!」


 ボクも魔法障壁を展開するが、物量差で押し切られるのは時間の問題だった。

 魔法で反撃しても大して意味がないし、反撃する余裕もない。

 

『ルカ姫様! フィナの力を使ってください!』


 その時、聖騎士団二番隊隊長フィナの声が頭に響いた。


『フィナのスキル【聖母の抱擁】は、密着した相手の魔力を回復させます! これで切り抜けてください!』


「ああっ! ルカ様から魔力が流れ込んで来ます!」


『ルカ! これならまだいけるよ!』


 早くも魔力を使い果たそうとしていたふたりが、息を吹き返した。

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